ローゼンバーグ王国 視察2日目
翌朝。
セリアは王城を出た。
案内役は最低限でいいと伝え、自分の足で王都を歩くことにした。
誰かに見せられたものではなく。
誰かに語られたものでもなく。
自分の目で、この国を見るために。
昨日、王城の中で見たものは、あまりにも異常だった。
ひねるだけで水が出る管。
大量の水を流す手洗い。
火ではない照明。
見たことのない織物。
食べたことのない料理。
卵を使った奇妙な調味料。
女王エミリアが食べたいと望んだという、甘い菓子。
そして。
城の奥にある危険な立入禁止区域。
外の村では、濁った水すら分け合っていた。
病人がいた。
飢えた者がいた。
救いを求める子供がいた。
それなのに、王城の中だけは美しく、清潔で、便利だった。
だからセリアは疑っていた。
王城だけが豊かなのではないか。
女王の周囲だけが、民から搾り取ったものを享受しているのではないか。
悪の女王は、自分の支配を美しく見せるために、王城だけを飾っているのではないか。
そう考えていた。
だが。
王都の朝は、セリアの想像よりも騒がしかった。
悲鳴や怒号ではない。
荷車を押す音。
商人の呼び声。
職人達が道具を鳴らす音。
水を汲む桶の音。
子供達の声。
人々は動いていた。
疲れていないわけではない。
服も上等とは言えない。
けれど、目に力があった。
俯き、震え、明日を諦めた者達の目ではない。
自分の足で歩き、仕事へ向かう者達の目だった。
「……村とは、まるで違う」
セリアは小さく呟いた。
あの村では、人々はただ耐えていた。
飢え、病み、疲れ切り、明日を見る余裕さえ失っていた。
だが、王都の民は違う。
ここには、活気がある。
通りの一角では、炊き出しが行われていた。
大きな鍋から白い湯気が立ち上り、並んだ人々へ食事が配られている。
列は長い。
しかし、混乱はなかった。
奪い合いもない。
兵士が剣で脅している様子もない。
係の者が順番を確認し、子供や老人を優先しながら椀を渡している。
椀を受け取った老人が、深く頭を下げた。
子供が椀を抱え、嬉しそうに笑った。
セリアは、足を止める。
飢えた者はいる。
それは間違いない。
だが。
少なくとも、この王都では。
飢えた者が、放置されてはいない。
さらに歩くと、給水所があった。
井戸ではない。
大きな水桶。
そこへ水を流し込む管。
人々は順番に並び、桶や壺へ水を移している。
水を巡って争う者はいない。
濁った水を奪い合う者もいない。
セリアは、その水の流れを見つめた。
透明な水。
村では、得ることすら難しかった水。
それが、王都では人々に配られている。
王城だけではなかった。
王都にも、水が届いている。
「……どういうことですか」
疑念は消えない。
むしろ、形を変えて深くなる。
王都だけを整えているのかもしれない。
外の村を切り捨て、王都だけを美しく飾っているのかもしれない。
悪の女王が、自分の支配を正しく見せるために。
王都の民だけを満たし、外を見捨てているのかもしれない。
そう考えれば、まだ説明はつく。
だが。
目の前にある事実は、無視できなかった。
炊き出しは機能している。
水は供給されている。
民は働いている。
子供達は笑っている。
そして、誰もが怯え切っているわけではない。
午前の調査を終えたセリアは、一度王城へ戻ることにした。
王都で見たものを整理するため。
そして、昨日から気になっていた場所を確認するためだった。
王城へ戻る道中も、セリアの思考はまとまらなかった。
あの村は現実だった。
だが、今見た王都もまた現実だった。
同じ国の中で、なぜここまで違うのか。
誰が、何を止めているのか。
何が、どこで詰まっているのか。
疑問だけを抱えたまま、セリアは王城の門をくぐった。
城内へ戻ると、外の喧騒が遠ざかる。
磨かれた廊下。
静かな足音。
