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少年


とりあえず投稿。

歳は7〜9歳ほどだろうか、そのくらいの少年が血を流し床に横たわっている。そしてそれを見下す男と女。こちらはそれなりに歳をとっているようだ。



少年は思う。ようやく、この時がきたのだと。ようやく天使様が、神様が迎えに来てくれたのだと。薄れゆく意識の中、そう思う。



少年はこの牢獄(部屋)から一度も出たことがない。そして体にある無数の惨い傷から虐待されていたということは明白だ。



少年がふと上に眼を向ければニヤニヤと人間(両親)がこちらを見ていた。だが少年がもうすぐ死ぬと分かった瞬間、表情が青ざめていった。自分たちが何をしでかしてしまったのかようやく理解したようだ。



"いつもなら死ぬことなどなかった" "どうするのよ、私たち捕まっちゃうじゃない"そんな争いの言葉が辛うじて聞こえる。



あぁ、ようやくだ。何も聞こえない。何も見えない。体がふわふわと浮かび心地よく揺らされる感覚。睡魔に近いその感覚。しかしそれは間違いなく死。そして全ての感覚が消える。




そして少年は最後に思う。







この世界(地獄)から解放してくれてありがとう、神様。














来世は幸せな生活を送りたいなぁ…










ーーーーー

ーーー






間違いなく死んだはずだ。けれど僕の意識ははっきりしている、少年はこの異常な事態に恐怖する。



それもその筈だ。意識が途絶え、間違いなく死んだ。そう思っていたら辺り一面白、白、白。



何処を見ても、何処まで歩いても白。子どもが白のクレヨンで一面を適当に描いたように白い(白しかない)。そして自身の消えた筈の意識がはっきりとしている。



まだ自分は生きていたのかと、少年は恐怖する。またあの場所に戻らなくてはいけないのか、またあの責め苦に耐えなければいけないのかと。絶望がフラッシュバックする。



「いいえ、貴方は死にました。だからあのような場所に戻る必要はないのです」



背後から声が聞こえる。優しい、慈愛に満ちた女性の声が。少年は背後を振り返る。そこにはとても自身の語彙力では表現出来ない程美しい女性がいた。先ほどまでの恐怖など忘れてしまう程。



顔の造形はそれこそ一流の人形職人が何度も試行錯誤を繰り返し、何年も丹念に力を込め作り上げた珠玉の作品。1つ1つのパーツはとても整っており、やや垂れた目が彼女の優しそうな雰囲気を醸し出している。細く金糸のようにサラサラとした、枝毛が1つもない金髪が彼女の美しさを、引き立たせる。



この空間に負けないほど白く、そして美しい肌。胸の大きさは大きい。だが決して下品ではない。あと少しでも大きければ品が無いと言われてしまうかもしれないだろう。しかし、そうと思われないほど完璧なバランスで保たれている。そんな胸と比べ、脚も腕も腰もスラリとしている。



人智を越えた美がそこにはあった。



"あなたは誰ですか"そう少年が声を出そうとする。しかし声が出ない。どういうことだろうと思う。そしてようやく気づく。自身の体が無いことに。そして再び不安に駆られる。



「貴方は死にました。今の貴方は魂の状態です。だから落ち着いてください」



女性はそう言い、少年を抱きしめる。



…温かい。その感情で心が埋め尽くされる。ようやく少年は落ち着いた。再び女性に問う。



ーーあなたは誰ですか?ーー



「そうですね… 人々からは神と崇められている存在です」



ーーなぜ僕はこんな空間に?ーー



「私は…貴方を救いたかった… けど神が人間界に干渉することは許されないのです。言い訳だとわかっています。謝罪をさせてください。貴方が生きている間に救うことが… 出来なくてすみません… 目的は、貴方を救うことです。今から転生させます」



ーー僕はまた、あんな目に会うんですか…?ーー



「そんなことは絶対にさせません!貴方にとって生きやすく、幸せな世界に送ります!だから、貴方には愛を、幸せを知って欲しいのです…」



ーーそう…ですか。僕は… 幸せになってもいいんですか?ーー



「っ!!もちろんです。貴方にはその権利があります。何も恐れる必要はありません。だから自分の在り方を見つけてください。約束ですよ」



再び少年の意識は薄れてゆく。だがこの言葉を伝えなくてはいけない。



ーーありがとうございます。神様。ーー



「ええ。貴方の行く先に希望あれ」








ーーーーー

ーーー







深い水の中へと沈む。何も見えない。だが温かい。それだけで安心できる。しかしその安心も終わった。水の中から出されてしまった。そして宙に浮かぶ感覚。



やめて、やめてくれ、これ以上何もしないでと。必死におぎゃあ、おぎゃあと声を出し続ける。


ーー怖い、怖い、こわい、こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイーー



恐怖だけが心にあった。



だが再び訪れる温もり。女神に抱かれた時のように温かく安心できる。周りの音などほとんど聞こえない。けど自身の意識が消える前の言葉だけは聞こえた。



「貴方には幸せになってほしい。だから、貴方の名前は幸多(こうた)。ふふ、ありがちな理由かな。貴方は必ず守ってみせるわ。おやすみなさい、幸多」



ああ、温かい。そして僕の意識は完全に途絶えた。









逆転要素は次話からだと思います。

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