表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

街に潜む黒い影

カルティナの街での生活は、平穏とは程遠かった。

 宿に泊まり、昼は市場を観察、夜は魔術書を集めて解析――そんな日々を送るユリウスだったが、常に“視線”を感じていた。


 (誰かが、俺を監視してる)


 ギルド長から危険指定を受けて以来、明らかに尾行の気配があった。

 夜、裏路地に足を踏み入れると、その影が動いた。


 「出てこい」


 ユリウスが声をかけると、フードをかぶった人物が現れる。

 顔を隠しているが、ただ者ではない雰囲気。


 「……お前、ギルドに登録した“異常者”だな」


 「異常? 面白い言い方だな」


 フードの人物は短剣を抜き、低く呟いた。


 「命を狙われている理由を知りたいか?」


 ユリウスは眉一つ動かさず、興味深そうにその人物を観察した。


 「言ってみろ」


 人物は短剣を構え、しかし攻撃はしてこなかった。

 代わりに小さく囁く。


 「“図書館の封印”を破った者は、すべて抹殺対象だ」


 「……ほう」


 「お前が出てきたせいで、世界のバランスが崩れる。そう命じている存在がいる」


 その瞬間、彼の足元から黒い影がうねり、蛇のように襲いかかってきた。


 「なるほど、説明と同時に殺すわけか。効率的だな」


 ユリウスは冷静に手をかざした。


 「解析――影の魔術か」


 影がユリウスの足に絡みつく。普通なら動けない。

 だが、彼の目に術式が浮かび上がる。


 【影束縛式・三連鎖型】

 【制御点:使用者の左掌】


 「切断完了」


 ユリウスは影の根元に向けて小さな魔力を放ち、制御式を分解。

 影が霧散し、フードの人物が動揺した。


 「な、術式を……分解しただと!?」


 ユリウスは静かに笑った。


 「お前の魔術は“構造が単純すぎる”。もっと複雑に組んでこい」


 人物は舌打ちし、闇の中に消えた。

 だが、最後に言い残した。


 「――次は、“本物”が来るぞ」


 その夜、宿の窓辺に立ったユリウスの耳に、あの声が再び響いた。


 『ユリウス。選べ――世界を壊すか、守るか』


 振り返ると、そこには図書館で見た少女の幻影が立っていた。

 透明で、しかし確かな存在感。


 「お前は……」


 少女は微笑み、意味深に告げた。


 『近いうちに、また会える。その時まで、生き延びなさい』


 光が消え、夜が戻る。


 ユリウスは息を吐き、呟いた。


 「面白くなってきた」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