整えられた空気。
昨日感じた違和感が、再び胸の奥に戻ってくる。
そのまま客室へ戻ろうとして。
セリアは廊下の奥で足を止めた。
昨日から気になっていた場所があった。
城の奥。
使用人達が不用意には近づかず、兵士も立ち止まる区域。
扉には札が掛けられている。
【関係者以外立入禁止】
その下に、小さく追記されていた。
【本日は比較的安全】
「……比較的?」
セリアが思わず呟いた時だった。
「やはり、気になりますか」
背後から声がした。
振り返ると、ルミが立っていた。
白と黒の侍女服。
静かな微笑み。
足音もなく現れるその姿に、セリアは一瞬だけ肩を強張らせる。
「ルミさん」
「はい」
ルミは小さく一礼する。
「前日も申し上げましたが、こちらはクロエ様の研究室でございます」
「昨日は危険だから勧めない、と」
「はい。本日は昨日よりは安全でございます」
セリアは扉の札を見る。
比較的安全。
昨日よりは安全。
どちらも、安心できる言葉ではなかった。
「それは、入っても問題ないという意味ですか」
「問題が起きる可能性が、昨日より低いという意味でございます」
「……同じではないのですか」
「厳密には異なります」
ルミは変わらぬ微笑みで答える。
「本日の研究内容であれば、セリア様が見学されても致命的な危険は少ないかと」
「致命的な危険」
「はい」
「致命的ではない危険はあるのですね」
「研究室でございますので」
何も安心できない。
だが、だからこそ確認する必要があった。
邪神国家の王城。
立入禁止区域。
危険な研究室。
どう考えても、聖女が軽々しく踏み込む場所ではない。
けれど。
ここを見ずに、この国を判断することはできない。
「……お願いします」
「かしこまりました」
ルミが扉を開ける。
その瞬間、セリアは奇妙な匂いを感じた。
油。
金属。
薬品。
焦げたような匂い。
そして、神殿の魔道具室に似た魔力の気配。
研究室の中は、セリアが想像していた儀式場とは違っていた。
床には魔法陣ではなく、金属線が走っている。
棚には試験管や魔石、銅線の巻かれた器具。
壁際には奇妙な箱がいくつも並び、天井からは淡い光を放つ球体が吊るされていた。
机の上には図面。
工具。
書きかけの計算式。
そして、何に使うのか分からない金属片。
中央の机では、金髪の少女が部品を並べていた。
眼鏡をかけ、白衣のような上着を羽織った少女。
謁見の間で、エミリアの傍に控えていた魔導師。
クロエだった。
「クロエ様」
ルミが声をかける。
クロエは顔を上げた。
そしてセリアを見る。
眼鏡の奥の瞳が、わずかに細くなる。
「やあ、聖女セリア」
声は穏やかだった。
だが、温かくはない。
「限定的な観測結果だけでエミリア様に暴言を吐いた、実に勇敢な外部神官だねぇ」
セリアは息を呑む。
クロエは手元の部品を置き、椅子の背にもたれた。
「主張そのものに検証価値はあるよ」
「キミが見た村が悲惨だった。それは事実なのだろう」
「だがね、情報源の偏りを自覚しないまま国家全体を断じるのは、研究者でなくとも粗雑だ」
一拍。
眼鏡の奥の視線が、少しだけ鋭くなる。
「それに、エミリア様への態度としては不愉快だね」
静かな棘だった。
怒鳴られるより、ずっと鋭い。
セリアは胸元の聖印に手を添え、正面から受け止める。
「……私が見たものを、なかったことにはできません」
「当然だよ」
クロエは即答した。
「観測された現象を否定するのは非合理だ」
「問題は、その観測結果をどう扱うかだね」
クロエは一度、セリアの顔を見た。
「まあ、その話は後でいい」
そして、すぐに視線を机の上へ戻した。
「ちょうどいいからねぇ」
声の温度が変わった。
不快感よりも、興味が前に出てくる。
「外部神官がこの技術をどの程度理解できるのか、反応を記録したかったんだ」
「……反応を、記録?」
