深夜2時の机上大戦
戦火は突如として、ノートの中央線付近で巻き起こった...
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領土紛争
カチリッ。
無機質なシャープペンのノック音と共に、
透明なプラスチックの甲冑を纏った15cm余りの定規が、無慈悲な直線を引きながら領土を拡張していく。
その鋭利なエッジは、紙の上のあらゆる余白を切り裂くかのようだった。
「それ以上の侵略は許さん!」
最前線に立ちはだかったのは、黒と白と青のボーダー。
歴戦の戦士、消しゴムである。
身を削り、自らの命を白き粉塵へと変えながら、
定規が引いた不条理な線を、次々と消し去っていく。
鋭い直線を引ける定規であったが、面ではなく線の攻撃ゆえに、消しゴムに対する攻防はやや劣勢であった。
しかしまた、消しゴム自身も身を削る攻撃のために、
進軍できずにいた。
消しゴムの捨て身の防衛により、定規の進軍は一時停止。
消しゴムの体躯もすでに全盛期の半分にまで削られていた。
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台頭
膠着状態から、しばらくの時間が経過する。
両軍共に睨み合う状態であった。
そんな時、遠くからカチカチと音が聞こえた。
両軍緊張状態になる。しかし、その音はどちらのものでもなかった。
「黒、赤、青...全弾装填!撃てぇ!」
膠着状態を打破したのは、上空から襲来した油性ボールペンであった。
狂ったようにノック音が響き渡り、ノートの白地は見る影もなく汚されていく。
赤ペンによる修正の雨が降り注ぎ、ノートの住人たちはパニックに陥った。
「みんな逃げるんだ!」
消しゴムが叫ぶ。しかし、油性インクの粘着質な空襲は、消しゴムの防壁さえ、無力化していく。
シャープペン、定規連合軍にもなす術はなかった。
ノートは瞬く間にインクに染まり、
ボールペンという第三勢力の勝利は決定的かと思われた。
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目覚め
混沌としていた紙の上、ボールペン軍の勢力は圧倒的であった。
消しゴム軍や、援軍の修正液でさえ、その液量に勝てなかった。
紛争は終わったーーーかに思えた。
その時、引き出しの中から、「奴」が姿を現した。
鈍い輝き、圧倒的な重量。
絶対的な破壊神ーーーホッチキスである。
「すべて...束ねてやる!」
地響きを立てて進軍するホッチキスに対し、ボールペンがインクを浴びせる。
だが、そのボディはそれを弾き返す。
定規が必死に突きを繰り出すが、ホッチキスの金属のボディを前に、プラスチックの身体は悲鳴をあげた。
バチン!!!
激しい衝撃音が机上に響き渡る。
ホッチキスから放たれた銀色の針が、戦場であるノートを、その中に全ての軍ごと、いとも容易く一つに縫い留めた。
「動くな。これで、お前たちの戦いは終わりだ」
物理的な支配力。誰もこの針から逃れることはできない。
全ての文房具が沈黙し、机上に再び静寂が訪れた。
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夜明け
翌朝、1人の人間が起きてくる。
「うーわ、散らかってんじゃん」
あくびをしながら、ホッチキスで止められたノートと、転がる文房具を掴んだ。
人間は、面倒くさそうに針を外す。
引き出しの暗闇の奥で、新たな刃が静かに光を放ったのだが...
それはまた、別の夜のお話。




