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協力者ゲット


風紀委員には挨拶運動という活動がある。

ただ門の横に立ち、朝登校してくる生徒に「おはようございます」と声をかける活動である。

一応、その活動を通して生徒が挨拶をすることの促進と、服装や髪が奇抜な人はいないかというチェックをしているのだそうだ。


さて、私は風紀委員である。

そして五月の挨拶運動の担当者でもある。


挨拶運動はクラスではなく個人で担当を決めているから千香ちゃんは一緒ではない。

同じクラスなのに、千香ちゃんは十月担当だったはずだ。

とても、大変、非常に、やる気が出ない!


一緒に挨拶をする担当の風紀委員は、隣のクラスの男子と二年生の男子である。

なんで、男ばっかりなんだ!


しかも、各月二回活動するのである。

今日が一回目だから、今月もう一回このメンバーで挨拶をしなくてはならないのだ。

サボりたい、休みたい、不登校したい!


なんて、嫌がっても仕事はしなくてはならないのである。

朝から憂鬱だ……。



「おはよーございまーす」


やる気のない私の声に対して返ってくる挨拶は少ない。


二メートルほど離れた所に立つ先輩男子は大きな声で挨拶していて、登校してきて前を通る生徒がギョッとしている。

まあ、驚くよね。あんな大声でおはようと言われたら。

若干、生徒たちが避けるように通り過ぎているのは見間違えじゃないはず。


対して、反対側に立つ隣のクラスの男子は声が全く聞こえない。

別にサボっているわけじゃなくて、先輩の声のせいで掻き消えているからである。

多分あっちも、私の声が消されて聞こえてないだろう。


聞こえない声同士ということで、隣のクラスの男子を観察してみる。


平均的な高校生男子の身長ほどで、クラスで目立たない特徴ない男子なんだろうな、といった印象を受ける。

やや髪が長めで、顔が隠れ気味だしモサッとしていて野暮ったい。

なんというか、オタクっぽい。そして影が薄い。


同じ風紀委員でこうして同じ担当にならなきゃ、きっと私は彼の存在を知らなかっただろうな。

隣のクラスを覗くことはあるけど、全く目に入ってこなかったし。


……って、ああ!

隣ってことはコイツ、美鈴ちゃんと同じクラスだ。美鈴ちゃんと一緒に風紀委員やってるってことだよね。


この男子、使えるんじゃない?!


先日、私一人じゃクラスも違って情報収集が難しいって実感した。

けど美鈴ちゃんと同じクラスの人の協力があれば情報が集めやすくなるよね?!

私だけじゃ知りえなかったこととかも掴めるかもしれない!


コイツを協力者にしよう!


思い立ったらすぐに行動に移したい私だけど、今は挨拶をしなきゃ。もどかしい!


「よし、時間だからもう終わりでいいぞ。一年二人も教室に戻れ」


そう思っていたところに、大声で挨拶していた先輩男子が、時計を確認してから終わりを告げた。

グットタイミング!


そそくさと戻ろうとする男子の腕をガッチリと掴む。


「少し時間をちょうだい!」

「え、あの……?」


返事なんて聞かずに校舎脇の死角に引っ張り込む。

日陰でジメジメしてるけど、生徒は通らない。まして朝の登校時間が終わった今、遅刻者がこんな所は通らないだろう。近道にもならないし。


「一体なんですか?」

「あなた、名前は?」


怪訝そうにしている男子のことは無視して、私は私の目標のために動く。


「林浩平ですけど」

「林ね。私は橋本未希。連絡先を教えて」


意味が分からないといった顔をした林。


「早く!」

「はぁ」


モタモタしているから急かして、連絡先を交換する。

よし。


「愛咲美鈴ちゃんって知ってるよね?」

「知ってますけど。なんなんですか、本当に」

「彼女について、今日からなんでもいいから私に教えて」

「は?」


林の私を見る目が胡散臭そうな色を隠していない。でも、気にしない!


「美鈴ちゃんの日常の様子、授業中の様子とか私じゃ知らないことを教えてほしいの!」

「……なんで?」


林の警戒心がどんどん表情に表れて、顔が強張っているように見える。

私はコイツを協力者にしたい、便利だし。

だから、隠さずに理由を話すことにした。


「私ね、美鈴ちゃんと仲良くなりたいの!でも今じゃダメなの。愛を育むためにはまだ待たないといけないの。私は美鈴ちゃんが好きで好きで色々知りたいけど、一人じゃ難しそうなんだよ。だからあなたを私の協力者にしようと思ったの」


ああ、美鈴ちゃん。私は立派にライバルとして立ちはだかって、その末に親友の座を射止めるからね!


夢を語る私はきっと輝かんばかりの笑顔をしているだろう。

林はそんな私を見て警戒が呆気に置き換わっている。なんで呆れてるのよ。失礼な奴め。


「え、なんで僕?」

「理由なんてないよ。たまたま」


今日、協力者ってアイディアが浮かばなかったら選ばなかっただろうし。


「とりあえず、よろしく!期待してるから」


ヤバい奴に捕まったよ、僕ついてないな。と如実に分かるような暗い顔をしている林と、協力者を得てホクホクの私。

連絡先も交換したし、どんどん利用させてもらいますよ!


よろしく、林!



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