神との決着
目を焼く閃光が、ようやく収まった。
白い世界に、静寂が戻る。
焼け焦げたように揺らいでいた記憶の断片が、ゆっくりと形を取り戻していく。
孤児院。
薄い毛布。
分け合った黒パン。
神父の背中。
泣いていた子供。
届かなかった手。
祈り続けた日々。
そのすべてが、眩い光の残滓の中で震えていた。
だが。
その中心に立つ蓮は、変わらなかった。
肉体はない。
ただの魂。
神に比べれば、あまりに小さな人間の魂。
それなのに。
蓮は、そこにいた。
微動だにせず。
薄く笑いすら浮かべて。
『馬鹿な……』
インティの声が揺れた。
それは怒りではない。
驚愕だった。
『人の魂が……我が光を受けて、なお残るだと……?』
「どうした」
蓮は、肩を竦めるように笑った。
「それで終わりか?」
『あり得ぬ……』
黄金の光が、再び膨れ上がろうとする。
だが、その光には先ほどまでの圧倒的な威圧がなかった。
白い世界を塗り潰していた太陽の輝きは、まだ眩い。
けれど、どこか揺らいでいた。
「どうやら」
蓮は、黄金の影を見上げる。
「お前の正義より、俺の悪の方が強大だったってことだな」
『そんなはずはない……!』
インティの声が、精神世界に響き渡る。
『ちっぽけな人間が、神を圧倒するなど……そのようなことが、あっていいはずがない!』
「あるんだよ」
蓮は静かに言った。
「今、目の前で起きている」
その言葉を、セリアは聞いていた。
白い世界の片隅で。
自分の記憶に囲まれながら。
胸元の聖印を握りしめたまま、ただ、蓮を見ていた。
神の光を浴びても。
神の裁きを受けても。
神の怒りを向けられても。
蓮は、揺らがない。
太陽神インティ。
自分が信じてきた神。
祈りの先。
光の象徴。
絶対であるはずの存在。
その神が、目の前の人間を滅ぼせずにいる。
圧倒しているのは、神ではなかった。
蓮だった。
その事実が、セリアの中へ静かに沈んでいく。
恐怖ではなかった。
安堵でもなかった。
もっと熱く。
もっと深く。
もっと危うい何かだった。
セリアは、自分の胸の奥に生まれた感情の名前を知らなかった。
けれど、それは祈りに似ていた。
かつて孤児院で、神父の背中を見つめながら抱いたもの。
太陽神の祭壇に膝をつき、光へ願いを捧げた時のもの。
どうか。
どうか、私を導いてください。
そう願った時の感情に、よく似ていた。
けれど今、セリアが見つめているのは太陽ではない。
黄金の光でもない。
神でもない。
神を前にしてなお笑う、一人の人間だった。
いや。
ただの人間ではない。
悪を名乗り。
悪を掲げ。
悪によって国を作り替えようとする魂。
蓮が理想として選び取った、悪の女王という在り方。
その根源だった。
セリアは、悪に魅入られてしまっていた。
「そろそろ閉幕の時間だぜ」
蓮が言った。
その声が、白い世界に響く。
「セリア」
名前を呼ばれた瞬間、セリアの肩が震えた。
胸の奥で、何かが弾ける。
「見てただろ」
蓮は、インティを指す。
「こんな存在に、恐れを抱く必要なんかない」
セリアは、唇を震わせた。
恐れる必要がない。
神を。
太陽神を。
自分が信じてきた絶対の光を。
そんなことを、誰が言えるだろう。
けれど、蓮は言った。
そして、その言葉を証明してみせた。
神の裁きの中で。
一歩も退かずに。
「さぁ」
蓮が手を差し出す。
「俺の手を取れ」
セリアは、その手を見た。
魂だけの蓮の手。
そこに、女王の美しい指先はない。
黒衣に包まれた支配者の姿もない。
それでも、セリアには見えた。
その手の向こうにあるものが。