「そうだよ。キミは王城や王都で見た灯りについて知りたいのだろう?」
クロエは机の上に置かれた小さな箱を指差した。
「結論から言おう。あれは火でも神聖魔法でもない」
「魔導エネルギーで動かしている照明だ」
セリアは、思わず問い返す。
「魔導エネルギー?」
「そう」
クロエは箱を持ち上げる。
金属と魔石で作られた、小型の容器だった。
「これは魔導バッテリーだよ」
「魔導具を動かすための力を溜める容器だね」
「従来は、空気中の魔素をゆっくり吸収するか、魔力を持つ者が直接注入することで充填していた」
そこまでは、セリアにも理解できた。
神殿でも魔道具は使われる。
魔力を持つ神官が力を注ぎ、魔道具を維持することもある。
「しかし、その方式では時間がかかる」
「魔力持ちの負担も大きい」
「大量運用には向かない」
クロエは壁に掛けられた簡易図を指差した。
川。
水車。
発電機。
魔導変換器。
魔導バッテリー。
街灯。
給水設備。
それらが、順番に線で繋がれている。
「そこで、水力発電で得た電力を魔導変換器へ通す」
「電力を起動力として利用し、魔素を整流、圧縮、安定化」
「その上で魔導エネルギーとして再構成し、魔導バッテリーへ充填する」
セリアは黙った。
理解できる言葉と、理解できない言葉が混ざっている。
「……水の力で、魔力を作っているのですか?」
「違うねぇ」
クロエはすぐに言った。
「魔力を作っているわけではない」
「空間中に存在する魔素を、扱いやすい状態へ整えているんだよ」
「電力そのものを直接使っているわけでもない」
「電力は魔素を整えるための起動力だ」
セリアは眉を寄せる。
クロエは少しだけ考えた。
「ざっくり言おう」
「川の力で水車を回す」
「水車の回転で電気を起こす」
「その電気で、空気中の魔素を整える」
「整えた魔素を魔導エネルギーとして箱に詰める」
「その箱で灯りや給水設備を動かす」
セリアはゆっくりと頷いた。
「……それなら、何とか」
「まあ、その理解で十分だよ」
クロエは少し得意げに眼鏡を押し上げた。
「完全理解を求めるなら三日は必要だ」
「今ここで理解されたら、それはそれで私の立場がないからねぇ」
「三日……」
「本気でやるなら、だけどね」
セリアは、返す言葉を失った。
クロエは気にせず続ける。
「重要なのは、これによって魔力持ちに頼らず、一定量の魔導エネルギーを確保できる点だ」
「電力だけで王都全域を動かすのは、現状では不可能だよ」
「設備規模も出力も足りない」
「だが、魔導エネルギーとして運用すれば、少ない力で大きな効果を得られる」
クロエは図の一部を指差す。
「現時点で賄えるのは、王都の街灯、給水設備、王城周辺の照明、一部工房設備程度だね」
「それでも、従来と比べれば大きな前進だ」
セリアは、朝に見た給水所を思い出す。
通りを照らす灯り。
水を汲む人々。
炊き出しに並ぶ子供達。
昨日、王城の中で見た灯りを、ただの贅沢だと思った。
しかし今、クロエが示す図の先には、王都の街灯と給水設備がある。
王城だけではない。
この技術は、民の生活にも使われている。
「……あの給水所も」
「ああ」
「街の灯りも」
「そうだよ」
「この技術で?」
「正確には、この技術を応用した魔導設備で稼働している」
セリアは言葉を失う。
だが、クロエの説明はそこで終わらなかった。
むしろ、そこからが本番だった。
「ただし、高出力魔導回路には大きな問題がある」
クロエの目が、わずかに輝く。
先ほどまでの棘は、もうほとんど消えていた。
代わりに、研究者としての熱が前に出ている。
「鉄や一般的な金属では、高出力に耐えられない」
「回路が焼き切れる」
「魔導エネルギーの流量に金属が負けるんだ」
「その結果、発熱する」
「焦げる」
「溶ける」
「そして、よく爆発する」
「爆発」
セリアの声が止まる。
