表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/26

スキルリストと着火魔法

 昼食にカップラーメンとおにぎりを食べると、再びオレたちは水場に向かう。

 午前中に一掃してしまった為、モンスターの姿はほとんど見られない。

 が、オレたちの目的とする相手は、確かにそこにいた。水の中だ。

 一見、水面に浮かんだ大きな倒木。それが――――。

「ワニですか?」

「ワニに近いタイプのモンスターですね」

「デカくないですか?」

「デカいですね。確実に魔石持ちです」

 体長4~5メートルに及ぶワニに似た大型モンスターである。


 伊勢崎さん、田丸さん、ともにワニ型モンスターを恐れる様子はない。2人とも、どれだけ強気なんだ?

「こいつには、ちょっと本気を出します。北野道さんは、周辺警戒をお願いします。トドメはお任せしますので」

 2人は鉈に似た大型ナイフだけを持つと、水際に立った。

 伊勢崎さんが左手をワニ型モンスターにかざす。その手のひらから(ほとばし)る、紫の稲光。雷の魔法だ!

 紫電は幾つにも枝分かれし、水面に浮かぶワニ型モンスターの巨体に絡みつく。


 ジュバッ――――!!


 稲妻の触れた水面が爆発し、水煙が膨れ上がった。その中で身を(よじ)り、苦悶するワニ型モンスター。

 次の瞬間、一転してワニ型モンスターが伊勢崎さんに襲いかかった。跳んだのだ。剣の様な牙がズラリと生えた顎を開き、突然の襲撃者を頭から噛み砕こうとする。

 息を吞むオレ。モンスターの巨体からは想像出来ない俊敏な動きに、てっきり伊勢崎さんが食われたと思ってしまった。

 が、ワニ型モンスターは空中で何かに殴り飛ばされた様に進路を変えると、激しく地面に叩きつけられる。大きく揺れる地面。田丸さんが魔法攻撃を加えたらしい。


 そこで伊勢崎さんが、ワニ型モンスターの攻撃が外れると分かっていた様に、淡々と左手から紫電を放った。

 幾条もの稲妻の直撃を食らい、ワニ型モンスターが巨体を痙攣させる。

 あちこちの肉が()ぜ、鱗が消し飛ぶ。

 肉の焦げる(にお)いが立ち込める。

 オレの着火の魔法など、比べ様のない凄い威力だ。


「北野道さん、トドメを!!」

 稲妻を放ちながら、伊勢崎さんが叫ぶ。

 叫ぶのはいいけど、まだ生きている大ワニに近づいて槍で刺すって、難易度が高くないか? 近づいた途端に、パクってやられませんかね?

 はっきり言って、怖い。近づきたくない。でも――――。

 ビビりながらも、オレは足を踏み出した。リョウちゃんを知る男の前で、根性なしと侮られる様な真似はしたくない。それが、せめてものオレの矜持だ。


 勢いをつけて、槍を振りかぶるオレ。

 伊勢崎さんが紫電の放出を止める。

 大ワニは痙攣したまま。

 稲妻に焼かれて白く濁ってしまった目の近くに、肉が爆ぜた傷口を発見。目標決定。

 力いっぱい、槍を突き立てる。

 堅い手応え。構わず、体重をかける。

 潜り込む槍先。

 

 全身を硬直させる大ワニ。

 田丸さんがすっ飛んで来て、オレを大ワニから引き剥がす。

 その直後――――。

 オレの下腹部で爆発した何かが、背骨伝いに頭の天辺(てっぺん)まで駆け上がった。

 ニワトリを倒した時の数十倍の熱が、オレの全身に広がって行く。


 や、やばい! 熱い! やばくて熱いが、とんでもなく気持ちいい!!

 田丸さんに抱きかかえられた姿勢で、マコトくんを屹立させてしまうオレ。大いに誤解を招く状況だが、抗うのが不可能な熱量にオレは翻弄されていた。

 これが魔力か!

 魔力の熱なのか!!

 熱によって、身体中の細胞が賦活されていく。

 細胞内の(おり)が焼かれていく。





 

 オレは、失神していたらしい。

 気付くと、水場から少し離れた灌木の陰に寝かされていた。

 伊勢崎さんたちが運んでくれたのだろう。至れり尽くせりで、申し訳ない。

 そして、マコトくんは超元気なままである。

 下半身はスパッツ1枚で、股間をたぎらせた状態で運ばれた上、仰向けに寝かされていた自分を思い描き、オレは絶望した。一気にマコトくんが勢いを失っていく。


「お、気づきましたか」

 近くでお湯を沸かしていた伊勢崎さんが、屈託のない笑顔を向けて来る。なぜだか、その顔を直視出来ません!

