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みんなの標的ですよ1



葵先輩が真剣は表情で、真面目な声で、教卓の前で堂々と胸を張る。


「では、質問はありませんね。これにて今回の風紀委員の会議を終了したいと思います」


特に大きな議題があったわけじゃないんだけど、定期会議ってものらしい。今までも何度かこういう会議あったんだよ。

風紀委員って仕事が多くて、大変な役職なんだなってしみじみそう思う。

といっても、私は今回もほとんど内容を聞いてなかったから、一緒に出席していた千香ちゃんにお任せってことになるんだけどね。


風紀委員を仕切っていた葵先輩が、軽く微笑んだ。


「お疲れ様でした。外が暗くなってきて危ないので、帰り道はくれぐれも気をつけて下さいね?」


この教室に集まった全ての風紀委員を労う言葉のはずなんだけど、主に女子生徒がすごく嬉しそうにしている。

中には会議中からずっとウットリした様子で前を見ていた人もいたし。


私?私は前を見ているフリをして、ほとんどの時間、美鈴ちゃんを見ていたよ。

美鈴ちゃん、今回も教卓前にいたから記録係やっていたし。働き者だよね。

今もまだ書ききっていないようで、黒板を見るために頭を上げてから手元の紙に視線を落として、を繰り返していた。


ちなみに必死で二年生の先輩が集まっている方を会議中うっかり見ないように気を付けた。

というか、今も視界に入れないように頑張っているんだけど、もう無理かも。私は内心ガクブルしながら、無駄な足掻きを続けてみる。当然見ない理由は璃々さんが恐いからなんだけど……。


でも私が見ないように頑張っても、会議終了と共にこちらへ来そうな璃々さんを止める人がいないと私の努力は意味ないよね。

もう現実逃避を続けるのが不可能なくらい近くに来ている璃々さんの姿が私の視界の中に入って来ちゃってるし。誰かー、助けてー!


「西川さん、お疲れ様ね。橋本さんも」

「ええ、お疲れ様です」


明るく話しかけてきた璃々さん。

千香ちゃんは愛想よく返事するけど、私この隙に逃げてもいいかな?


「うち、ちょっと橋本さんと話したいのね。借りても良い?」


ダメだ!逃げられなかった。

一応笑っておいてはいるけど、愛想笑いって分かると思う。というか、口元ピクピクしてる自信がある。

千香ちゃんは一瞬私を見ると、ちょっとだけ目を眇めた。


「ここでは駄目なんですか?」

「うちはここでも構わないよ」

「いや、行きます!千香ちゃんごめんね、少し待ってて」


千香ちゃんが私を助けてくれようとしたけど、私としては人目のない方が助かる。

十中八九この前の保健医の話だよね。でも、璃々さんの情報網は広いみたいだから、十和様とのデートの話も飛び出してくるかもしれない。そうなったら危険だ。

この教室の誰が十和様のファンなのか分からないし。ここで暴露されたら、私の方が分が悪い。一気に敵の数を増幅させかねない。


会議していた教室の外。少し移動して廊下の端に来た。

ここなら人目につきにくい。


「で、橋本さん。うちの言いたいことは言わなくても分かっているんだよね?」

「分かってます」


保健医とのことはバッチリ多くの生徒に目撃されているし、隠せるわけがない。


「朔夜先生に近づくなって、うち言ったよね。何なの、先生に付きまとっているわけなの?」

「め、滅相もない。というか私としては保健医と関わり合いたくもないというか……」

「とにかく先生に付きまとわないでよね!」


ちょ、弁明をさせて!ていうかさ、勘違いされてない?!

私が保健医に絡みに行っているようではないか。私はホントの本当にあんな奴と関わり合いたくなんてないのに。璃々さんは全然信じてくれていないようである。


「それに、十和とも出かけたんだよね?」

「げっ」


やっぱり璃々さんそのことも知ってたんだ。デートの方は生徒にバレないようにコッソリ移動を心がけたのに。璃々さんの情報網にはなんでも筒抜けらしい。恐ろしい……。


「十和の様子がちょっと変だったから、しつこく聞いたら答えてくれたのよね。二人で出かけたって」


……本人からの情報なの?!

仲良しなのは分かっていたけど、できれば隠しておいて欲しかった。十和様が璃々さんに暴露しちゃうと、私としてはどうしようもない。情報網とか、そういう問題でもないじゃんか。隠し通せるはずもなくなるし。


「十和なんだか考え込むことが多くなって、少しおかしいのよね。あなたと出かけた日からいつもの十和じゃないのよ。十和に何を言ったのか、十和と何があったのかまでは知らないけど、十和の害になるようならうちが容赦しないからね。十和は幸せにならなきゃいけないんだから!」


冷たく私を睨みつけて、璃々さんが吐き捨てる。


「十和を煩わせないでよね!」


璃々さんは言いたいことを言い終わったのか、そのまま立ち去っていく。

私としては、とりあえず一息つけるようになったって感じだ。

璃々さん恐いわ。まあ、言われていたのに保健医に近づいたり、アイドル十和さまと出かけた私が悪いんだけどさ。


でも、思ったことを一言口に出す。


「十和様、愛されてるなぁ……」


親衛隊隊長を名乗っているのは伊達じゃない。

というかアイドルと隊長って関係の以前に、あの二人大親友だよね。お互いにお互いを思い合っているような

二人の間にある絆みたいなものは、いくら私だって二人の目を見ればすぐ分かるのである。



「あの女、敵?」


風紀委員が会議していた教室に戻ると、待っていてくれた千香ちゃんが開口一番にそう聞いてきた。

あの女って、もしかして璃々さんのこと?


「あの女に何かされているなら、わたしに言うのよ?わたしが未希を守ってあげるわ」

「あはは、大丈夫だよ。何もされてないよ」


目がマジだった。

千香ちゃん、黒い部分見えちゃってるよ。隠して、隠して。



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