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立候補。私ライバルキャラやりたいですっ!  作者: 星ヶ里のブタネコ
10月

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芸能人デート1


昼休みも終わりそうな時間。

ちらり、ちらりと注目を集める。

保健室の前の廊下なんて通るんじゃなかった。


急いでいるから仕方なく通ったけど、案の定というか、恐れていた事態というか……。


横を過ぎる生徒には分からないように掴まれている腕が、ジワジワと圧迫される。

ちょっと痛くなってきたぞー、このままだと確実に腕に人の手の形のあざができる。


「遠慮せずに保健室に来い」


扉を閉めてしまえば周りの目を気にせずに済むだろ。どんなことしても聞き出してやるよ。


と、副音声のように聞こえる。

保健室に入ったら、間違いなくこの悪魔から逃げられなくなる。これ、間違いない。


「大丈夫です。ケガもないですし」

「顔色が悪いぞ?無理を抱え込むのは見過ごせないな」


顔色が優れないのは、お前のせいだよ!暴力教師!

さすがに少ないとはいえ、人通りのある廊下でそう叫ぶことはできないからグッと我慢。

保健医に暴言を吐いたら、私が悪者にされてしまう。


「話を聞かせろ。全部話せば楽になるぞ?」

「先生がこの手を離してくれたら、それだけで楽になりますから!」


話がかみ合っていないっていうか、このままだろ押し負けそうなんだけど!

なんか人通り減ってきてない?!ウソでしょ。もしかしてもう授業始まる時間?

ピンチ、ピンチ!授業が始まったら普通誰も廊下になんていない。ってことは、保健医が多少強引に保健室に連れ込んでも、目撃者がだれもいない。

ちょっと背中に冷や汗が伝う。さすがにやばいって。

誰か、誰かー!私に助けを!


心で叫ぶSOSは誰にも届かず、廊下から人の気配が遠ざかっていなくなったように感じた。

無情にも授業開始のチャイムが鳴った。つ、詰んだかもしれない。

心臓がうるさく鳴り出す。

ト、トッという音が物理的に聞こえたような気がした。


瞬間。


「朔夜先生、何してるの?」

「ったく。お前か。授業はどうしたんだ」


救世主が訪れた!

声だけで誰が来てくれたのか私は理解した。


「今から教室に戻るところだよ。同じく今ここにいるお嬢さんは誰かな?」


私の後ろから聞こえた声は近づいて、横から麗しい顔が私の顔を覗き込む。


「ああ、未希ちゃんじゃないか」

「十和さまー」


安心で泣きそうな情けない声が出たのはしょうがないと思うのだ。

自然と緩んだ保健医の手を抜けて、掴まれていた箇所を擦りながら十和様の背後に逃げる。

この悪魔とはある程度の距離を取っておかないと危険である。


「一体どうしたんだい?朔夜先生も機嫌が悪そうだし、タイミングが悪かったかな?」


おどけたように十和様が言う。

悪くなんてないですよ、すごい助かりましたよ!来てくれて感謝です。


そんな感謝モードの私と対照的に、保健医は低い声を出した。


「そうだな。お前が来なきゃ、聞き出せてたかもしれねえから、タイミングは悪かったな」


この発言に十和様が目を丸くする。


「珍しいじゃないか、そんなことを言うの。もしかして朔兄……」

「まあ、別の機会にしてやろう」


十和様の言葉に被せるように保健医が言った。

視線はバッチリ私の方を見てやがる。射抜くような鋭いやつだ。


「次こそ、十年前のことについて話してもらうからな」


保健医は言いたいことを言ったら、そのまま保健室に戻って行った。

保健室の扉が完全に閉まり、姿が見えなくなって、やっと私は安堵の息を吐きだした。


あいつ本当にキライ。

毎回毎回、しつこいんだよ!

私に聞くんじゃなくて、自分で情報を集めろっての。


あいつがいなくなった安心感からか、ちょっとイラついてきた。

面と向かって言うだけの度胸はない。あの悪魔、目力強いんだもん。睨まれるとマジ恐いの。


保健医について色々考えてしまった私を、現実に戻してくれたのは十和様だった。


「授業に行かなくていいのかい?」

「はっ!そうだった」


この時間だと遅刻になっちゃうけど、先生に謝れば多分大丈夫だよね。

走っていくべきかな?でももう走っても間に合わないって分かってるし、歩いてもいい気もする。

そもそも廊下は走っちゃいけないものだし……。


「未希ちゃん」

「へ?」


十和様が柔らかい笑顔で私を見ていた。


「今日の放課後時間あるかい?」

「え?え、えーっと。多分」


そう答えると十和様の笑顔が深まった。

んー、なんだろう。バックに薔薇が舞っている幻覚が見える気がする。

その薔薇背景を背負ったまま、十和様は数歩私から離れた。


「なら、今日の放課後自分とデートをしよう。ちょうど生徒会の仕事もないんだ」

「え?ええ?!」

「他の子には内緒だよ」


口元に指を添えて、内緒のポーズを取りながら振り向いた十和様。

ちょっと私の方を向いてウィンクを飛ばすという凄技も披露してくれている。


っていうか、デートって。

ええ?!で、デート?

親衛隊いる人とデートだなんて、もし万が一でも知られたら……。私一体どうなるの?!


「放課後になったらすぐに裏門に来てくれるかい?それで待ち合わせしよう」

「うえ?え?!」


混乱しすぎて、戸惑いの言葉しか出てこないんだけどぉぉおぉ。


「バレたら大変だから、くれぐれも誰かに言ったらダメだよ?」


驚きで視線もキョロキョロの私を面白そうに笑った十和様はそれだけ言うと、じゃあねと自分の教室に帰って行った。


ちなみに、私はこの時間の授業を欠席した。

驚愕で、廊下で立ち尽くしてたのである。衝撃が大きすぎて故障したようにその場から動けなかった。

いや、だって。ねえ。これで驚かないなんてほうが無理だし。




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