表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/26

商隊の男

生活が激変して、小説を書く時間がほとんど取れなくなっています。

やっと時間が取れたので、久しぶりに投稿させていただきます。

  北野道(きたのみち)(まこと)が消え失せてから、2ヶ月の時間が過ぎた。

  その2ヶ月の間に、弓月(ゆづき)涼子(りょうこ)は15回に及ぶ異世界探索を行っていた。友人の琴浜(ことはま)佐和子(さわこ)も同じ数だけ異世界に渡っている。


  涼子がそんなハイペースで異世界に赴いている表向きの理由は、動画の配信の為だ。

  アイドル並みのルックスの涼子が、露出度満点の格好でモンスターたちを薙ぎ払う動画は、急速に人気を上げつつあった。同時に、涼子の戦闘力も順調にアップしている。


  とは言えその露出度は、マコトと2人で異世界に赴いた時の物と比べれば、いささかパワーダウンしていた。

  ローライズで太もも丸出しだったスパッツは、ローライズではなくなり、丈も太もも半ばを隠す程度になった。上半身のスポーツブラもタンクトップとなり、ぎりぎりヘソが見えているぐらいだ。


  それでも涼子がその姿で暴れ回る動画は、多くの男性視聴者の下半身に大きな衝撃を与えた様である。動画の再生数は順調にカウントを重ね、すでに熱狂的なファンも生まれていた。

  涼子と佐和子の貧乏生活も、もうすぐ終わりとなる予定だ。

  2人は勝手にマコトの実家に居座り、動画の編集作業はもちろん寝泊まりまでしている。そうやって、マコトの帰還を待っているのである。


  あの日、レベル2の『位相変移』によって姿を消したマコトが、異世界に舞い戻った事は、確定事項となっている。レベル4の『魔力感知』を持つ三田が、確かにマコトの魔力が異世界に復帰したのを知覚したのだ。

  ただし、その出現場所が予想以上に遠方であった為、すぐに他のモンスターたちの魔力と区別がつかなくなり、マコトの行方は追えなかった。


  しかし、マコトがどことも知れない空間に消えたのではなく、少なくとも異世界で生きている可能性が強いという事実は、涼子を大いに勇気づけた。

  涼子は間を置かずに異世界に渡り続け、マコトを探しに行く実力を養うと同時に、動画を通じてマコトに関する情報を集めようとしたのである。


  が、マコトを名指しで探そうとしたのではない。

  異世界に行ったきり、生きているのに帰れなくなった人間を知らないかと呼びかけたのだ。そうすればマコトが地球に帰還する為の方法がもたらされると同時に、マコト自身の消息も手に入るかも知れないと考えたのである。


  現在、涼子の取得済み能力は、以下の通りだ。


  ◇スキルリスト


  湧水 lv.1

  着火 lv.1

  氷槍 lv.3

  暗視 lv.2

  神経強化 lv.2

  筋力強化 lv.3

  傷治療 lv.2

  痛み止め lv.1

  位相変移 lv.1

  座標指定 lv.1

  アイテムボックス lv.3


『位相変移』は、異世界からの緊急避難の為。

『座標指定』は、異世界に渡る際の出現ポイントを選ぶ為。これがなければ、同じ場所にしか出現出来ない。異世界でどんなに移動しても、次回はそれがリセットされてしまうのである。つまり『座標指定』とは、異世界を旅する為の能力なのだ。

  また、『氷槍』を選んだ事に深い意味はない。マコトが『着火』の能力を伸ばしていたので、別の種類の武器を選んだだけである。


  佐和子もまた、涼子に追随するレベルの能力を身に付けている。

  ただ、動画撮影の為という理由で『光学迷彩』を習得していた。カメラに写り込みたくないという理由からだ。動画に写るのは涼子の役回りで、佐和子は表に出たくないのだそうである。

