盗み見、盗み聞き1
さて!月曜日ですよ。
待ちに待った林大変身、お目見えの瞬間だよ。
さすがに私も美鈴ちゃんの反応が気になったから、いつもは遅めの登校なのにすごい早起きして学校に来ちゃった。
ちなみに昨日渡せなかった焼き菓子は、今日千香ちゃんに渡すんだ。
まあ、それは今は関係ないから置いておく。
林の話だと、美鈴ちゃんは比較的朝早く学校に登校してくるらしい。
教室で二人が対面してやり取りすると私が覗き見しにくいから、わざわざ下駄箱で待っているように林に頼んだ。
朝の下駄箱なら、生徒が多いから私が盗み見しててもバレにくいし、観察しやすいと思ったのだ。私、頭いい!
あ、林には上手く言いくるめてあるから、下駄箱で美鈴ちゃんを驚かせちゃおう、という作戦であると伝えてある。
「林、最終チェックしてあげる。ちょっとおいで」
「おはよう、橋本さん」
まだ登校には早すぎて、人がまばらなうちに不備がない様にしておかないとね。
林の表情は緊張しているのか、ちょっと固い。
「コンタクトは大丈夫だね」
「やっぱりまだ怖くてすごく入れるまでに時間がかかったけどね」
「髪も、爆発してない」
「美容師さんに聞いたセットの仕方をしたから」
林の全身を見るけど、問題はなさそうだ。
髪は以前のようにもっさりしているのではなく、ちゃんと髪が流れていて慣れないながらも一生懸命セットしてきたのだということが伝わってくる。まあ、林の後頭部は寝癖が直っていないのだけど。鏡で見れなかったのだろうし、まだ初心者だから許容範囲ということにしておこう。
顔を隠す前髪もなくなり、眼鏡もなくなった林の目はちゃんと直接見ることもできる。直視されることに耐えられないのか、私がガン見すると視線を泳がせるけど。
制服はもともと着崩してもないし、服装に関しては何も言うことなし。
昇降口の端っこで、後頭部のことを教えてあげる。教えておけば、次から気づけるだろうし。
そのまま、少し雑談して林の緊張もほぐしてやる。
笑い方がぎこちないもん。私が協力しているんだから失敗なんて許さないんだからね。
「よし、それじゃあ私は見てるから」
「ちょっと恥ずかしいんだけどね」
「頑張って。そろそろ来るだろうし」
生徒の量が増えてきたタイミングで私はちょっと林から離れて、物陰に隠れる。
林は自分のクラスの下駄箱の近くで落ち着きなくモゾモゾしながら立っている。
もうちょっと落ち着けよ、とツッコミをいれたくなった。
程なくして挙動不審な林は所在なさげに視線をソワソワしていたのに、顔を上げて顔を輝かせた。
髪も眼鏡もないおかげで、ちょっと距離があっても表情が見やすくて有難い。
「お、おはよう!」
林が声を張る。
美鈴ちゃんは下駄箱に近づいて来ていたし、十分聞こえてるはずである。
「おはよう、……浩平君?」
「うん」
一瞬虚を突かれたみたいな顔をした美鈴ちゃんだけど、目をゆっくりと見開いたとおもったら、みるみる耳が真っ赤に染まった。
一方の林はというと、ちょっと不安そうに視線を下げた。自信持てよ!
「僕……どう、かな?」
声が小さくなった林を凝視している美鈴ちゃんは、耳だけじゃなくて顔までほのかに赤くなってきた。
「か、カッコいい。と思うよ」
「本当に?!」
「うん。ちょ、ちょっとこっち見ないで。照れちゃう
」
「あ。ご、ごめん」
照れて林の声よりも小さくなった美鈴ちゃんの台詞に、元気に反応した林。
瞳を輝かせて美鈴ちゃんを見た林に耐えきれなくなったのは美鈴ちゃん。両手で真っ赤になった頬を覆って林から顔を背けると、それを見て照れた林も顔を背けた。
……、なんだこのリア充感。
爆発しろよー!ばーくーはーつー!




