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Infinity Available Online  作者:
第1章 可能性の始まり
2/8

第1話 導入

「お前の夏休みの予定は全部それな」


 夏休みも近い7月中旬のある休日。

 くそ暑いからとふて寝を決め込んだ俺を自分の家に引っ張りこみやがった、目の前でドヤ顔しながら俺を見ている俺の友人の〈袖神雄人(そでがみゆうと)〉は、開口一番そう言って、俺〈琴吹海里(ことぶきかいり)〉に何かを投げつけた。


「……は?」

「だからお前にそれやるから夏休み一緒にプレイするんだっつーの」

「……why?」

「……一回叩いてリセットしてやろうか?」

「OK、ちゃんと返事するからそれは勘弁」


 ちょっと言われた意味がわからず頭がスパークしたらしい。少しだけだが真っ当な返事が返せなくなったみたいだ。

  受け取った物は何も書かれていいない白い箱で、中身がわからない。


「で、なんなんだこれ?これが何なのか教えてもらわないと答えるもなにもないんだが」


 と聞くと、雄人は気色悪いほどの満面の笑みを浮かべて、


「《Infinity Available Online》だ!」

「……とりあえず、気持ちわりいからその顔やめろ」

「ひでえ!?」


 ショックを受けているこいつはほっといて、Infinity Available Onlineだと?

 たしかそれは国内最大のゲーム会社、エーベル社が作ったVRMMORPGのはずだ。3ヶ月前にβテストが終了し、一週間後の7月20日から正式サービスが始まるはずのゲームで、エーベル社が国内のオンラインゲームを纏め上げ、総力を上げて作りあげたと豪語していたもの。

  当然、世界に名高いエーベル社の作ったゲームだけあり、世界中のゲーマーがこれを手に入れようとしたが、初回生産はが1万台と少なく、発売されて3時間もたたずに完売したと言われていたはずだ。そんな貴重なものをなぜこいつが……


「雄人、悪いことは言わん、いますぐこいつを持ち主のところに返してこい」

「待て待て待て待て!海里お前なんか勘違いしてないか!?」

「ごまかさなくていいぞ雄人、俺は何も見ていないから……な?」

「こんな時にそんな優しい笑顔使うなよ!」


 こいつは生粋のゲーマーだしな、手に入らなくて錯乱することもあるさ……


「はあ……とりあえず訂正しておくぞ。こいつは盗品でもなんでもない、ちゃんと俺のモンだ」

「……えー」


 信じられん、盗んだんじゃないとしたらなぜこいつがこんなもんを……


「実は俺、このゲームのβテスターでさ、ちょっと前までこのゲームやってたんだ」

「は!?お前がテスター!?」


  疑問に思っていた俺に、衝撃の事実が知らされる。


「おうよ、これでもちょっと名のしれたプレイヤーだったんだぜ?んで、βテスターはテストプレイの報奨として正式サービスでのプレイ権を与えられんだ」

  「ほー……」


 なるほど、言われてみりゃ1月から3月までの二月程度若干付き合いが悪かった気がするな。ていっても些細なもんで別に気にする程度でもなかったんだがまさかそれがこれをやっていたからとは……


「ん?でもお前がこれを渡したらお前がプレイ出来なくなるんじゃないのか?」

「ああ、そこは問題無い、俺にはもう一つあるからな」


 といいながら雄人は鞄からもうひとつソフトを取り出した。


「実はお前に渡したそいつは、俺の兄貴のもんなんだよな」

「へ?黎人(れいと)さんの?」


 そんなものを俺に渡していいのか?


「もともと兄貴が俺をこのゲームに誘ってくれたんだが、兄貴、6月から海外出張でさ、どーもゲームする時間が全然取れないらしいんだよね。んで海外行く前に俺にプレイ権利をくれて、海里とやれって言われたわけ」


「なるほどね……」


 確か雄人の兄の黎人さんは、一年の半分は海外で働く企業の人だったはずだ。かなり気のいい人で、隣に住んでいる俺たちにもよくしてくれている。

  が、最近あまり家にいられなくて困ったみたいな話を聞いていたが、また海外に行くのか。大変だな。

 そんな権利を俺にくれたのはありがたいが………


「悪いけどパスさせてもらっていいか?なんか、黎人さんの努力を奪うようでわるいし、何より妹の相手もしなきゃならんしな」


 夏休みに妹ほっといてゲームしたら妹に何されるかわからん。


「気にしなくていいと思うぜ?また時間が取れたら個人的なツテがあるからまた手に入れるって言ってたし。あと、妹さんについては問題ないな」

「ん?なぜだ?」

「だってお前の妹もこのゲームプレイするからな」

「……は?」

「なんだ、気づいてなかったのか?理緒ちゃんもこのゲームのβテスターだぞ?」

「マジか!?」


 んなこと俺一回も聞いてないぞ!?


「まあ俺も気づいたのはβテストが終わってからだが……」


 苦笑しながらそういう雄人だったが、俺はそれどころじゃなかった。βテストは今年の一月から三月までで、理緒は今高一。ということは……


「悪い雄人、急用ができた、ちょっと家帰って妹を説教してくる」

「待て待て待て!いきなりどうした!?」

「どうしたもこうしたも、受験生の間に、しかも試験間近にそんなゲームをするとは何事か!」

「……あー」


 くそっ、人に黙ってゲームするとは、なんと羨ま、もといけしからん!

  外にでる暇さえ惜しい、窓から行くぜ!


「んじゃな雄人!」

「あ、おいまて話はまだ!「説教してから聞くわ!また後で来てくれ!」…まったく」


 そう言って、俺は窓から屋根伝いに自分の部屋に戻っていった。









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