  でも視覚的に完全に消えられるせいで、本人はすっかり忍者気取りで満足げだ。


  そんな佐和子は、マコトに関してはドライな立場を通している。

  ウブな親友がマコトに執着するのを楽しみながらも、涼子ならもっと上の男をいくらでも狙えるのよというセリフを忘れない。

  涼子としても、自分がマコトに心底惚れているのか自信はないが、マコトを探す事をやめる気はない。


  そして、有力な情報がもたらされた。






  涼子の動画に対するコメントとして情報を送って来たのは、ゲンゴローと名乗る少年である。

  通っている高校では目立たない存在である彼は、友人と3人で異世界に渡り、別人のごとく派手に暴れ回っていた。

  そんな彼が、マコトらしき人物と遭遇したのだそうだ。


  ゲンゴローたちが利用している異世界への扉は、マコトや涼子たちの使っている扉から200キロメートル以上離れた場所にある。

  日本での200キロメートルの距離が、そのまま異世界でも200キロメートルとなる訳ではないが、マコトがそれに近い道のりを移動したのは確かだ。


  情報提供の為に、ゲンゴローたちは涼子との面会を求めたが、そこに現れたのは警察庁の特殊チームの面々だった。

  強面(こわもて)の男たちに取り囲まれ、ゲンゴロー少年たちは泣く泣くマコトに出会った経緯を説明する羽目になったという。

  そんな、哀れなゲンゴロー少年たちの語った内容は、次の通りである――――。






  その日ゲンゴローは仲間2人を伴い、初めて異世界の都市を訪れようとしていた。

  地道に異世界探索を繰り返して実力を蓄え、『座標指定』をマスターし、旅に乗り出して約1ヶ月。ゲンゴローたちは、イラザカヴァールと呼ばれる歴史ある都市まで、あと数日という場所にまでやって来ていたのだ。


  ◇スキルリスト


  湧水 lv.1

  着火 lv.1

  火球 lv.3

  土盾 lv.2

  威圧 lv.3

  拘束 lv.2

  暗視 lv.1

  跳躍 lv.2

  魔力感知 lv.2

  筋力強化 lv.3

  傷治療 lv.2

  睡眠不足耐性 lv.1

  座標指定 lv.1

  アイテムボックス lv.3


  ゲンゴローの取得済みスキルは、実に手堅い構成だった。

  仲間たちもほぼ同様の構成だ。武器とする魔法の属性を、意識的に違えているだけである。

  3人はパソコンのゲームで培った知識と連携を強みに、異世界をゲーム感覚で楽しんでいるのだ。


  そんな旅も、終わりを告げようとしていた。

  白っぽい石が敷き詰められた街道の行く先には、イラザカヴァールを囲む巨大な城壁が見え始めている。

  まだまだモンスターたちの危険が去った訳ではなかったが、ゲンゴローたちの足は、半ば駆ける様に動いていた。

 

  ネットの情報を信じるならば、異世界の都市にたどり着いた日本人は、まだそんなに多くない筈だ。

  高校では目立たない存在である彼らにとって、他の者に先んじて異世界都市に到達するという行為は、自分たちの名を上げる大きな業績となる予定だった。


  そんなゲンゴローたちの前に現れたのは、長毛牛5体からなる小さな商隊だ。

  長い体毛をまとった体高1メートル余の頑丈な牛に荷物を負わせて、辺境の村々を商いに巡っている一団である。

  商隊のリーダーは、チョッキ姿のウサギビト。その姿は、身長140センチぐらいの二足歩行するウサギにしか見えない。

  そして、普通のヒトらしき男が1人、ウサギビトと肩を並べて歩いている。


  イラザカヴァールに向かってのんびり歩いている商隊を無造作に追い抜こうとしたところで、ゲンゴローは街道の行く手に醜悪な容貌のオークたちが待ち構えている事に気が付いた。

  身長2メートルを超える、イノシシの頭部を持つ獣人だ。いささか知能が低い事と残忍な性格から、ウサギビト等と違ってモンスター扱いをされている。


  茶色の剛毛に身を包まれた、超マッチョ系の獣人たちを目にして、ゲンゴローたちは慌てて足を止めた。

  怖じ気づいたのではない。

  カネになると思ったのだ。

「よお、アンタ! そこにオークがたっぷりいるぜ! 俺たちを雇うんなら、安くしとくぜ~!?」


  小さな商隊には、ロクな護衛もいない事が多い。目の前の商隊は、その典型だ。

  ウサギビトと並んで歩いているヒトは、地味を絵に描いた様なおっさん。とてもオークと立ち回れそうにはない。片や強靭な脚力を有するウサギビトは、それなりの戦力とはなるだろうが、たった1人で複数のオークを相手取るのは難しいだろう。

  しかし、ゲンゴローの売り込みに、ウサギビトは飛び付く様子を見せなかった。


「ああ、助けならいらないよ。あんたらこそ、怪我をしたくなかったら、引っ込んでた方がいいよ」

「なんだと!?」

  ウサギビトの返事に、ゲンゴローは声を荒げる。

  そんなゲンゴローたちを一瞥もせず前に出たのは、地味そうなヒトの男だ。


「頼んだよ、マコト」

「りょーかい」

  マコトと呼ばれた男は、緊張の素振りも見せずオークに近づいて行き――――。

 

  文字通り、オークの一団を吹っ飛ばした。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