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リビティウム皇国のブタクサ姫  作者: 佐崎 一路
第五章 クレールヒェン王女[15歳]
200/337

それぞれの朝と悪意の歪曲

祝☆第200話!

……まあ、人物紹介などもあったので純粋に200話というわけではないのですが。

 巫女姫ジルの朝は早い。


 日の出遥か前に起床し、動きやすい服装に着替えて、中庭に出て井戸の水を汲み上げて、その場で金盥へ入れ換え魔術でぬるま湯に変える。

 お湯だけ洗顔は肌にダメージを与えやすいので、『収納(クローズ)』してある手持ちの固形石けんを取り出して、ぬるま湯で泡立てる。

 前世であればクリームやミルク、泡タイプなど洗顔料はいろいろあるが、この世界には化学合成した薬品はないので石鹸が一番手っ取り早いし、また敏感なジルの肌には一番合うと言えるだろう。


 泡立てすぎてもよくない。そもそも泡そのものに美肌効果はない。手で顔を洗う際に摩擦を少なくするための潤滑剤としての役割しかないので、手早く済ませる。


 ぬるま湯で顔の皮脂を落としたら終了。時間にして二十~三十秒もあれば十分。

 これ以上、洗顔をすると乾きすぎて、日中の肌が乾燥してしまうので、手早く済ませるのがコツである。


 幸いにしてほとんど化粧品は使わないので、洗顔の後のクレンジングは特に必要はなく、きめ細かさや白さは生来のものなのでこれ以上のスキンケアの必要はなし。洗顔した後の水はさっさと下水に捨てる。

 一度、コッペリアが、「もったいない。ワタシが錬金術に使うのでください!」と、やたら熱心に言うので、日本的もったいないの精神と、石鹸水でどんな錬金術ができるのか純粋な興味から任せたところ、数日後に『クララ様汁』という謎の液体の入った瓶が闇ルートで、一本金貨三十枚で流れていたという、

「それは錬金術ではなくて詐欺ですわ!」

 という報告が上がってきたので、それ以来、絶対に間違っても人任せにはしないようにしている。


 その後、惰眠をむさぼるフィーアを優しく起こし、近くの山まで飛んでもらって、柔軟運動の後、走り込みや朝の練習を行う。以前は町中でジョギングをして、公園でトレーニングをしていたのだが、一年ぶりに央都に戻ってきた翌々日に同じ日課を行ったところ、央都中が大騒ぎになり――Tシャツにホットパンツがまずかったらしい――周囲からも、「淑女が太腿を丸出しにするなど、非常識ですわ!!」「はしたない!」「巫女姫様というお立場をお考えください」「いいぞもっと脱げっ!」と、非難轟々であったことから、こうして人気のない場所でトレーニングをせざるを得なくなったのだった。

 ちなみに神獣である使い魔(ファミリア)のフィーアが傍にいるので、山の魔物はまったく寄り付かない。ついでに最近は、ゼクスも悠々と頭上を飛んで様子を窺うようになったので、まず滅多なことはないとは思うが、それでも万が一を考えて、各方面から密かに護衛が配置されていたりする。


 諜報員として手練れを自負していた彼らだが、ジルにとってはバレバレのようで、「どうもご苦労様です」と、初日に物陰に隠れていた全員のところへ挨拶に回られ、ついでに手作りの菓子も手渡された彼ら。

 当然、その日から再訓練を申し出る者が続出するも、毎日、訓練の終わりに違った菓子を渡されるのが、痛し痒しというところである。


「う~~ん、やっぱり朝は気持ちいいわね。そういえば皇凌祭では千メルト持久走もあるみたいですから、もうちょっとペースを上げたほうがいいかしら。あ、それよりも高地トレーニングのほうがいいかも。この辺は四~五千メルト級の山も多いので、尾根沿いを走ってもいいかも知れないわね」

