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Infinity Available Online  作者:
第1章 可能性の始まり
5/8

第4話 初戦闘

長い間更新せず申し訳ありませんでした。ようやく落ち着きましたので更新を再開したいと思います。

 さて、突然であるが屋根の上というものにのぼったことはあるだろうか?

 屋根の上というものは少年心をくすぐられのぼってみたくなるものだと思うのだが、実際にのぼってみると手すりがなかったり、屋根自体が傾いていたりなどの理由で怖いと感じることが多い。

 かくいう俺も小さい頃に屋根から雄人の家に遊びに行こうとしたときに、屋根と屋根の間のわずかな隙間におじけづき、なかなか渡れなかった経験がある。……まあ、いまではホイホイと渡って遊びに行けるようになるのだから慣れれば問題ないと思うのだが。


 まあ俺の言いたいのは、屋根の上は案外怖いものだというその一点につきるのだが……ではなぜこんな話をしたのかというと、


「……どうやって降りんだこれ?結構高いぞ」


 まあ、なんだ、屋根の上にいるからなんだ。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「よいしょっと……あー、疲れた。なんで屋根の上に飛ばされたんだ……」


 設定が終わったらそこは屋根でした。なんていう貴重?な体験をした俺は、家の裏側にあった荷物を伝うことでなんとか下に降りることができた。


「さて、まずは……なにすんだ?」


 やべ、何も知識がないせいでやるべき指標がない。……何か忘れている気がするが、思い出せないし大した事でもあるまい。


「あー、んー、……よし、戦おう」


 やっぱりRPGといえばバトルだよね!

 まあ、実際身体がどういう風に動くのかがわからないし、どのみち戦闘は経験しとかなきゃいけないから、最初でも問題ないだろ。


「えーと、街から出るには……確かあっちが近かったな」


 屋根の上から景色を見ていたことが幸いして、門の位置はわかる。案外何事も役に立つものだな。

 屋根から見た限りでは、この街は丸にちかい形で東西南北の4方向に門があるみたいだ。まあどれが北かっていうのはわからないが……ともかく一番近い門から外に出てみよう。


 ……あ、武器がねえ。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 門までの道中にあった武器屋で一番安価だった杖を買って門に向かう。

 門はそれなりに大きく、それなりにごつい服を着た門番もいるまともなものだった。


「ほー、さすがファンタジーRPG。やっぱり服装もそれっぽいものになってんだな」


 まあ、俺もおんなじような恰好をしてるわけなんだが……

 などと思いながら門番を見ていると、突然、門番の頭の上に黄色い逆三角形のモジュールが出現した。


「ん?なんだあれ」


 ほかの人も同じように見つめると、同じように黄色いモジュールが出現する。

 しかし、門をくぐっていく人の中には、モジュールの色が緑な人も存在した。


「……ああ、なるほど。識別かー」


 つまり、黄色はNPC,緑色はPCってことだろう。PCというのは、プレイヤーキャラクターの略で、俺と同じように中に人が入ってるキャラクターのこと。NPCというのはノンプレイヤーキャラクターの略で、PCだけでは成り立たないこういったゲームで、登場人物を演じる中に人がいないキャラクターのことだ。


「そういや、ここにいるNPCはどうやって動いてるんだろうな」


 まさか、一人一人にAIが搭載されているわけでもないだろうし。大体のゲームではNPCには決まった行動がプログラミングされていて、俺たちプレイヤーの行動に反応して動くって感じだったな。


「ま、今はいいや。とりあえず戦ってみよう。身体を動かしてみたい」


 人の流れに乗って門の外にでる。

 さあ、いよいよ始まりだ。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 街の外はだだっ広い平原になっていた。この世界の地理は全然わからないが、どうやらこの街は広い平原の中に作られた、壁で囲まれた街のようだ。


「んー、結構人いんなあ」


 このゲームの初回生産台数は1万本、そのうち何人がこのリリース当日にログインできたのかは知らないが、相当な数がいるはずだ。


「というか、よくもまあここまで現実そっくりにつくれたな……さすがはエーベル社ってとこか」


 今までのMMOゲームでは、ゲームの中で実際に身体を動かせるという革新的な楽しみはあったものの、実際の中の景色はあまりうまくつくれず、景色の美しさを謳うゲームであってもどうしても違和感を感じるものにしかならなかった。

 しかし、エーベル社が全力を注いで作り上げたというこのIAOでは、まさに現実と相違ない世界だと感じる。草原に生える草であっても、風に揺れる姿や実際に触った感覚に違和感はない。いや、むしろこちらの世界の方がしっくりくるのではないかとも感じられるくらいだ。


