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恋する影うす少年 1

雨の季節、毎朝髪の毛をアイロンで伸ばすけど、学校に着くころにはウネウネしてゴワゴワになってしまう。

梅雨という時期と敵対して、惨敗続きの日々である。

くっ!憎たらしい、梅雨め。


そんな話はさておき。

さて、今日は図書室で秘密の逢引である。


……なんて、言ってみたかっただけである。

本当は秘密の密会、会合である。


図書室にはいつもカウンター横で漫画の立ち読みにしか来てなかったけど、はじめて奥の勉強スペースにやってきた。

あの油断ならない図書委員は今日はいなかった。おそらく当番の日ではないんだと思う。


横幅の広い机が並んでいるだけのこの勉強スペースで、本当に勉強している人は少ない。

静かに読書している人か、小声で友達同士が会話している程度にしか使われないスペースなのである。

それでも、本を読むためには本棚の横にイスが設置されているから大抵はそっちが使われるし、お喋りについては外の方が気兼ねなくできる。


まあ、何が言いたいかというとつまり利用者がいることの方が稀な場所なのである。

例外はテスト前だけだろう。



そんなこの場所に、今日は林を呼び出した。

当然、私が頼んでいた仕事の調子を聞くためである。

今後こそしっかり働いていてもらわないと困る。いや、困るを通り越して、むしろ激怒する。



湿気のせいか普通にしててもモサッとしている髪がさらに広がって、野暮ったさに磨きがかかっている林がやってきた。

私と同じく惨敗仲間らしけど、林はその長めの髪を切ればマシになるように思うのは私だけだろうか。

ま、男なんて可愛くないし、どうでもいいけど。


「来たね、林。さあ、そこに座って成果を聞かせて」


私の向かいの席を指さす。

林は、はぁと小声で言いながら、モタモタゆっくり移動した。


さっさと座ってくれ。早く話してほしい。

私は、はやる気持ちが抑えきれないのである。だから姿勢は前屈みになって、言葉が口から飛び出してくる。


「どうだった?前に言ったアドバイス通り仲良くなれた?話せるようになったでしょ、当然なったよね、なってなかったら承知しないよ?」

「まあ、話すようにはなりましたけど……」


本当に話さないとダメなのか、という目で林が見てくる。

もちろん話さないとダメである!瞬きせずにカッと目を見開いて、眼力を込めて見返す。

あ、逸らされた……。


今このスペースを利用しているのは私達だけ。

だから小声で話していたら聞かれることはなく、周りを気にしなくて済む。


「林さ、敬語で話さなくていいよ。同学年なんだし。それに協力者なんだから、長い付き合いになるかもしれないし」

「え、はい。って、共犯者の間違いじゃ……」


後半に聞き捨てならない言葉が聞こえたから、睨みつけるとまた逸らされた。

まあ、いいか。今大事なのはそんなことじゃないし。


「で?どうなの?」


私のこの言葉に、諦め顔をしながら林が口を開く。


「体育祭のことがあって、ちょっと挨拶をしたり風紀委員の仕事について話をするようにはなったよ」


え、それだけ?顔見知り程度の仲では、意味がないんだよ。

目指せ、林と美鈴ちゃんの友達化。仲良くなるにはお互い会話して色々知っていくべきでしょ。


「たくさん話してる?」

「いや、学校ではあんまり話さないよ」


NOーー!話さない、だと?!林、本当に使えない奴だな。もっとガンガンいってよ。

って。……ん?待って。


「学校では……?」


どういうこと?

よく理解できていない私が問いかければ、林がしまったという顔をする。

そして林の口からため息がひとつ漏れる。


「体育祭の前、学校の帰り途中に急に雨が降ってきた時があったんだ。家まで走って帰れる距離ではあったけど、ちょうど目の前にこじんまりとした喫茶店があったから雨宿りとして入ったんだ。そしたらそこで愛咲さんが働いてて、それから時々行って話をすることがあるんだ」


喫茶店で働いている?そういえば、バイト先に攻略対象がいたような……。

って、男なんかよりもなにより。


「喫茶店の制服は、ウエイトレスさん?メイドさん?それとももっときわどい恰好をしてたりする?!ああ、どうしよう。カメラを持って見に行きたいよぅ!」

「ちょっ、声が大きくなってる!橋本さん、静かにして!」


興奮で立ち上がってしまった私を、林が慌てて押さえつける。肩を押す力が地味に痛いよ。

幸い周りに人がいなかったから良かった。非難の視線を浴びずにすんだから。

深呼吸、深呼吸。

よし、冷静になったぞ。


「ちょっと取り乱してごめんね。で?制服はどんなの?」

「え、どうしてそんなに制服にこだわるの?白いワイシャツに黒い長めのスカートとエプロンだったと思ったけど」

「エプロン姿いいね。見に行きたいから場所教え――」

「ダメ」


教えてって言い終わる前に断られた。私を見る林の目が冷たいし、引き気味で悲しい。

制服姿って萌える要素だよね?

……ド変態を見るような目でこっちを見るなよー。泣いちゃうぞ。ぐすん。




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