「わんっ!(わかった~)」


 お散歩コースが増えることに尻尾を振って喜ぶフィーアとは対照的に、隠れて聞き耳を立てていた護衛たちは一斉に『やめてくれ~~~っ!!!』と、心の中で絶叫したとかなんとか。

 実際、善は急げとばかりモチベーションが上がったジルは、まずは近くにあった三千メルト級の山まで足を延ばし、十日後には周辺の山々を制覇するのだった。


 結果、密かに隠れてついていく護衛たちも血反吐を吐くような猛特訓に励まざるを得なくなり、その後、近隣諸国でも名高い『恐怖の女神部隊』が生まれる切っ掛けとなったのは余談である。


 一汗かいたジルが、再度フィーアに乗って屋敷に帰ると、待機していた侍女ズ――モニカとエレンはともかく、ラナとコッペリアはまだ半分寝ぼけている(コッペリア曰く「ワタシは夜間、省エネ低電圧なので朝に弱いんです……電気羊が一匹……二匹……」とのこと)――が、素早く寄ってたかって汗をぬぐい、着替えを済ませる。


「これでよし。ジル様、おはようございます」

「「「おはようございます」」」

「はい、おはようございます。今日も一日よろしくお願いいたしますね」


 モニカの合図で朝の挨拶を行い、それにジルが笑顔で返して、彼女の一日が始まるのであった。



     ◆ ◇ ◆ ◇



 シルティアーナ姫の朝は誰よりも遅い。


 床に就くのは誰よりも早いはずだが、早起きの烏が鳴いて、太陽が昇って家人が起き出し、野良犬が徘徊し、職人が通りを行き来する頃合い。

 テーブルを埋め尽くさんばかりの朝食ができたのを確認したところで、侍女頭のゾエが六人のいずれもキャスター付きのワゴンを引いた侍女を引き連れてシルティアーナ姫の寝室へと向かう。


 『起床の儀式』と密かに家人に陰口を叩かれているそれを行うため、ゾエは央都にあるオーランシュ家の別館(といってもちょっとした王宮並みの規模だが)の奥に設えられているシルティアーナ姫の寝室の扉を叩いた。


 もともとは通常サイズの扉であったのだが、それだとあの(、、)シルティアーナ姫では出入りが不便だとうことで、改築された観音開きの扉。

 ついでに廊下には手摺りが付けられ、廊下には極力段差がないように修繕させられ、さらには最新の昇降機まで付けられたシルティアーナ姫のプライベート空間。


 ノックをしてもいつものように返事がないのを確認して、ついでに分厚い扉越しにも聞こえる、ブウブウと豚が鳴いているような(いびき)の音に嘆息をして、背後に控える侍女たちに目配せをするゾエ。


「――失礼いたします、姫様」


 無造作に扉を開けて、ぞろぞろと入り込むゾエを筆頭とした侍女たち。

 それなりに大きな部屋だが、中央に鎮座する巨大な天蓋付の寝台(ベッド)と、なによりその上にこんもりと盛り上がった巨大な肉の塊――似合わないピンクのナイトキャップに同色のベビードールをまとったシルティアーナ姫の存在感が、この部屋を実際の大きさより遥かに狭く見せかけていた。