蓮が求めた理想。
蓮が築こうとする国。
蓮がその身でなろうとしている、悪の女王という完成形。
傲慢で。
自分勝手で。
慈悲などと口にはせず。
支配すると言い切る悪。
けれど、その悪は。
セリアが届かなかった場所へ届いた。
セリアが見落としていた原因を暴いた。
神殿の規則では動かせなかった人と物を動かした。
祈りだけでは変わらなかった現実を、力ずくで変えた。
「この世界から、この神を叩き出そうぜ」
蓮の言葉に、セリアの指が震えた。
『セリア』
インティの声が響く。
黄金の光が、セリアへ降り注ぐ。
『惑わされるな』
その声は、厳かだった。
かつてなら、膝をついていただろう。
涙を流し、赦しを乞うていただろう。
自分は間違っていたのだと。
神の前に、頭を垂れていただろう。
『その者は悪だ』
『神の道から外れた者だ』
『その手を取れば、お前は光を失う』
セリアは、聖印を握りしめた。
熱い。
痛い。
けれど、もうその痛みだけでは、セリアの心は動かなかった。
セリアは、ゆっくりと顔を上げる。
黄金の光を見た。
太陽神インティ。
自分が信じてきた神。
その神が今、自分へ命じている。
戻れ、と。
従え、と。
迷うな、と。
だが、その声は。
今のセリアには、導きの声には聞こえなかった。
蓮の声の方が、ずっとはっきりと届いていた。
神殿の許可を待つな。
目の前の命を選べ。
届かないなら、届く仕組みを作れ。
足りないなら、奪ってでも揃えろ。
できない理由を、信仰のせいにするな。
それは、教義ではなかった。
祈りでもなかった。
神の慈悲でもなかった。
けれど、セリアが一番欲しかった言葉だった。
「私は……」
セリアの唇が動く。
黄金の光が強まる。
『セリア』
インティが呼ぶ。
『戻れ』
セリアは、静かに首を振った。
「私は、あなたを信じていました」
声は震えていた。
だが、途切れなかった。
「太陽神インティ」
「あなたの光が、人を導くのだと」
「あなたの教えが、迷う人の道標になるのだと」
「そう信じていました」
『ならば、その悪から離れよ』
セリアは、蓮を見た。
神の光の中で、変わらず立つ魂を見た。
神を恐れず。
神に媚びず。
神に裁かれても揺るがない、その姿を見た。
その瞬間。
セリアの中で、何かが決定的に変わった。
神を信じるとは。
絶対の存在へ心を預けることだと思っていた。
祈るとは。
自分より大きなものへ願いを捧げることだと思っていた。
ならば。
今、セリアが心を預けたいと思ったものは何か。
願いを捧げたいと思った相手は誰か。
答えは、もう出ていた。
「いいえ」
セリアは言った。
黄金の光が揺れる。
「私は、離れません」
『何……?』
「この方は、私に言いました」
セリアの瞳が、蓮へ向かう。
その目には、もう迷いはなかった。
あるのは、静かな熱だった。
「神殿の許可を待つなと」
「目の前の命を選べと」
「届かないなら、届く仕組みを作れと」
「足りないなら、奪ってでも揃えろと」
「できない理由を、信仰のせいにするなと」
セリアは、胸元の聖印へ視線を落とした。
「私は、それが欲しかった」
「ずっと」
「ずっと、その言葉が欲しかった」
聖印に、小さな亀裂が入る。
ぱきり、と。
細い音が、白い世界に響いた。
インティの光が、怒りに燃える。
『それは邪悪な誘惑だ』
「そうかもしれません」
セリアは微笑んだ。
それは、聖女のように穏やかな笑みだった。
けれど、その奥には、狂おしいほどの熱があった。
「でも」
「私は、その悪に魅入られてしまいました」
セリアは、一歩踏み出す。
