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幻獣エリア7

「再発する兆候も見られないので、ひとまず大丈夫でしょう……よく頑張りましたね」


「ん。ドクさんのおかげ。それ以上でもそれ以下でもない。それなのにカカとミコは……危うく嫌いになるとこだった」


「何度も謝ったかぇ。わらわはここのボスゆえ、警戒するにこした事はないでありんす」


「面目ありません」


 ここは、日が五回昇った後の同じ部屋。


 あの時は狐の姿だったが、今は人型に変化しており、ドクタと同じぐらいの身長に、まだあどけなさが残るものの、エルファリアに似た、洗練された物を見るような完璧な美。今は目尻をあげ、後ろにいるエルファリアとミッコリを非難する。


 あれから少し一悶着があった。


 エルファリアが起きてから少し経って、ミッコリが目を覚まし、辺りを見回す。隠し部屋でドクタを視界に捉えた瞬間、殺そうと駆け寄った所をエルファリアに止められた。


「なぜ止めるのですかお館様」


「これ、もっと状況を見た方がいいのでありんす。わらわを蛮族である人間と同じにするかぇ」


 事実、ミッコリは我を忘れていた。安らかに眠っているエルファリアの娘の姿も認識してないほどに。


 ミッコリの瞳に冷静さが宿り、状況を把握した。


 本当に……ドクタは治療したいだけだったのですね。


 お館様やご息女様に危害を加えるとか、不利益な事になるとか、そんなことを考えていた自分が馬鹿らしくなった。


 それと同時にドクタに対して申し訳ない気持ちにミッコリはなる。


 敵対したのにも拘らず、ドクタはご息女様を治してくれた。この恩を返しきれるのでしょうか。


 その考えは五日間の中で……と言うより、ドクタの人となりをある程度理解した時点で杞憂に終わった。


 彼は良くも悪くも正直者で、どうしようもなく一途で、馬鹿がつくほど一生懸命な……そういう人物。


 お館様につかえて早百年。子供だからかもしれないが、こんなに分かりやすい人族を見るのは初めてだった。しかし、医療技術は今まで見たことがないほど凄いを超越した異質な何か……少なくても子供にできる代物では無い。他にもいろいろと知っており何ともアンバランスな存在だとミッコリは思う。


 だが、ここに仇なす存在じゃないならなんだっていい。


 ドクタは、たった五日間で二つの貢献と一つの厄介な案件を残したのだ。


 一つ目の貢献はご息女様を治した事。


「この魔法というのは何とも便利な能力でありんすねぇ」


 エルファリアが炎をだし自由自在に操っている。


 もう一つの貢献とは魔法。


 あれは二日目の朝だっただろうか、いきなりご息女様がドクタに魔法を教えてほしいと言い出し始め、

 

 エルフェリアやミッコリは当然反対した。


 今まで誰一人としてナインファックスはおろか、この森に住まう人達は魔法をつかえた事はない。


 しかしドクタは事もなげに言う。


「構いませんよ。ですが他のエリアにも行かなければいけないですし、魔力の発現と、得意魔法が何かぐらいしか教えて差し上げられませんがよろしいですか」


「うん、今はそれで十分。役に立ちたいから。その希望を見たい」


 ご息女様は一番先にやりたかったみたいですが、何があるか分からないため最初はミッコリになった。


 ドクタが言うには、全ての種族に魔力があり、そこに魔法で刺激を与えれば発現するとの事で、結果的にミッコリは火と風、エルファリアは火と闇と特。最後にご息女様は火と治と特で大変嬉しがられていた。


 むっ、なんだか少し嫉妬しますね。


 ミッコリは回想をやめ、現実に戻る。


「ドクさん、もう行っちゃうの。いくらでもここにいていいよ……ううんここにいてほしい」


 ご息女様がここまで感情をあらわにするのは珍しい。それほどドクタの事が気に入ったのだ。しかし昨日の内に今日出発する事は決められていた事だ。エルフェリアが合図を送ったし、今更変更はできない。


「チルク、これが今生の別れていうわけではありません。もし私がこの森で暮らせるようになったら必ず会いに行きます」


「ん、約束だよ」


 そう言ってチルクはドクタの耳を甘噛みする。


「これは貰って」


 ドクタはチルクが何を言いたいのか悟り辺りに遮断魔法を張る。


 「受け取るからには私も言わなければなりませんね」


 厄介な事……それはドクタがチルク様の白馬の王子様になってしまった事だ。






 ドクタは再会を約束し屋敷の前で、三人と別れ、案内人はここまで案内してくれたあの老婆だった。


 この場所は比較的次の目的地に近い場所だったらしく、二十分程で目的の場所に着いた。


「案内できるのはここまでさね。ありがとう小さき少年。わが眷族を助けてもらって礼を言うさね」


「あなたはもしかして」


 ドクタは推測していた一つがあっていると悟った。


「はてさて何の事さね。今は余生を楽しむただの好奇心旺盛な婆さね」


 カラカラ笑いながら案内人は来た道を戻っていった。


 最後までくえない人だったな。


 思えばあの案内人の説明があったからこそ、ドクタはこうしていられ、無事幻獣エリアをクリアできた。


 残すエリアはあと二つか。


 少しの間息を整え、ドクタは歩く。次なる未知のエリアへと。


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