ギルド試験・第二段階
ギルドの扉を開けた瞬間、空気が張り詰めた。
昨日の刺客の件をまだ知らないはずなのに、全員がユリウスを注視している。
受付の女性が低い声で告げた。
「ユリウス・レイヴン。上層部から指令です。第二段階試験を受けていただきます」
ユリウスは眉を上げた。
「昨日登録したばかりなんだが?」
「……あなたが“特別”だからです」
試験内容は、郊外の遺跡から“魔核石”を回収すること。
ただし、その遺跡は魔物の巣窟で、普通の新人なら死ぬレベル。
ユリウスは笑みを浮かべた。
「面白い。受ける」
遺跡に向かう馬車の中、もう一人の受験者が座っていた。
年齢はユリウスと同じくらい。短い赤髪に鋭い瞳、腰に剣。
彼女は名乗った。
「アリア・フェルナー。剣士よ。あんたが噂の“危険指定”?」
「そうらしいな。ユリウスだ」
アリアは鼻を鳴らす。
「私は剣しか使えない。でも、あんたの魔術……すごいって聞いてる。利用させてもらうわ」
「好きにしろ。ただ、足は引っ張るなよ」
互いに挑発的に笑い合った。
遺跡に到着。
中は崩れた石造りで、魔力の残滓が漂っている。
すぐに魔物――石のゴーレムが現れた。
「来たわよ!」
アリアが剣を抜き、正面から突っ込む。
その間にユリウスは冷静に解析。
【対象:石造ゴーレム/魔核:胸部中央/構造:複雑・再生機能あり】
(核を潰しても再生するタイプか。じゃあ――核の構造ごと破壊だ)
彼は短い詠唱を口にする。
「構造分解・第五式――連鎖崩壊」
光の鎖がゴーレムに巻き付き、内部の術式を次々に破壊。
巨体は悲鳴もなく崩れ落ちた。
アリアが驚きつつ笑った。
「……やるじゃない」
「お前もな。剣筋は悪くなかった」
二人は遺跡を奥へ進み、ついに魔核石を発見。
だが、その瞬間――床が崩れ、闇の底へ落ちた。
下層には巨大な影が潜んでいた。
――黒いドラゴン。
アリアが息を呑む。
「……嘘でしょ、こんなの聞いてない!」
ユリウスは口元を吊り上げた。
「いいじゃないか。試験にはちょうどいい相手だ」