「『我々はこのIAOに全力を尽くしました。今までのVRゲームは違う、もう一つの〈現実〉。それを作ることを目標にこのゲームを作りました。

 プレイヤーのみなさん、もう一つの世界で、自分のやりたいことを楽しんでください』か……なるほど、確かにすげえな」


 さて、などと考えながら歩くうちにそろそろ周りにプレイヤーの姿が見えなくなってきた。ここなら邪魔することもされることもないだろうし、戦ってみようか。


「……お、ちょうどいいところに猫っぽいのがいる」


 前方20mってとこに猫を狂暴化させたような魔物がいた。どうやらまだこちらには気づいていないようだ。


「ふーむ、どうしようか」


 インベントリから杖を装備しながら考える。ちなみに装備した杖は俺の背中に装着された。意外に大きい。


 名称〈ウッドロッド〉

 装備区別 杖

 耐久力 10/10

 重量 8

 効果 

 魔法攻撃力上昇

 説明 

 もっとも構造が単純な杖。

 街の武器屋で安値で取引されており、魔法使いの卵にオススメの一品。


「んー……まあ、身体の調子を確かめるって意味合いもあるし、とりあえず気づいてもらうか」


 いきなり倒さずにまずは気づいてもらうために魔法を放つ。

 このゲームでは魔法の発動には詠唱が必要であり、強力な魔法ほど呪文が長いようだ。

 メニューを開いてスキルを選択し、魔法スキルの欄から風魔法〈ウインドカッター〉を選択し発動する。


「〔風よ、刃となりて切り裂け〕」


 〈ウインドカッター〉を選択すると、口が勝手に呪文を唱える。口が勝手に動くという奇妙な感覚にとらわれながら、杖で狙いを定めて魔法を放つ。


 狙いは、魔物の1mほど前だ。


「〈ウインドカッター〉!」


 魔法を放つと、空中から緑色の魔力をまとった風の刃が飛んでいく。杖の向けた先に飛んでいった魔法はそのまま魔物のほうへ向かい……


「あ」


 見事、魔物に命中した。


「ギャアン!!!?」

「……ま、まあ、生きてるし結果オーライ?」


 狙いが外れて見事に命中してしまったが、結果的に魔物の注意を引くという目標は達成したため、外したことは一旦わきにおいて魔物の動きに集中する。

 どうやら命中した魔法はかなりのダメージを与えたようだが、一撃というほど強力なわけではないらしい。攻撃を受けた衝撃から回復した魔物は魔法を放った俺に気づき、怒りの表情を向ける。どうやら、かなりお冠のようだ。


「グァラァア!!」

「おっと、来るか」


 こちらのほうへ駆け出してきた魔物に備える。そこまで早くはないし、どんな攻撃をするかはわからないが躱してみる。


「グアッ!!」

「よっと、うん、この程度なら躱せるよな」


 普通にとびかかってきたため身体をズラしてかわす。どうやら、今の状態ではそこまで現実の身体との差異はないらしい。


「さて、んじゃまあ次を試すか」


 俺に躱されると身体を反転させてもう一度向かってきたので杖を構える。カウンター、いけるか?


「そこっ!」

「グアラッ!!?」


 魔物がとびかかってきたタイミングに合わせて杖をスイングすると、見事に頭にヒット。どうやら、脳震盪のようなものになったみたいでピクピクと震えている。


「うし、これくらいなら魔法なしでも対処できるか」


 ただまあそこまで威力がある感じでもないし、HPを削るのにはやはり魔法に頼ることになりそうだ。


 さて、とりあえずこいつはここまででいいか。あんまりやるとかわいそうだし、この辺で葬ろう。

 幸いにも魔物は動ける状態じゃないし、魔法を唱える時間もありそうだ。


「んじゃま、次はこれでいこう」


 再びスキル欄を開き、水魔法〈アクアボール〉を選択する。


「〔水よ、球となれ〕〈アクアボール〉」


 呪文を唱えると、今度は杖の先っぽに直径50㎝ほどの水の球が浮かび、放つと放物線を描いて魔物の上からぶち当たった。

 顔から水をかぶった魔物は声もあげずに息絶え、やがて少しずつ光となって消えていった。


「ま、こんなもんか」


 とりあえず、この程度なら大丈夫だ。体もしっかり動くし魔法もちゃんと発動する。ただ、いちいち敵の目の前でスキル欄を開いて魔法を放つっていうのは無理があるな。このままだと不意打ちにしか使えんが……まあ、いろいろ試してみよう。


『ポーン。アイテム〈メイアキャットの尻尾〉をドロップしました』


 と、反省をしている俺の脳内にアナウンスが響いた。どうやら魔物を倒したことでドロップ品が発生したらしい。


「ほー、さっきのやつメイアキャットっていうのか」


 さっきのやつなら動きも単純だし、あまり苦労せずに狩りを続けられそうだな……


「よし、んじゃまあ猫狩りといこうか」


 俺は次の標的を探して、再び草原を歩き始めるのだった。


 ……あ、理緒のこと忘れてた。やべ、どうしよう。……ま、探したけどいなかった、でいいだろ。さ、次次ー。














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