 ――はあ~……。


 無意識のうちにだろう思わずため息をついた侍女のひとりを、ゾエは振り返って睥睨する。

 慌てて口元押さえて、青い顔で首をすくめる侍女から視線を外し、シルティアーナ姫のもとへと歩みを進めるゾエ。


「姫様、朝でございます。姫様っ」

 最初は優しく、それから段々と勢いをつけて肩を揺する。


 ぶわんぶわん揺れる脂肪の塊り。仕事とはいえあれに直接触れられるゾエ侍女頭は勇者だなぁと、毎朝感心する侍女たちであった。


「…………」

 多分、目が覚めたのだろう。肉にうずもれ、目も瞼も定かでない目元をぬぐうシルティアーナ姫。


「おはようございます、姫様」

「「「「「「おはようございます、姫様!」」」」」」


 息もぴったりに挨拶をする侍女たちを、まあ、多分寝ぼけ眼で見ているのだろう。

 ぼけ~~~~~~~っとした雰囲気が十数秒続いたところで、

「……お……よう」

 なにやら返答があった。


 それだけでもゾエは満足した様子で一礼をして、「それではお支度をさせていただきます」と断りを入れて、シルティアーナ姫の背後に回ると、意外な膂力――あるいは何かのコツがあるのか――を発揮して、上半身を起こす。

 それから濡れタオルで顔をぬぐい、ベビードールの下に手を入れて寝汗もぬぐう。

 食べ過ぎて内臓が悪いのか肌がガサガサで吹き出物も多いので念入りに白粉を塗って念のために化粧も施す。


 てきぱきとした手つきでゾエが魔法のように下着まで含めて着替えを済ませ、絹でできた作業着のような動きやすい服装に変えると、準備をしていた侍女たちが一斉に動く。

 侍女たちはワゴンに被せていた白いシーツを剥ぎ取り、その下から鈍色に光る鎧のようなもの――『ヴィクター式魔導甲冑《鋼鉄の乙女(フェッルム・ウィルゴ)二十八号》』のパーツを取り出し、慣れた手つきで順番に装着していくのだった。


 ほどなく寝台(ベッド)の上に上半身を起こして座り込む、完全武装の寝ぼけた王女が完成したのだった。


「それでは、食堂へ参りましょう」


 《鋼鉄の乙女(フェッルム・ウィルゴ)二十八号》用の操縦機を取り出して、レバーを操作するゾエ。

 その操作に従って、意外と滑らかな動きでシルティアーナ姫は寝台(ベッド)から床に降り立った。


「半数はこのまま私とともに。半数は後片付けをお願いします。頼みましたよ」

「「「「「「承知しました」」」」」」


 ゾエの指示に従って三人がその場に残り、三人がそのまま従ってついてくる。


 こうして、彼女の朝は始まるのだった。



     ◆ ◇ ◆ ◇



 『起床の儀式』を終えて、シルティアーナ姫が食堂のテーブルに着いたのを確認して、ゾエは後のことを給仕に任せていったん退室した。

 最近はシルティアーナ姫を連れて頻繁に学園にも通うようになったせいで、いろいろと雑務が増えてきているのだ。


 しばらく前まではシルティアーナ姫といえば、部屋かソファに寝っ転がっているか、モノを食べているかだけだったので、担当の侍女は密かに『飼育係』と呼ばれていたものだが、当主であるオーランシュ王の襲撃に伴う不在と不祥事を糊塗するため、より目立つアレを表舞台に立たせることで当座を凌ごうという重臣たちの苦渋の選択により、現在は好むと好まざるとに限らず侍女たちは侍女らしい仕事に忙殺されていたのである。


 御者や侍従たちと今日の予定を打ち合わせしようとゾエが廊下の角を曲がった――ところ、壁に背中を預けて佇む年齢不詳の執事(バトラー)、エミール・ボーンと、真正面から視線が合った。

 思いがけない……というわけでもないが、明らかにこちらを待ち構えていた様子の彼の佇まいに、ゾエは思わず足を止めて警戒の視線を送るのだった。


 一介の執事というのは仮の姿で、この世界に三人しかいない〈魔王(シャイタン)〉のひとり。

 その事実をこの間知ったばかりのゾエであり、当然警戒していたのだが、さすがは〈魔王(シャイタン)〉と讃えるべきか、これほど間近で接していても、ただの人間並みの魔力波動(バイブレーション)しか感じられない。ここまで見事に隠蔽されていては、到底気が付くものではない。


 ――それにしても、なぜここに? まさか気が付いたのか?


