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買い物係、拝命

「未希ー」


千香ちゃんがエプロン姿でやって来た。

家庭的な姿、いいねっ。お嫁さんに欲しい!結婚したいよ。毎日その恰好で私にご飯を作って!


「あれ、兄さんもいたんだ。今日未希が来ること教えなかったのに」

「ああ、やっぱりわざとか」


すぐに二人の目線がはずれたけど、一瞬兄妹の間に火花が散った気がする。

なんで?


「未希、買い物行ってくれないかしら?最後のトッピングの材料が足りないのよ……」


悲しそうに目を伏せる千香ちゃん。

この姿を見て断れるはずがない!千香ちゃんを喜ばすのだ!


「いいよ。何買ってくればいいの?」

「ありがとう!このメモに書いといたわ。すぐそこのスーパーに売ってるはずよ」

「ラジャー!」


千香ちゃんからメモを受け取る。

スーパーは、西川家から歩いて五分くらいのところにあるからすぐに帰って来れるだろう。


って、メモに書いてきたってことは私に行かせる気満々だったんだね、千香ちゃん。

この小悪魔め。


「行ってきますっ」


千香ちゃんに敬礼し、いざスーパーへ。


けど、なんでか知らないけど葵先輩も一緒に来てくれるって。

……先輩、勉強しなくていいんですか?




「買えて良かったですね」


これで千香ちゃんに喜んでもらえる!


目的のものはすぐに見つかり、精算も済ませた。

レジ袋は自然な流れで葵先輩が持ってくれた。さすが、学園の王子。


二人で並んでスーパーの自動ドアをくぐり外へ出ると、小さな男の子が私の目に入った。

駐車場に立ち尽くす五歳くらいのその子の周りに、親らしき人は見当たらない。

泣き出してはいないが、大きな目には涙が溜まっている。


私は駆け寄って、しゃがみ込み目線を合わせる。


「大丈夫?」

「ママ、いないー」


男の子の目に溜まった水が決壊しそうだ。


「その子、迷子?」


後ろから葵先輩の声。

あ、さっきこの子に駆け寄った時に先輩置いて来ちゃってた。すみませーん。


「そうみたいです。よし、お姉ちゃん達と一緒にママ探そうか」


前半は先輩に、後半は男の子に向けて言う。


男の子と手を繋いで駐車場を一回りしてから、スーパーの中を探しに行く。

スーパーの中に入った直後、血相を変えて探していた母親に遭遇した。

母親は中に入ってから子供がいないことに気づいて、探していたらしい。



「お母さん、見つかって安心しましたー」

「本当に良かったね」


千香ちゃんの家への帰路、当然のように葵先輩が道路側を歩いてくれる。

そう言えば、行きも道路側を歩いてくれてたかも。


「スーパーを出た時、未希が突然走り出すから何かと思ったよ」


何も言わずに、体が動いちゃったからね。

言えばよかったですね。


「すみません」

「どうして、謝るの?未希がしたことは立派なことだよ」


立派……。言われ慣れない言葉だ。

呆れられることとかはよくあるんだけど。

その言葉を噛み締め、幸せな気持ちに浸っていると、


「よくできました」


フワリと先輩が私の頭を撫でてきた。

葵先輩の顔を見上げると、優しい表情で笑っている。

思わず笑い返す。


えへへ。すごく嬉しいです。

これから千香ちゃんのお菓子も食べられるし、今日はいい日ですね!



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