「そう、爆発だよ」
クロエは平然と言った。
「正確には、想定よりも急激な魔素圧の上昇によって、封入容器または変換回路が破裂する現象だね」
「それを爆発と言うのでは?」
「一般的にはそう呼ぶね」
「では、爆発ではありませんか」
「うん。爆発だ」
あまりにも当然のように言われ、セリアは言葉を失った。
ルミが横から静かに補足する。
「最近は、以前より頻度が減りました」
「以前は、どの程度だったのですか?」
「よく、でございます」
「今も、よく、なのでは?」
「今は、ときどき、でございます」
クロエが不満そうにルミを見る。
「かなり改善しているだろう?」
「比較対象が過去のクロエ様でございますので」
「それは不公平だねぇ」
「公平に申し上げても、爆発は爆発です」
「小規模だよ」
「小規模でも爆発です」
セリアは額に手を当てた。
この研究室は危険だ。
それも、想像していた邪神の儀式とは別方向に危険だ。
クロエは机の上の金属片を拾い上げた。
表面には、髪の毛より細い線のようなものが刻まれている。
「この程度でも、少し流量を上げると焦げる」
「焦げるのですか」
「焦げるね」
「爆発も?」
「条件次第だ」
「条件次第で爆発する物を、なぜ机の上に置いているのですか」
「今は起動していないからだよ」
クロエは不思議そうに答えた。
「起動していないものは爆発しない」
「……それはそうなのでしょうが」
「それに、危険だから研究しない、というのは間違いだ」
クロエは、少しだけ胸を張る。
「危険性を把握し、制御し、再現性を得る」
「それが研究だよ」
「分からないものを怖がって遠ざけるだけなら、何も進まない」
尊大に聞こえる。
しかし、その言葉自体は間違っていない。
だからこそ、セリアは反論しづらかった。
「高出力化には新しい金属素材が必要だ」
クロエは説明を続ける。
「具体的には、レアメタル、新合金、あるいはドワーフ系冶金技術との組み合わせだね」
「さらに、複雑な魔導回路を作るには金属へ魔法式を刻み込む必要がある」
「通常の鍛冶では無理だ」
「精密な彫金技術が不可欠になる」
「つまり、今後は冶金、細工、魔導回路設計、変換効率計算を統合する必要があるわけだよ」
クロエの声が、少しずつ早くなる。
「魔素流路を多層化できれば、変換効率は上がる」
「ただし多層化すると干渉が起きる」
「そこで位相をずらす必要がある」
「逆流防止の制御式も必要だ」
「問題は制御式を刻む幅だね」
「現在の細工精度では、理論値に届かない」
「だが、職人の技術が向上すれば実現可能だ」
「さらに電磁力を利用すれば、回転運動へ変換できる可能性もある」
「その場合、工房設備への応用範囲が広がる」
「高出力化できれば熱も取れる」
「熱を制御できれば加工にも使える」
「そして魔導エネルギーを収束させれば、理論上は刃状に――」
「クロエ様」
ルミの声が静かに割り込んだ。
クロエは口を閉じる。
一拍。
「まだ実装していないよ」
「そういう問題ではございません」
「理論上の話だ」
「理論だけで終わらないのがクロエ様でございます」
「必要になれば実装するさ」
「その必要性の判断を、クロエ様だけでなさらないでくださいませ」
クロエは少しだけ不服そうに唇を結んだ。
セリアは額に手を当てた。
途中から、完全に理解が追いついていなかった。
整流。
圧縮。
安定化。
多層化。
位相。
逆流防止。
高出力魔導回路。
電磁力。
回転運動。
刃状。
言葉は聞こえている。
だが、頭の中で意味が繋がらない。
ただ一つだけ分かる。
危険だ。
この研究室は、間違いなく危険だ。
そして、よく爆発する。
「……理解はできません」
セリアは正直に言った。
「ですが、危険であることは分かりました」
「それと」
天井の淡い光を見る。
「民の生活を支えていることも、分かりました」
クロエは満足げに頷いた。
