アフターケア忘れてた1
今朝は、とっても落ち込む夢を見た。
なんとかしようともがくけど、私では何もできなくて無力さを噛み締める夢。
そんな顔をさせたかったわけじゃないのに、運命は変わらない。どんなに伸ばしても、私の手が届くことは決してない。私の唯一の、好きなのに苦手なお話。
「うー。嫌な夢を見た。気分が盛り下がるー」
「静かな未希って、なんだか珍しいわね」
千香ちゃんに会えるなら、基本的に元気だもんね、私。
でもね、私も人間だからたまには大人しい時もあるんだよ?千香ちゃんに会えない時とか、千香ちゃんの声が聞けない日とか。
それにね、今口にはできないんだけど、さっき美鈴ちゃんとすれ違った時に睨まれちゃったんだよね。
文化祭の時は上手く立ち回れたと思うんだけど、基本的に私の頭は良くないのである。恋愛スキルも乏しい。
そのせいでどういう行動を取ればライバルらしくなるのかここ数日悩んでいるのである。このままでは私の立場が危うい。そのことも気持ちを盛り下げる要因の一つだ。
昨日も夜中まで起きて策を練っていたせいで、寝つきが良くなかったんだと思うんだよね。そのせいで良くない夢を見たんだよ、きっと。
「そういえば、兄さんもなんだかここ何日か落ち込んでいるみたいなのよね」
「え、葵先輩が?」
「未希、何か知らない?」
頭を捻る。
葵先輩が落ち込む原因……、なにかあったかな?
っは!
も、も、もしかして。
葵先輩、美鈴ちゃんが林のことを好いているって知っちゃったんじゃ……?
美鈴ちゃん可愛いし、先輩と美鈴ちゃん仲良くなったみたいだから、先輩だって絶対に美鈴ちゃんに恋してたよね?
なのに、彼女の好きな人は林。
失恋である。そりゃショックを受けるよね?!そのせいで落ち込んでるんだ!きっとそうに違いない。
頭に浮かんだ考えが確信に変わる。
目の前の千香ちゃんが呆れたように息を吐いた。
「なにか思い当たったって顔してるわね。一体何をしたのよ」
「何もしてな……」
なくないかも……。
私、葵先輩と美鈴ちゃんの仲を進展させたくって、裏で色々頑張ってたじゃないか!
先輩以外の男子といる時は邪魔したり。全ては葵先輩と仲良くなってほしかったから。
結局ゲーム通りにはいかなかったけど、二人が仲良くなっていたのは事実。
「ど、ど、どうしよう。私のせいかも!」
それに。
今思ったけど、現実でこんなに違いが出てきたのって、私が林を美鈴ちゃんに接触させたからじゃん。元凶私じゃん!
じゃなきゃ、地味根暗の林とキラキラ可愛い美鈴ちゃんが接点を持つこともなかったわけだし。美鈴ちゃんが林なんかを好きになることもなかったはず。いや、絶対になかった、と断言する!
私先輩を助けてるつもりで、失恋の後押しもしちゃってるってこと?!
うわーぁああ!な、なんてことを……。
「兄さんにわたしから連絡しておいてあげるから謝ってきなさい。今日の学校帰りにどこかで何か食べながら話せばどうにかなるわよ」
「千香ちゃん……。ありがとう」
千香ちゃんが私にチャンスをくれた!
よし。今日の放課後は、私が葵先輩の失恋の傷を和らげてあげよう!
私に何ができるのかは分からないけど、話を聞くくらいならできるはずだし。
私、アフターフォロー承ります!