 先日の襲撃で顔の左半分に包帯を巻いた痛々しい姿を押して、待ち構えていたエミールの意図を探ってゾエ――その襲撃の黒幕であり、実行犯でもあった彼女――の目が怪しく光る。


 ――どうにも最近、不確定要素(イレギュラー)が多いな。私の“予知”ではこんな場面は想定されていなかったのだが。そうなると未知の因子が働いていると見るべきだろう。つまり要件は……。


 一瞬で思考を巡らせ、ほぼ正解を探り当てるゾエ。


「どうかされましたか、エミール様? ――まさか、旦那様かエウフェーミア姫様になにかございましたか?!」


 顔色を変えてわなわなと震えながら口元へ手をやるゾエの取り乱しように、「あ、いや、そういうことではない」と、エミールは慌てて手を振る。


「そ、そうですか。あまりびっくりさせないでください、エミール様。エミール様もまだ本調子ではないのですから、無理はなさらないでくださいませ」

「ああ、すまん。だが、我々のために犠牲になった者たちと、なによりエウフェーミア様のことを思えば、これしきの怪我など……」


 沈痛な面持ちのエミールにあわせて、せいぜい殊勝な表情で、

「エミール様の落ち度ではありません。近衛の者たちは職務を全うしたのであり、エミール様もそんなになってまでエウフェーミア姫様をお守りしたではないですか。確かにエウフェーミア姫様の傷は深いですが、命が助かったのはひとえにエミール様のご尽力の賜物です」

 そう慰めの言葉をつらつらと連ねるゾエであった。


 ――まあ実際、城が吹っ飛ぶほどの爆発をこの程度で抑え、オーランシュ王には怪我ひとつ負わせなかったのだから御の字だろう。全滅した近衛がいたのは完全に火薬の爆発圏内だったし、エウフェーミアに関しては、あの筋肉バカの牛男(イサーク)が吹っ飛んで巻き込まれた二次災害だったわけだし。


 お前は良くやった。敵ながらあっ晴れ……と言いたいところだが、当人は責任を感じて恥じ入っているらしい。霊薬(アムリタ)や治癒術師を使っての治療を頑として拒んでいるのだった。


「だが、私は私が許せんのだ。あのお方に託された以上、その結果はゼロかすべてしかない。瑕疵が生まれた時点でもはや私の三十年はゼロでしかないのだ」


 なんとも律儀なことである。内心せせら笑いながら、

「――三十年?」

 怪訝な表情で、一見すると二十代前半にしか見えない〈魔王(シャイタン)〉の横顔を覗き込むゾエ。


 そこで失言に気付いたエミールは、「いや、先代から数えてのことだ」と、取って付けたような言い訳をして、「ところで」と話題を変えた。


「ところで、シルティアーナ様はこれから学園へ行かれる予定なのか?」

「はい。最近はお加減もよいということで、三日に一度は講義に参加されます」


 まあ、もともと無学な村娘、本当に参加するだけだけどね。と、胸の中で付け加えるゾエ。


「そうか……」そう一言呟いて逡巡してから、エミールは厳重に封が捺された手紙を懐から取り出した。「本来であれば、おめおめあの方におすがりするなど恥の上塗りだが、こうなっては止むを得まい」


「――これは?」

 半ば宛先を予想しながら、ゾエは困惑した面持ちで尋ねた。


「この手紙を巫女姫様へ。あくまで私の個人的な願いだと明言して渡して欲しい。――ああ、誰からだと尋ねられたら『獅子』と答えて欲しい」


 ひっくり返してみても宛名も送り主の名も書いていない。


「……よろしいのですか?」

 先日のジルからの申し出――シルティアーナ姫の足の治癒――に対して、いまのところ何の返答もしていない。肝心の当主であるオーランシュ王が沈黙を保っているためであるが、この手紙は当主の頭越しに巫女姫と交渉をすることになるのではないのか?

