愛した世界の考え
「世界」シリーズ4作を読んでからのほうがいいと思います。
銀世界と言っては間違いだが、読んで字の如く銀世界だった。ねずみ色だろうか。銀色だろうか。ぐちゃぐちゃに混ざり合った色だ。
「また来ちゃったの」
女の子の声がした。幼馴染の声よりは幾分か高い。
「オードの人、かな。ふふ、まただなぁ」
「君は」
「はじめまして。ここを管理する物です」
物、と言った、人ならざる物。そんな彼女も銀色で、この世界に同化しそうだった。
「ここはね、オード一族の道なんだよ。白い世界に行くならば天国同然の幸せを。黒い世界に行くならば地獄同然の悲しみを」
彼女が言葉を紡ぐたびに世界に色が増える。銀が消えて、銀が増す。そして目の前には銀と共に2つの新たな色。白と黒。
「君は、どっちを選ぶの?」
「ボクは」
なに、迷うことは無い。自分のやりたいことを。自分で選んだ道を。
「黒い世界へ」
「……」
少女が黙る。沈黙が続いた。しばらくして、口を開く。
「分かったよ。よい旅を、オード」
「ありがとう」
黒い世界に踏み込んだ。
「どうする、あたし。これで115729回目振られたよ」
自虐的に笑う彼女には涙があった。その笑い顔には、諦めが出ていた。
「なんで皆黒くなっちゃうかな。オードって、本当にバカだよ」
これは、愛された少年の物語。彼にしか理解できない、彼だけの考え。
黒い世界で。
白を探して。
ふと、光を見つける。
そこには、笑う仲間たちがいた。
ずっとそばにいた仲間たち。