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体育祭ですよ 3

観戦席まで走って戻ると千香ちゃんと一緒になぜか葵先輩がいた。

どうしてここに?


「あ、戻ってきたわよ」

「未希おかえり」

「葵先輩、どうしたんですか?」


問いかけたけど葵先輩からの返事はない。

というか、私の膝に視線が釘付けになっている。


さっき消毒だけしてもらって飛び出して来ちゃったために、絆創膏などが貼ってないから傷口丸見え状態なのだ。


「怪我、大丈夫?」


痛ましい、と言わんばかりに顔を歪めて心配してくれた。


「ありがとうございます、大丈夫ですよ。消毒はしてもらいました」


さっきは走ってせいで痛んだけど、普通にしていたら別に痛くない。


「未希」

「はい?」


葵先輩はゆっくりと一歩一歩私に近づいてきた。


「本当に目が離せないね。危なっかしくてしかたない」

「そうですか?」


あれ、先輩。どこまで近づいてくる気ですか……?

立ち話するのに通常は空けるであろう空間がない。

会話をするには近すぎると思う距離である。


「頑張るのはいいけどね」


まだ近づくんですか!

顔が近い!額同士がぶつかってるよ。


「自分の身も頑張って守って」

「は、はい」


葵先輩の手が私の手を包み込んだ。

そこから器用に先輩は私の手から小指を自身の小指で絡め取る。


「約束」


指切りの最中、額と額は触れ合ったままである。


「未希、消毒は済んでいるのよね?」


ここに千香ちゃんの声が割り込んできた。

私は葵先輩からすぐさま離れる。


「うん」

「なら、わたし絆創膏を持っているから貼ってあげるわ。こっちに来てくれるかしら?」


なんと!千香ちゃんが貼ってくれるの?!

嬉しい。喜んで行くよ、行く。


「兄さん、自分のクラスに戻ったらどうかしら?」


ぴょんぴょんと弾む心を隠さずに口角上がりっぱなしで千香ちゃんのところへ行けば、千香ちゃんからそんな声。

そうだよね、葵先輩はそろそろ戻らないとだよね。学年も違うわけだし。


「千香、わざとだろ」

「なんのことかしら?分からないけれど、わたしは渡す気ないわよまだ」


二人とも笑っているのに、恐いのはなんでだろう。

状況が読めない中、千香ちゃんの笑顔が私の方に向いた。


「未希、明日うちに泊まりに行ってもいいかしら?二人で色々お喋りしましょう?」

「うん、いいよ!明後日は休みの日だもんね。夜遅くまでずっと話そう!」


さっきまで感じていた恐ろしさなんて、どこかに飛んでいった。

お泊りだよ!部屋の掃除をしたり、準備しなきゃ。



ウキウキで今日は眠れないかもしれない!

体育祭で疲れたし、怪我もしたけどそんなこと気にならないくらい楽しみである。

というか、疲れたことも怪我したことも記憶からなくなるほどに楽しみと興奮で頭はいっぱいである。


だから、私の視界の隅で西川兄妹が笑顔で火花を散らしていること気にならない。

そして、ついさきほどの失敗も私のツルツルの脳味噌にはしっかりと記憶されず、頭の端の端に追いやられたのである。



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