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君が大好きな君へ  作者: シュット
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1.進

進は息を吸った。

天気は霧。彼はこの沈鬱とした雰囲気が好きだ。この白いもやもや全てが彼を守ってくれるようで。余計なものは何も見なくてもいいと、彼に教えてくれるようで。

視界は不良好。見通しは最悪。おっと、突然視界におばあさんが現れた。

「おはようございます」

彼は挨拶をする。これでいい。彼はその狭い視界の中で、目の前に現れるものにだけ注意を払っておきさえすればいいのだ。

「すう」

もう一度深呼吸。朝の新鮮な空気を肺に落とし込み、彼は高校へと自転車を走らせる。

家からは片道55分。これがバスでも50分とかかる。自転車のような小回りが利かないためだ。しかし、この道のりとかかる時間は進には苦ではなかった。彼にとって、何も考えなくてもよいような時間。正の感情も負の感情もそっちのけで集中していられるような時間。それは何より幸せなことであった。

駐輪場で自転車を留まらせる。当然息も上がっているのだが、後は休憩がてら歩いて校舎に向かうだけだ。

自転車登校は秋しか向かない。夏は汗でシャツがベタベタになる上、汗で染みた部分が目立つ。冬は寒いのに加え、路面が凍結することがある。以前、橋を渡ろうとして転倒し、怪我を負って以来、冬場にはなるべくバスを使うよう心掛けている。一番ひどいのは春。花粉で目が開かない。普段の登校でも風で目が痛くなってしまうような進だが、この時期は花粉眼鏡を付けたり、ときどき鼻水を拭いてやらなかったりしないと、とてもじゃないがやっていけない。田舎だから仕方のないことなのではあるが。

なんて思っていると、校舎に着いた。スリッパに履き替え、階段を上る。彼の所属する組は3階にある。一段飛ばしで駆け上がり、教室に着く。

彼が登校するのはクラスでいつも最初だ。8:30にホームルームが始まるにしても、7:50には教室に着いている。進がいつも恐れているのは「不測の事態」。55分の道のりで、何か一つでもトラブルがあると、その到着時刻は大きく引き伸ばされるだろう。彼はそれだけのリスクを嫌い、それなら早い登校の方がまだよいと、この時刻の登校を心がけていた。

まだ外は仄暗く、鬱々として曇っている。それなのに彼は電気を付けず自分の席に着き、顔を突っ伏して時間が経つのを待った。明るいのも彼は苦手だ。朝の時間、それがどれほど冬の暗さで手元を不自由にしようと、朝の電気は彼とは相性が悪かった。そのため、自分で教室の点灯をするという選択肢は彼には毛頭なかったのである。彼が教室に着いてからものの10分。次に入ってくるのは必ず安田雄哉だ。彼は自身も明るいのが苦手なのか、空気を読んでいるのかは知らないが、明かりを点けることはしない。

そういうわけで、この次に登校してくる女子が電気を付けてくれるまで、この教室は暗い。


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