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美しき友情のために

喜びの奇声を上げた私だが、一瞬でその気持ちが消える。



なぜなら私、橋本未希は名前も出てこないモブキャラなのだ。


ヒロインとイチャイチャできるライバルキャラではないのだ。



でも、だからってライバルキャラを諦められるわけない!


正々堂々ヒロインと戦って、その過程で深める友情。

悪役ではない、あくまでライバルキャラという魅惑的な役割。

悪役じゃないから、身を滅ぼすこともない。

恋敗れた後は、なんだかんだちゃんと身を引くのがこのゲームのライバル達なのだ。


ちょっとセコイことをする時もあるが、それが友情を深めるエッセンスとなる。

全力でぶつかって、戦って、その先にヒロインとの絡みが待っている。


私はヒロインを愛でたいのだ。

イチャつきたいのだ。

美しい友情を育みたいのだ。


普通の友情ではダメだ。

恋の障害として立ちふさがり、共に戦ったからこそ強い絆になる。


ならば、モブの私はどうすれば良いのか…


無い脳みそ振り絞って考える。

…はっ、そうか!



私は家を飛び出した。

出てくる時に母親が何か言っていたが、何を言っていたのかなど気にもならない。


ただただ私は走った。

途中で息切れして、何度かゼーハーしながら必死に走った。

周りに変な目で見られたけど、気にしない。


目指すは、学校。


いつも遅刻ギリギリに着く私が、未だかつてないほど早い時間に学校に着いた。

そのまま教室へ足を進める。


教室の前まで来て一度息を整える。

一世一代の大勝負、第一印象は大切だ。


「よしっ!」


いざ、出陣。


教室内を一度見渡し、目的の人を見つける。

私はドアから一直線に教室後ろのロッカー前へと足を進める。

今まで話したことのない、大人しそうな美少女のもとへ。



「お友達になって下さいっ!」


ライバルキャラの一人である西川千香のもとへ。

ロッカーで荷物の出し入れをしていた彼女は、振り返り、


「は?」


急に話しかけた私に、不審な目を向けた。


彼女は攻略対象の妹で、極度のブラコンで兄に近づくヒロインを敵視してライバルとなる。

ゲームでは二番目に好きなキャラだった。だって可愛い。

ゲームでは、見た目の儚げな印象とは違い、中身はお兄ちゃん大好きっ子で、口が悪く色々と残念なキャラだった。


「今日から私、橋本未希は千香ちゃんのお友達になりたいです。不束者ですが末長くよろしくお願いします!」


ビシッと敬礼してポーズを決める。


「は?急になに?」


訝しげに私を凝視する千香ちゃん。

警戒心満載な視線だけど、へこたれない!


「千香ちゃん、これからよろしくねー!」

「ぎゃー、抱きつくな!ていうか、名前で呼ぶな。馴れ馴れしい!」


これからの未来に思いを馳せながら、今は目の前の千香ちゃんに抱きつく。

これはこれからの私と彼女の仲を深めるためなのだ。

いうなれば、親愛のハグ!

千香ちゃんはバタバタ暴れてるけどね。


「照れ屋さんなんだね」

「違う!本気で嫌がってんのよ」

「照れ隠し?隠さなくていいのに」

「話を聞けよ!そして、離せー」


暴れる千香ちゃんの手が当たって痛い。

けれども私は笑顔である。

だって、仲良くなれたら私の欲望が満たされるのだから。



「よろしくっ!」


仲良くなって、その儚い美少女要素を存分に愛でさせて下さい。

そしてできるならば、そのライバルキャラのポジションを私に譲って下さい!



そんなこんなで、記憶を思い出し、行動を開始した。

これが、小学五年生の秋のことである。

ブタネコっこ的には、ライバルキャラ=恋の当て馬(破滅なし)、悪役=すごく嫌な奴(最終的に破滅する)

だと思ってます。

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