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色々と美味しい 2

様子を覗いている私の近くの扉がガラガラと音を立てて開いた。

そちらに顔を向ければ、教科書を抱いて出てきた千香ちゃんがいた。


「あぁ」


私の奇妙な体勢を見てから、職員室側に視線を向けて千香ちゃんは小さく呟いた。


そしてわずか数歩の距離だけど、廊下を横切り階段の方、つまり私の方へゆったりと歩いてきた。

私の後ろに来て、私の肩越しに同じように美鈴ちゃんの観察をする体勢になる。


千香ちゃんの手が私の肩に軽く置いてあるよ!

嬉しくって、美鈴ちゃんの方に集中できない。



「ああ、そうだ」


葵先輩が、数歩歩いたところで立ち止った。

美鈴ちゃんが不思議そうに足を止めて振り向く。



「またあの女なのね」


落ち着きをなくした私の耳元で千香ちゃんがボソッとそう言ったのが聞こえた。



「さっき職員室でお菓子もらったんだ。あげるね」


私の位置からは今まで見えていなかったけど、葵先輩は小さなビニール袋を下げていた。

荷物を落とさないよう器用に片手で持った先輩は、もう片方の手で袋の中からお菓子を取り出した。

量が少なくなったとはいえ、まだ両手がふさがっている美鈴ちゃんを一瞥してから、小包装を剥いてお菓子を美鈴ちゃんの口に持っていく。


「はい、口開けて」

「えっ?え?は、はい」


おずおずと小さく口を開けているお菓子を口に含む。

言われるがままにお菓子を食べさせてもらったことが恥ずかしいのか、美鈴ちゃんの顔は赤い。

実にかわいい……。私も餌付けして赤面させたい。


「美味しい?」

「はい、美味しいです!」


ハニカミながら美鈴ちゃんが返事をする。


いいなぁ、お菓子。

私も何か食べたいな。帰る時に何か買って帰ろうかな。


「これ、人数分ないから体育館に戻っても他の風紀委員の子には内緒だよ?」

「はい。内緒、ですね!」


秘密を共有した二人は、フフフと笑いあって今度こそ歩きだした。



「千香ちゃん、帰る?」


二人の姿も見えなくなり、観察も楽しんだからね。

とてもいい雰囲気でした。へへ、ごちそうさまです。

あーあ、さっきのお菓子見てたらお腹減ったから、どこかで食べ物買って帰ろうっと。


「また、あの女……」


千香ちゃんがうつむいて、さっきと同じ言葉を呟く。

なんだか千香ちゃんが弱弱しいように感じて、屈んで顔を覗き込む。


「どうしたの?千香ちゃん?」


私の大好きな千香ちゃんが元気ないよ!

どうしたらいいの?私なにすればいい?!


「風紀の集まりの時から分かってたけど、未希はあの女の方がいいの?最近はあの女のことばかり気にしてるでしょ」

「いやいやいや、千香ちゃんの方が好きだよ。確かにちょっと気にしてるけど、一番は千香ちゃんだから!」

「本当に?」


うつむいたところから顔を上げれば自然に上目使いになるわけで、私は一発ノックアウトされた。

鼻血が出そうである。

なんとか誤魔化すためにも首を何度も縦に振る。

鼻血出てくるなよー。


「あの女の方に行かないでね。わたしのところに絶対帰ってきてくれなきゃイヤよ?」

「大丈夫だよ!」

「未希の一番の親友はわたしよね」

「うん!」


花が綻ぶとは、きっとこういうことだよね。

親友だと肯定した時の千香ちゃんの笑顔は殺人級だった。


というか、これって嫉妬?やきもち?

どうしよう!すごい嬉しい。

もちろん一生親友ですとも!こんな美味しい立ち位置手放すわけないじゃないですか。

千香ちゃんは私の親友だと大声で自慢したいレベルの素敵女子なんだから!

もー、大好き!


気持ちが抑えきれず、思わず抱き付いちゃった。

こんなことしたら怒られちゃう。


……でももう、怒られてもいいや。スリスリしちゃえ!


いつもなら急に抱きついたら怒るのに、今日の千香ちゃんは怒らないで私の背中をポンポンと叩いてくれた。

デレ期ですか?!!幸せすぎる!


「未希、帰りましょう」

「うん!」


今だけはニヤニヤ緩みっぱなしの顔で許してね。


「どっかでお菓子買って帰ってもいい?」

「多分、うちで兄さんを待ってればさっきのお菓子貰えると思うわよ」

「え?そうなの?」

「だから、わたしの家に寄って帰ってね」

「うん、ありがとう!」




その後、千香ちゃんの家で葵先輩を待ってたら、本当にお菓子が貰えたよ。

葵先輩の行動予測ができるなんて、さすが千香ちゃん。兄妹ってすごいね。

お菓子は期間限定のものですごく美味しかったです。うまうま、幸せ。



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