 そう暗にほのめかすゾエの問いかけに、エミールは軽く肩をすくめて、「あくまで私個人のことだ」そう繰り返すだけである。


「わかりました。それ以上はお聞きしません。この手紙は巫女姫様にお渡ししておきます」

「助かる。――ああ、それと例の皇凌祭には私も執事(バトラー)としてシルティアーナ様に随行させてもらう」

「なるほど……わかりました」


 一礼したゾエに頷いて、エミールは踵を返した。


「……つまり、皇凌祭のドサクサ紛れに巫女姫と接触するつもりということか」


 その足音が完全に消えたのを確認して、ゾエは小さく呟いた。

 それから周囲を見回して、誰もいない手近な部屋に入ると、受け取ったばかりの手紙をしげしげと眺めた。


「“封印”“防御”“認証”と三重の魔術封(マジック・シール)を施してあるか。並みの術者ではまず封印は破れない。仮に破れば防御の魔術で攻撃される。さらに特定の相手以外が開けた場合は中身が消去される、と。なかなか手が込んでいる」

 そう評価しつつ口角を吊り上げる。

「だが甘い。相手の正体がわかれば術式もおのずと見当がつく……ふふん、やはりドルミート魔紋式か」


 指輪型の神器から取り出した小粒の魔石を指先で磨り潰し、細かな砂粒で封筒の表面をなぞるようにしながら、小さく呪文を唱えるゾエ。

 ほどなく封筒の封が不完全な糊付けがはがれたように剥がれた。


 上機嫌で二つ折りにしてあった中身を取り出して目を通す。


『マイ・プリンセスへ


 マイ・プリンセス。不甲斐ない私めが貴女様をそうお呼びすることをお許しください。

 すでにお聞き及びの事かと存じますが、オーランシュ王とエウフェーミア王女が慮外者の襲撃を受けました。

 世間では王は重傷を負ったということになっておりますが、それはあくまで表向きの理由に過ぎません。

 私がその場にいながら思わず不覚をとったこともまた事実でございます。

 己の不明を恥じ入るばかりですが、恥を忍んでマイ・プリンセスへ申し上げたき儀がございます。

 皇凌祭の当日、可能な限り少人数で夜六時に第二図書館の裏においでいただきたく、伏してお願い申し上げます。


  永遠に変わらぬ貴女様の下僕(しもべ)、エミール・レグルス・ボーン』


 簡素なその内容を数度読み直したゾエのその瞳が妖しく光る。


「これはこれは……。案の定、巫女姫が係わっていたわけだねぇ。ほうほう、なかなか愉快な内容じゃないか」


 それからふと思いついた表情で、魔石の粒を再度指先に付けて、手紙の表面をなぞった。

 途端、インクの一部が滲んで、わずかばかり内容が変わる。


『マイ・プリンセスへ


 マイ・プリンセス。不甲斐ない私めが貴女様をそうお呼びすることをお許しください。

 すでにお聞き及びの事かと存じますが、オーランシュ王とエウフェーミア王女が慮外者の襲撃を受けました。


 私がその場にいながら思わず不覚をとったこともまた事実でございます。

 己の不明を恥じ入るばかりですが、恥を忍んでマイ・プリンセスへ申し上げたき儀がございます。

 皇凌祭の当日、必ずおひとりで十六時に第二図書館の裏においでいただきたく、伏してお願い申し上げます。


  永遠に変わらぬ貴女様の下僕(しもべ)、エミール・レグルス・ボーン〈魔王(シャイタン)〉』


 それから封筒に詰め直して、再封印ついでに“認証”の魔術を“紛失”に切り替えておく。これで読み終わった手紙は、知らない間にどこかへ消えてなくなるはずである。


「――さて、これでどう踊ってくれるか、楽しみだね」


 上機嫌で鼻歌を歌いながら、ゾエは手紙をポケットにしまって部屋を後にするのだった。

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