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立候補。私ライバルキャラやりたいですっ!  作者: 星ヶ里のブタネコ
11月

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野暮ったい少年改造計画2


「ちょっと買いすぎたかな?」

「そうだね。お、重い……」


服のセンスを磨くために、適当に本屋にあった男子ファッション誌を目についた物全部抱えて買って来たのだけど。買いすぎたようで、袋に入れてもらった雑誌の重量に袋が耐えられそうにない。

林が両手に下げるビニール袋は、たった今本屋から出たばかりだというのに持ち手がちぎれそうなほど伸びてしまっている。


「半分ちょうだい。私も持つよ、っと……本当に重いわ」

「あ、ありがとう」


林の片手分を譲り受けると想像以上に重かったから、両手で抱っこするように雑誌の入った袋を抱え込む。


「どこかの店でこの本を使って洋服の勉強がしたいんだけど……。この重さだしあんまり遠くには行きたくないね」

「確かに。あっ、あそこ!」


林が苦笑を返して、大きく辺りを見渡すちょっと大きな声を上げた。

林の首が向いている方向を見ると、通りに木の案内板が立てかけてある。よく店先にメニューなんかをかいてあるアレだ。


「でかした!あそこに行ってみよう」


本屋の数軒隣にある案内板は、重くて動きたくない私達にはピッタリの距離感である。

簡単に移動を済ませると、そこには周りの枠が木で中が黒板になっているタイプの案内板。腰くらいの高さの案内板は、店の入り口が分かりやすいように矢印で店の場所を示してある。矢印の先には、言われなきゃ気が付かないようなひっそりした階段の入り口。


このお店の雰囲気は良さそうに見える。案内の黒板部分には紫の造花が飾り付けてあって、アットホームな手作り感が伝わってくる。

多分、飲食店な……気もする。


「これ、なんて書いてあるの?」


私には黒板の文字が読めなくて、判断がつかないけど。


「英語だよ?!橋本さん本気で言ってるの?」


前屈みになって黒板を睨みつけて文字にメンチを切っていたら、ちょっとドン引いたように林が突っ込んだ。


「この単語とかこっちの単語で判断がつくでしょ?」


林はしゃがみ込んで、案内板の文字をなぞるから、私も見やすいように林のすぐ横でしゃがんで文字を見る。

少し林の肩が当たって邪魔くさいけど、看板の文字を見るのには支障ないからいいか。荷物が重いから位置を少し動くのも億劫だし。


TEA(てあ)COFFEE(こふぇえ)?なにそれ」

「……橋本さん、もっとちゃんと勉強した方がいいよ。というかカフェに来たりしないの?これくらいならメニューにも載っている単語だよ」


林は呆れた様子を隠さずに、溜息を吐いた。

英語なんて使わずに日本語で書けばいいじゃないか!ていうか、葵先輩とカフェに来るときは先輩がオススメを教えてくれるからメニュー見る必要ないんだもん。知らなくてもしょうがないでしょ。


林が改めてもう一度溜息を吐いたから、話題を変えるために私は慌てて目についた物を指さした。

林がファッションの勉強中に、私に英語の勉強をさせようしたらたまったものじゃないし。


「そ、そういえばさ。その紫の花ってなんて名前だっけ?北海道にたくさん咲いてるやつだよね?」

「え?ああ、ラベンダーだよ。その言い方だとどこにでも生えてるみたいに聞こえるけど、確かにラベンダー畑って有名だよね」


ラベンダーか。ラベンダーね。

名前は聞いたことあるわ。これがそうか。


しゃがんだまま、ちょっと顔を上げて、案内板についているラベンダーを見上げる。


「テレビではよく見るけど、この目で一度見て見たい気もするよね。あ、でも……」


折角の北海道ならジンギスカンやカニとかを食べまくりたい感じもする。

じゅるり。想像したら食べたくなってきちゃった。

……てことでラベンダーの話題を言ってみたけど、やっぱり私は花より団子でいいや。


「そうだね、きっと綺麗なんだろうな。そういえば、愛咲さんは昔見たことあるって言ってたよ。幼稚園から小学校の中学年まではそっちの方に住んでたんだって。結構今までに何度か引っ越しをしてこの辺に来たって言ってたよ」

「お肉……、魚介……。いや、この店はカフェらしいし、ケーキの腹にしなくては……」


お腹の気分を北海道の味覚から甘い物にシフトチェンジ!

胃袋の受け入れ態勢は整った!

さあカモン、甘い物よ!


「橋本さん、聞いてなかったでしょ」

「へ?中に入るって話じゃないの?」

「はあ……、まあいいか。入ってみようか」


林がその場を立ち上がり、案内板が示す細い階段を上っていく。上を見れば、建物の外にある階段だからこの建物の屋上部分まで伸びていることが丸わかりだ。この外付けの階段を使用して上っていく姿も、通りからバッチリ見えるだろう。

お腹がケーキモードに移行した私は、すぐにでもケーキが食べたくってその後を急いでついて行った。


私としてはキビキビ上ってほしいんだけど、林の歩みが遅いのである。

だから、私は階段の後ろから林をせっつく。


「早く行ってよ」

「うわっ!この階段狭いんだから、僕の横を通って前に出ようとしないで。物理的に無理だから!」


なんとか林の前に出ようとしてみて、林の体を押しのけてみるけど、階段幅の問題で林のすぐ後ろか林のいる同じ段に上るのが精一杯。

雑誌の袋を私の体にピッタリくっつくように抱きかかえ、林の体に沿わして脇を抜けようとしても駄目。

もうイラッときて林の肩を無理やりに後ろに引っ張ってやったら、林が泣きそうな声を出したからやめた。


「あー、着いちゃったし」

「階段から落ちるかと思った」


エレベーターのない不便で目立たないカフェは、この建物の三階に存在していた。

花のリースがかかったドアは開かれていた。花の鉢植えがストッパーの役割として足元に置かれているから開きっぱなしになっているみたい。

温かさを感じる茶色で統一されている鉢やドアがナチュラルさを演出している店先。なんだかどことなく花のいい香りが漂っている気もする。


さあ待っててね!私のケーキ。

意気揚々と入ろうとした瞬間、なんだか一瞬強烈な寒気を感じて足を止めた。


「入らないの?」


不思議そうな顔をした林が奥に入って「すみませーん、お店の方いますか」と呼びかけている。


感じた寒気は一瞬で消えた。

もう11月に入っちゃったし、外は確かに冷たい風が吹いている。風邪のひき始めかな?と原因に当たりをつけて、私の温かい店の中に入って行った。


「ケーキありますか?!」


もちろん店内で大事なことを聞くのは忘れない。

それが目的だし……、て、あれ?ここに来たのは、これが目的だったっけ?




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