幼馴染
幼馴染はヒロインの座争奪戦で負ける存在ではない。ただそれだけを伝えたかった。
あと今回から内容が明るくなっていきます。
幼馴染。ラノベの主人公の特権。可愛い幼馴染に毎朝起こされて、学校に登校する人生を送りたかった… 現実にそんな都合の良いことがある訳がないのだが。
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「そうだ!明日お母さんのお友達が隣の部屋に引っ越してくるから」
「えっ?」
あまりにも突然の事に思考を放棄する幸多。
「幸多と同じ年の女の子がいるから仲良くしてあげてね」
「あっ、うん」
「ほんと!? たのしみ!」
どんどん勝手に話が進んでしまうため、気の抜けた返事しか出来なかった。しかし愛美はいつも通りだった。
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そして翌日。
「へぇ〜、この子達が恵の子供ね。可愛いじゃない」
背の高い、明るい茶色のショートカットの女性がそう言う。
「私の名前は如月薫。この子は私の子どもの…」
茶髪の少女が前に出て言う。
「きさらぎしおんです!しおんってよんでね!」
「ん、よく出来たね詩音。君たちの名前を教えてくれるかな?」
「こいなかまなみ!」
「こいなかこうたです」
「愛美に幸多ね。これからよろしくね。時に幸多君」
「はい?」
「詩音の婿にならない?」
「えっ」
「いやね、詩音はこんなにも可愛いけどね、男の数は少ないしロクでもない奴が多いだろうから、この子が結婚出来るか不安なんだよね。幸多君みたいな信頼できる可愛い子がお婿さんになってくれるなら嬉しいなって。あっ、私のお婿さんでもいいよ」
「なっ!いっ、いきなりなにいってるんですか!それに、ほんにんのいしもかくにんしなきゃいけませんよ…」
確かに彼女は可愛い。将来はもっと可愛くなるだろう。だが本人は嫌かもしれない。そう思い彼女の方を見る。
「えへへ〜。こうたくんがおむこさん」
満更でもないようだ。だがそこで待ったの声を上げる人がいた。
「こうたはあげないよ!おねぇちゃんのおむこさんになるっていってたもん!」
待ってほしい。そんなことは一言も言っていない。
「そうよ。お母さんのお婿さんになるって言ってたもの。あげないわ」
だからそんなことは一言も言っていない。
「それに幸多を誑かそうとはどういうこと?さすがに許さないわよ…」
「ふふ、さすがに冗談だよ。学生時代に一撃破壊の女傑の名で呼ばれた貴方を敵に回すようなことはしないわ」
母よ、貴方は学生時代に何をしていたのだ。
「そう… それが賢明な判断ね」
そういえば何故引っ越してきたのだろう。
「なんでひっこしてきたんですか」
「それはね仕事の関係でここに来た方が色々都合が良いからかな。あとは… ん?言わない方がいい?わかった。ごめんね、私の口からは言えないかな。知りたかったらお母さんに聞くといいよ」
そう言われたので母の方を見るが…
「ふふ、まだ秘密よ。私は薫と話があるから3人で遊ぶといいわ」
そう言われてしまったので仕方なく諦める事にしよう。とりあえず愛美と詩音と遊ぶことにした。
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こう言うとあれだが先ほど僕を巡って口論した愛美と詩音。果たして仲良く出来るのだろうか…
「そのときね、がくらんそーらーがね…」
「そうなの?わたしみてないからわかんない…」
どうやら共通の話題があったようだ。美少年戦士学ランソーラーだったかな… 語呂悪くない?この作品。ソーラン節みたいだし。まあ、でも仲良く出来てるみたいだし安心かな。
会話の輪に入れないのは少し寂しいが、仲がいいならそれでいいと思う幸多。
「あっ!こうたがひまになっちゃうね。おままごとしよー」
「だいじょうぶだよ。きにしないで」
「ううん。あそぼう!わたし、もっとこうたくんとおはなししたい」
「ん、わかったよ」
さすがにここまで言われてしまっては断るのも申し訳ない。そう思い幸多はおままごとをすることに決めた。
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「じゃあわたしはこうたのおよめさん!」
「じゃあわたしも!」
この世界では一応一夫多妻は可能だ。だが実際それをしている人は本当に少ない。何がとは言わないが、男がもたないのだ。
それもそのはず。男は手厚く保護される。それこそ絶滅危惧種の動物のように。だから働く必要もあまりない。やりがいの為仕事する男もいるが、職場で問題が発生しやすい為、男お断りの企業だってある。
働く必要がない。手厚く保護されている。こういったことから家を出る必要がなく、運動する機会が少ない。そのため体力の少ない男が多い。それ故にもたないのだ。
また女性同士の嫉妬などがある。そう簡単にはいかないものなのだ。
幸多はもちろん怠惰な生活など送る気はない。前世でやらなかった分今世で色々経験すると決めたからだ。だが一夫多妻をする気はない。
自分にそれ程の器量は無いし不誠実だと思っているからだ。だから身の振り方には気をつけようと注意しているのだが… 幸多は優しい。容姿も良く、こういった世界なので強制的にハーレムが築かれてしまうわけだ。
おままごとでも一夫多妻は避けたいと思っているため声を出す。
「いっぷたさいはいやかな…」
「じゃああいじん!」
「わたしも!」
余計こじれた。どこで学んだのだろう。そういえばこの前愛美は昼ドラを見ていたな… つまりはそういうことか。
何としてでもこのドロドロしたおままごとを改善しようと必死になる幸多を見て微笑む保護者2人がいたとかなんとか。
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無事おままごとを終わらせ、夕方になる空と燃え尽きた幸多。そんな中、母の恵が衝撃の言葉を言う。
「重大発表があります!なんと貴方達に妹が出来ました!」
その衝撃の一言と疲れから幸多は眠りにつくのであった。
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