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深夜2時の机上大戦

作者: Tachun
掲載日:2026/05/30

戦火は突如として、ノートの中央線付近で巻き起こった...

---

領土紛争


カチリッ。

無機質なシャープペンのノック音と共に、

透明なプラスチックの甲冑を纏った15cm余りの定規が、無慈悲な直線を引きながら領土を拡張していく。


その鋭利なエッジは、紙の上のあらゆる余白を切り裂くかのようだった。


「それ以上の侵略は許さん!」


最前線に立ちはだかったのは、黒と白と青のボーダー。

歴戦の戦士、消しゴムである。


身を削り、自らの命を白き粉塵へと変えながら、

定規が引いた不条理な線を、次々と消し去っていく。


鋭い直線を引ける定規であったが、面ではなく線の攻撃ゆえに、消しゴムに対する攻防はやや劣勢であった。


しかしまた、消しゴム自身も身を削る攻撃のために、

進軍できずにいた。


消しゴムの捨て身の防衛により、定規の進軍は一時停止。

消しゴムの体躯もすでに全盛期の半分にまで削られていた。



---

台頭


膠着状態から、しばらくの時間が経過する。


両軍共に睨み合う状態であった。


そんな時、遠くからカチカチと音が聞こえた。


両軍緊張状態になる。しかし、その音はどちらのものでもなかった。


「黒、赤、青...全弾装填!撃てぇ!」


膠着状態を打破したのは、上空から襲来した油性ボールペンであった。


狂ったようにノック音が響き渡り、ノートの白地は見る影もなく汚されていく。

赤ペンによる修正の雨が降り注ぎ、ノートの住人たちはパニックに陥った。


「みんな逃げるんだ!」


消しゴムが叫ぶ。しかし、油性インクの粘着質な空襲は、消しゴムの防壁さえ、無力化していく。


シャープペン、定規連合軍にもなす術はなかった。


ノートは瞬く間にインクに染まり、

ボールペンという第三勢力の勝利は決定的かと思われた。



---

目覚め


混沌としていた紙の上、ボールペン軍の勢力は圧倒的であった。

消しゴム軍や、援軍の修正液でさえ、その液量に勝てなかった。

紛争は終わったーーーかに思えた。



その時、引き出しの中から、「奴」が姿を現した。

鈍い輝き、圧倒的な重量。

絶対的な破壊神ーーーホッチキスである。


「すべて...束ねてやる!」


地響きを立てて進軍するホッチキスに対し、ボールペンがインクを浴びせる。

だが、そのボディはそれを弾き返す。


定規が必死に突きを繰り出すが、ホッチキスの金属のボディを前に、プラスチックの身体は悲鳴をあげた。


バチン!!!


激しい衝撃音が机上に響き渡る。

ホッチキスから放たれた銀色の針が、戦場であるノートを、その中に全ての軍ごと、いとも容易く一つに縫い留めた。


「動くな。これで、お前たちの戦いは終わりだ」


物理的な支配力。誰もこの針から逃れることはできない。


全ての文房具が沈黙し、机上に再び静寂が訪れた。



---

夜明け


翌朝、1人の人間が起きてくる。


「うーわ、散らかってんじゃん」


あくびをしながら、ホッチキスで止められたノートと、転がる文房具を掴んだ。


人間は、面倒くさそうに針を外す。



引き出しの暗闇の奥で、新たな刃が静かに光を放ったのだが...

それはまた、別の夜のお話。

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