黄金の光が、彼女を押し戻そうとする。
だが、黒い影が足元を支えた。
「私は、人々の苦しみを減らしたい」
「泣いている子供に手を伸ばしたい」
「病で、飢えで、貧しさで、大切な人を失う者を減らしたい」
「それは変わりません」
もう一歩。
聖印の亀裂が広がる。
「けれど」
セリアの声が、静かに深くなる。
「それは、あなたのためではありません」
インティの光が止まった。
「私の祈りは」
セリアは、蓮を見つめる。
「この方の理想のために」
その言葉は、あまりにも自然にこぼれた。
自分でも驚くほどに。
胸の奥から、迷いなく。
「蓮様の悪が」
「あなたの正義よりも、人の世に届くのだと」
「この世界に証明するために」
聖印が、さらに砕ける。
セリアは、痛みに顔を歪めた。
けれど、その表情はすぐに微笑へ変わった。
慈愛に満ちた。
穏やかで。
美しい。
聖女そのものの微笑へ。
「私は、人々へ手を伸ばします」
「蓮様の理想を叶えるために」
『セリア……!』
インティの声が、初めて焦りを帯びた。
『それは信仰ではない』
『狂気だ』
セリアは微笑んだまま、首を傾げた。
「そうでしょうか」
その声は、ひどく優しかった。
「神を信じ、神のために身を捧げることを信仰と呼ぶなら」
「私はきっと」
「今、初めて信仰を知ったのです」
インティの光が、怒りに歪む。
『人の子を神の上に置くか!』
「いいえ」
セリアは、静かに答えた。
「神の上に置くのではありません」
そして、蓮へ向かって歩き出す。
一歩。
また一歩。
「私の心が」
「もう、あなたではなく」
「この方を選んだだけです」
蓮の手が近づく。
セリアは、その手へ指を伸ばす。
胸元の聖印が、砕けかけている。
太陽神の光が、彼女を焼こうとする。
だが、セリアは止まらなかった。
「私は、聖女でありましょう」
セリアは言った。
「人々を癒やし」
「苦しむ者に寄り添い」
「泣く子供に微笑み」
「病む者のそばに立ちましょう」
その声は、穏やかだった。
どこまでも優しく。
清らかで。
慈悲深い。
「ですが」
その瞳だけが、熱を帯びていた。
「そのすべては」
「蓮様の悪を証明するために」
セリアの指が、蓮の手に触れた。
そして。
セリアは、蓮の手を取った。
祈るように。
縋るように。
捧げるように。
「蓮様」
セリアは、微笑んだ。
「どうか、私をお使いください」
蓮は、その言葉を聞いて、わずかに目を細めた。
服従。
信仰。
献身。
そのすべてが、今のセリアの声には宿っていた。
だが、それだけでは足りない。
ただ使われるだけの道具なら、神殿にもいた。
ただ命じられるまま祈るだけの信徒なら、太陽神のもとにもいた。
蓮が欲しいのは、そんなものではない。
「いいぜ」
蓮は、セリアの手を握り返した。
「使ってやる」
セリアの瞳が、かすかに潤む。
だが、蓮はそこで笑った。
「だが、その前に、もう一度聞くぜ」
その声は、以前エミリアの口から投げかけられた問いと同じだった。
けれど今は違う。
美しい悪の女王の声ではない。
その奥にいた、橘蓮自身の声だった。
「セリア」
蓮は、太陽神の光を背に、静かに問う。
「悪い子になる覚悟はできたか?」
セリアの胸が、大きく震えた。
悪い子。
神殿であれば、叱られる言葉だった。
正しき道から外れた者。
教えに背く者。
光を裏切る者。
だが今、その言葉はセリアの耳に甘く響いた。
鎖を外す言葉のように。
祈りを塗り替える言葉のように。
自分の心を、ようやく許される言葉のように。
セリアは、静かに微笑んだ。
慈愛に満ちた。
穏やかで。