「いきなり大き過ぎる魔力を取り込んで、神経がダウンしちゃった様ですね。性急過ぎました。すいません」

「いや。オレは全然構わないんですが・・・ふむ、確かに凄い量の魔力を獲得出来たみたいですね」

 平静を装うオレ。しかしすぐ、自分の体内に渦巻く魔力の多さに、驚きの声を上げてしまう。


「その魔力で、北野道さんには役に立つスキルをゲットしてもらいたいんですが、その前に私からプレゼントを1つさせて下さい」

「プレゼントですか?」

「スキルリストと名付けられた能力です。これは、各自が身に付けた能力を共通の尺度で数値化する為に、日本の研究者が開発しました」

 色んな研究者がいるものだ。


「ゲームでいうステータス表示みたいな物ですか?」

「その通りです。しかし、個人が勝手にそういう物を作ると、レベルの上がる法則がバラバラになってしまいます。個人的に自分がどれだけ強くなったかを測るならそれでも良いですが、それでは他人と強さを正確に比べる事が出来ません」

「なるほど。誰が決めたのでも構わないから、同じ尺度のステータス表示にしておけば、他人とも強さを比べられる。それを、伊勢崎さんがオレにくれるんですか? 能力ってのは、他人にも付与出来る?」


「そうです。必要な魔力さえ使用すれば、他人にも能力は与えられます。ワニ型モンスターを倒したのは、私が必要な魔力を貯める為でもありました」

「でも、せっかく貯めた魔力なのに・・・」

「スキルリストを探索者に付与する事は、政府が推奨している事です。諦めて、受け入れてもらいます」

 いたずらっぽく笑うと、伊勢崎さんは右手をオレの額に触れさせた。

「いきますね。スキルリスト、付与」


 伊勢崎さんが触れている額から、温かい物が流れ込んで来る。

 コンピューターのプログラムや複雑な数式の様な記号が浮かび上がり、視界を埋め尽くした。これまでの能力とは違う人工的な香りだ。

「北野道さん、スキルリストと言って下さい」

「ス・・・スキルリスト!」

 オレがそう言ったと同時に、宙に浮いていた意味不明の記号が明滅し、日本語へと形を変えた。


 

  ◇スキルリスト


 湧水 lv.1

 着火 lv.2

 神経強化 lv.1

 筋力強化 lv.1

 骨折治療 lv.1

 傷治療 lv.1

 アイテムボックス lv.1



「うわっ、何か出た!」

「それが、北野道さんの現在の取得済み能力の一覧ですよ」

 空中に浮かんだ文字に手を伸ばすが、触れる事は出来なかった。

「文字は網膜に投影されてるとかで、触れませんよ。ついでに、他の人にも見られません」

「へ、へぇ・・・」


「一番レベルの高い能力は、何ですか?」

「着火だけがレベル2になってます」

「着火ですか。悪くないですね。良かったら、今ある魔力を全部、着火に注ぎ込んでみませんか? レベル3でも十分使えますが、もしレベル4に届いたら、戦闘にかなり役立ちますよ」

「そうなんですか。じゃあ、やってみようかな」

 

 伊勢崎さんを信用し切っているオレは、迷わずありったけの魔力を『着火』に注ぎ込んだ。

 左手の人差し指と中指に宿っている着火能力を、強化。強化。強化!

 遠く離れた相手にも届き、ワニ型モンスターをも倒せる強い炎を!!


 ズクン――――!!


 左手の人差し指と中指を、大きな鼓動が襲った。

 いけたか?

 すぐさま、スキルリストで確認。

 着火がレベル4になっている!


「な、なりましたよ、着火がレベル4に!」

 喜ぶオレに、伊勢崎さんは試し打ちする様に促した。

 狙いは20メートル程向こうを跳んでいるトンボ型モンスター。

 オレは左手を拳銃の様に構え、静かに息を吐きながら、魔法を放った。

 空中に飛び出したのは、ピンポン玉ぐらいの青い球体。

 正直、あまり速くない速度で、しかし滑る様にトンボ型モンスターに近づいて行く。


 が、複眼を持ち視野の広いトンボ型モンスターは、球体が命中する寸前に、スイッと身をかわした。

「あ!」

 青い球体は軌道を変える事なく、モンスターの至近を通過する。

 その途端、トンボ型モンスターの翅が一瞬にして燃え上がった。

 命中していない青い球体から放射される熱だけで、翅に火が付いたのか?

 トンボ型モンスターはコントロールを失い、あっさり墜落しする。


 オレが驚いている間に青い球体は、トンボ型モンスターの更に先にあった灌木に命中すると、一気にそれを燃え上がらせたのだった。

 



 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