「十分だね」
「危険性と用途が分かったなら、説明としては合格だ」
「合格、ですか」
「ああ。外部神官としては上出来だよ」
どこか上からの言い方だった。
だが、クロエには悪気がなさそうだった。
いや。
悪気がないからこそ、余計に厄介なのかもしれない。
「残りは?」
セリアが尋ねると、クロエの瞳がまた輝いた。
「改良余地だね」
セリアは、それ以上聞かないことにした。
邪神儀式場ではなかった。
拷問部屋でもなかった。
人を祭壇に乗せるような禁忌の場でもなかった。
だが、別の意味で恐ろしい場所だった。
ここでは、危険を危険と理解した上で、さらに一歩進もうとする者がいる。
しかも、その者は浮かれているわけではない。
ただ、理知的に。
必要だから。
可能性があるから。
改善できるから。
そして、面白い結果が得られるかもしれないから。
進もうとしている。
それが、セリアには一番恐ろしく思えた。
「クロエさん」
「何だい?」
「この研究室は、確かに立入禁止にすべきです」
「同感だね」
「同感なのですか」
「不用意に入られると危険だからね」
「危険だと分かっているのですね」
「当然だよ」
「ならば、なぜ平然と研究を?」
クロエは不思議そうに首を傾げた。
「危険性を把握しているからこそ、平然と研究できるんだよ」
セリアは黙った。
この国の者達は、時々、正しいようで決定的におかしなことを言う。
「では、そろそろ失礼します」
「ああ」
クロエは机の上の部品へ視線を戻した。
「次は出力を少し上げるとしよう」
セリアは足を止める。
ルミが静かに言った。
「クロエ様」
「少しだよ」
「本日は比較的安全な日でございます」
「比較的安全な範囲で上げるだけさ」
「その表現は安全ではございません」
セリアは足を速めた。
あの研究室からは、早く離れた方がいい。
聖女としての直感が、そう告げていた。
その日の夜。
セリアはもう一度、王都の大通りを歩いた。
昼の活気は演出できるかもしれない。
人々を働かせ、笑わせ、見せかけることはできるかもしれない。
だが、夜の暗がりまでは隠せない。
そう考えたからだ。
しかし、王都の大通りには光が灯っていた。
王城で見たものと同じ。
火ではない。
油の匂いもしない。
煙もない。
神聖魔法でもない。
淡い光が、通りを照らしている。
昼と同じ、とは言えない。
暗い路地はある。
人通りの少ない場所には、影も落ちている。
それでも、メインストリートには足元すら見えないような暗がりはなかった。
商人が店じまいをしている。
兵士が巡回している。
母親が子供の手を引いて通りを歩いている。
夜でも、人が歩ける街になっている。
セリアは、街灯の下で立ち止まった。
昨日、王城の灯りを見た時。
それを贅沢だと思った。
民が苦しむ中で、城だけが異常な便利さを享受しているのだと思った。
だが、今見ている光は王都を照らしている。
民の足元を照らしている。
帰る道を照らしている。
水も。
光も。
少なくとも王都には届いている。
セリアは胸元の聖印へ手を添えた。
自分が見た村は、確かに現実だった。
飢えた人々。
濁った水。
病の子供。
疲れ切った顔。
あれは嘘ではない。
だが。
今見ている王都もまた、現実だった。
村と王都。
外と内。
悲惨と活力。
暗闇と光。
その差が、あまりにも大きすぎる。
「……この国は」
セリアは、夜の王都を照らす光を見上げた。
「いったい、どうなっているのですか」
答えは出ない。
ただ一つだけ、分かったことがある。
この国を、最初に見せられたものだけで断じることはできない。
調査二日目。
セリアの疑念は、まだ消えない。
けれど。
その疑念の形は、少しずつ変わり始めていた。
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