清らかで。
聖女そのものの微笑。
けれど、その瞳の奥には、太陽の光とは別の熱が宿っていた。
蓮の悪に魅入られた者の熱だった。
「はい」
セリアは答えた。
「私はもう、太陽神の良い子ではいられません」
胸元の砕けかけた聖印が、淡く軋む。
それでも、セリアは目を逸らさなかった。
「神殿の良い子にも」
「偉い神官様の良い子にも」
「祈って、待って、許しを乞うだけの良い子にも」
「もう、戻れません」
インティの光が、怒りに震える。
『セリア……!』
セリアは、その声を聞いても、蓮だけを見ていた。
「蓮様」
その声は、優しかった。
あまりにも優しく。
だからこそ、ひどく歪だった。
「あなたが望む、最高に悪い子になりましょう」
その瞬間。
聖印が砕け散った。
黄金の光が弾け、白い世界に黒い影が奔る。
インティの支配が、セリアの内側から剥がれ落ちていく。
それは解放だった。
それは堕落だった。
それは、新たな信仰の誕生だった。
セリアは蓮の手を握りしめた。
「人々には微笑みましょう」
「苦しむ者には手を伸ばしましょう」
「病む者のそばに立ちましょう」
「泣く子供には、優しい言葉をかけましょう」
そして、ゆっくりと微笑む。
「そのすべてを」
「蓮様の悪を証明するために」
太陽神の目には、それは狂気にしか見えなかった。
だが、セリアにとっては違った。
それは祈りだった。
それは誓いだった。
それは、悪に魅入られた聖女が選んだ、新しい生き方だった。
蓮は、口元を吊り上げた。
「上出来だ」
その声に、セリアの身体が震える。
恐怖ではない。
歓喜だった。
蓮は、砕け散った聖印の光を一瞥し、そしてセリアへ笑いかける。
「ようこそ、セリア」
「美しき悪が支配する、ローゼンバーグ王国へ」
セリアは、深く頭を下げた。
まるで、神に祈りを捧げる聖女のように。
けれど、その祈りの先にいるのは、もう太陽神ではない。
その信仰は、もう光へ向けられていない。
セリアが心を捧げる相手は、目の前の人間。
神の裁きを受けてもなお、笑って立っていた魂。
悪を掲げ、悪によって現実を変えようとする者。
蓮だった。
『愚かな……』
インティの声が、怒りに震える。
『神の光を捨て、悪へ堕ちるか』
セリアは、ゆっくりと顔を上げた。
その表情は、穏やかだった。
慈愛に満ちた、聖女の微笑。
だが、その瞳の奥には、太陽の光とは違う熱が宿っている。
蓮の悪に魅入られた者の熱だった。
「いいえ」
セリアは静かに言った。
「私は、堕ちたのではありません」
インティの光が揺れる。
「ようやく、選べたのです」
セリアは、蓮の隣に立つ。
その姿は、信徒ではなかった。
神に赦しを乞う者でもなかった。
蓮の理想に身を捧げた、悪の聖女だった。
「私は、あなたを憎みません」
「あなたの教えに導かれた人も、きっといるのでしょう」
「あなたの光を必要とする人も、きっといるのでしょう」
「けれど」
セリアは、砕けた聖印の残滓を見下ろした。
黄金の光は、もう彼女を縛れない。
「蓮様の理想を阻むなら」
その声は、どこまでも優しかった。
だからこそ、ひどく歪だった。
「私の中に、あなたの居場所はありません」
『貴様……!』
インティの光が膨れ上がる。
白い世界が軋む。
太陽の裁きが、再び降り注ごうとしていた。
だが、セリアは怯えなかった。
蓮もまた、動じない。
ただ、面倒くさそうにインティを見上げた。
「まだやるのか」
その声には、呆れすら混じっていた。
『悪よ』
インティの声が、世界全体を震わせる。
『人の魂で、神を退けられると思うな』
