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七王会議

 翌日の早朝、ホークはある場所に向かっていた。約束を守るために。


 翼で飛べば早く行けるが、誰が見てるか分からないので自重する。それでも百mを八秒程度のスピードで走り、一時間ほどで目的の場所に着いた。


 そこは中央に女神の像があり、それを囲むように、半径二m、高さ五十cmほどの堀がある。そこに水が張ってあり、何故か腐らず綺麗なままだ。他に特筆すべき所は、それ以外森から切り取られた様に何もなく中心から一kmは木一本ない。


 そう……中央エリアと呼ばれる中立地区である。


 ホークは女神像のそばまで行き、躊躇する。本当にこれでいいのか……と。


 七王会議を開けば、多かれ少なかれ影響が出る。それがいい影響となるのは皆無だ。何故ならドクタは人間だからだ。これから呼ぶのは、自エリアで人間の気配を感じたら即抹殺する類の種族。利用し骨の髄までしゃぶりつくし殺す種族。生気をミイラになるまで吸い尽くす種族。


 ホークやフェルマ、ネルチャなどは穏健派に属しているが……人間にいい感情を持っている訳ではなく、せいぜい自エリアに来ても積極的に殺しに行かず、遭遇したら、一言声をかける程度だ……大抵の場合は言葉が通じず戦闘になり殺してしまうが。


 たっぷり三十秒ほど停止した後、女神像の頭を強く押した。


 ビビる事はねぇー、ドクタと約束したんだぁ、男だろぉ俺はよぉ。


 ホークは自分に言い聞かせ鼓舞する。それから一時間後……すべての役者が出そろった。


 魅惑の幻影エリアから、身長一六〇cmほど。巫女装束姿で七つの尾を持ち、ヒト型の形態に絶世の美女。でるところはでて閉まるところはきゅっと締まる完璧なプロポーションに、女神を見ているかの如く、慈悲溢れ、感動すら覚える完璧な顔立ち。頭上には狐耳がある。種族は『ナインフォクス』。この前まで紅一点だった女エリアボスで名は『エルファリア』。ギルド個別指定者でランクA。


 死霊と腐敗エリアから、身長一八〇センチほど。海賊の帽子をかぶり、腕は八本、むぎだしの骨に、眼球だけは二つある。名は『ガラ』。個別指定者でAランク。冒険者内から『アンデットキング』と呼ばれ、恐れられている。


 湖エリアとフェルマが納めていたエリアからはネルチャとべルカ。


 巨獣エリアからは、全長五m、頭に二本の尖った角を生やし顔は岩の様にごつごつとしている。体は、鋼の肉体と言われるほど頑丈なもので、生半可な攻撃では傷一つつけられない。名は『ボーボン』個別指定者でランクA。


 そして、最強で最恐エリアから、全長十m、全てを震え上がらされる鋭敏な瞳に、一つでも持ち帰れば、生涯遊んで暮らせるといわれている最強の鱗、ホークよりも四倍ほど大きく強靭な翼、万物最強にして最恐の種族『ドラゴン』。その中でもエリアボスを張っている最強者の名は『ドーグ』。シークレット個別指定者でランクA+。


 以上が七つのエリアボスである。


 べルかは初めて会った他のエリアボスを前にして緊張しているが、誰も彼女に興味を示さず、視線をホークに固定している。


 その視線が物語っていた……重要な事じゃなかったら容赦はしない……と。


 一斉に視線を向けられ、委縮する心に喝を入れ、話し始めた。


「今日集まってもらったのは他でもねぇー。俺からの推薦で、ある者を森の仲間にしてもらいてぇ~」


 べルカとネルチャは察しがついていた。他の四者はいきなり襲ってはこず、舌打ちしそうな顔で、ルールなので仕方なくといった感じで続きを待つ。


「その者は……人間だ」


 途端に殺気が膨れ上がり、自分より格上、しかも複数の殺気を近くで浴びる事など経験した事がないべルカは、その重圧から地面に蹲り、ネルチャやホークは慣れているのか微動だにしない。


 やはりこうなっちまうか。反応はホークが思っていた通りだ。ホーク自身も思う。敵であり、同胞を数多く屠ってきた人間を招き入れるなど正気の沙汰とは思えない。


「考えるまでもないかぇ、反対でありんすねぇ」


「かかかか……反対」


「はぁ、俺にやられて正気でも狂ったか、反対に決まってるぜ……あんま舐めた提案すると死なすぞ」


「王者の前だ、騒ぐな」


 エルファリア、ボーボン、ガラと口々に反対の意を示し、騒いでいたが、ドーグの声に、ぴたりと止める。それは本能的に分かっているからだ……逆らったら命はないと。


「ふむ、今から質問する。嘘をつけば命はない。何を隠している」


 提案はしたが、ホークは重要な事は何一つ話していない。ドーグにみすかされた感じだ。


 すまねぇドクタ。これを言えば、間違いなくドクタは利用される。それが分かっているからホークは言わなかったのだ。ドーグに何かを隠していると知られてしまった以上嘘は付けない。恩を仇で返す行為。利用するような形になり、心の中でドクタに謝罪し、重い口を開いた……ホークが知っている全てを。


 最初は信じられなかった。ネルチャを除いて五者は。ホークが実際飛んでみて、奇跡のような出来事を納得せざるおえなかった。皆が皆一様に驚き、ドーグも例外ではない。それもそうだ、ホークが飛べない事は他のエリアボスも知っていたし、飛ぶのは不可能だと思っていた。


 ネルチャは仕方ないといった表情で、オルカは呆然とし、エルファリアは扇子で口元を隠し、ガラはけたけたと骨を揺らし、ボーボンは面白くないといった苦い表情で、逆にドーグは目を細め、興味深げであった。





 結果的には五対二で賛成になった……絶対拒否不可能な条件付きで。


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