蓮は、小さく笑った。
「いや」
そして、拳を握る。
魂だけの姿に、肉体はない。
筋肉も。
骨も。
血も。
何もない。
それでも、その拳には確かに力が宿っていた。
蓮の悪。
セリアの信仰。
砕けた聖印から解き放たれた意思。
白い世界に広がる黒薔薇の影。
それらが、蓮の拳へと集まっていく。
セリアは、その横で静かに両手を組んだ。
祈るように。
けれど、太陽神へではない。
蓮へ。
自分が選んだ悪へ。
「蓮様」
セリアは、聖女のように微笑んだ。
「どうか、私の中から」
「この神を退けてくださいませ」
蓮は、横目でセリアを見た。
「任せろ」
短い返事だった。
けれど、その一言だけで、セリアの胸は熱く満たされた。
インティの光が、巨大な槍となって降り注ぐ。
白い世界が割れる。
記憶が揺らぐ。
太陽が、怒り狂う。
だが、蓮は一歩踏み出した。
一歩。
また一歩。
神の光へ向かって。
真正面から。
「正義だの」
一歩。
「光だの」
また一歩。
「秩序だの」
さらに一歩。
「看板だけは立派な神様が」
蓮は、拳を引いた。
黒い影が、拳に絡みつく。
黒薔薇の棘のように。
悪の執念のように。
「人の願いを縛ってんじゃねぇよ」
インティの光が、蓮を呑み込もうとした。
『滅びよ、悪よ!』
蓮は笑った。
「閉幕だ」
そして。
太陽神の裁きへ向かって、拳を突き出した。
「こんな神なんか」
黄金の光と、黒い影が激突する。
世界が震えた。
セリアの記憶が、風に散る花弁のように舞い上がる。
孤児院。
神父の背中。
泣いていた子供。
届かなかった手。
祈り続けた日々。
それらすべてを背にして、蓮は叫んだ。
「グーパンでぶっ飛ばしてやる!」
拳が、光を貫いた。
神の裁きが砕ける。
黄金の槍が粉々に弾け、白い世界へ光の破片が降り注ぐ。
その中心で、蓮の拳は止まらなかった。
太陽神インティの干渉体。
その黄金の影へ、真正面から叩き込まれる。
『馬鹿な――』
神の声が、途切れた。
次の瞬間。
インティの影が、白い世界の果てまで吹き飛んだ。
黄金の光が剥がれ落ちる。
太陽が揺らぐ。
セリアの精神世界を支配していた眩い白が、ひび割れていく。
黒薔薇の影が、その隙間から咲き広がった。
『セリア……!』
遠ざかる声が、かすかに響く。
『我が光を……忘れるな……!』
セリアは、静かに微笑んだ。
「忘れません」
その声は、どこまでも穏やかだった。
「けれど、もう祈りません」
黄金の光が、最後に一度だけ瞬いた。
そして。
太陽神インティの干渉体は、セリアの精神世界から叩き出された。
白い世界に、静寂が戻る。
セリアは、蓮の背中を見つめていた。
神を殴り飛ばした、人間の魂。
あまりにも乱暴で。
あまりにも不敬で。
あまりにも馬鹿げていて。
そして、どうしようもなく眩しかった。
セリアは膝をついた。
祈るためではない。
服従のためでもない。
ただ、胸の奥から溢れる感情を抑えきれなかった。
「蓮様……」
その声は震えていた。
「私は、やはり」
セリアは、聖女のように微笑んだ。
「あなたの悪に、魅入られてしまったのですね」
蓮は、拳を下ろした。
そして、少しだけ肩を竦める。
「今さらだろ」
セリアは、深く頭を下げた。
「はい」
その声には、もう迷いはなかった。
「今さらでございます」
白い世界の空に、巨大な太陽はもうない。
代わりに咲いていたのは、黒薔薇の影。
美しき悪が支配する、ローゼンバーグ王国の紋章だった。
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