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救済の聖女のやり残し ~闇と光の調和~  作者: 物書 鶚
第二章 第二部 目指すべきところ
197/210

幕間 「賢人会議」

誰もが腹の中に一物を抱えながら生きている

誰もが何かを隠しながら生きている

それなのに……誰もが正直者を称え、嘘つきを厭う


「だからこんなモンに頼らにゃならん。賢者とて例外ではないぞ?」


王城の地下、深部中層。


ごくごく限られたものしか知らず、入ることが許される者はほんの一握り。徹底的に秘匿された部屋が密かに存在している。


薄暗い回廊の先にある部屋。

控えめな魔導灯の明かりに照らされた円形の室内。

壁も床も天井も、黒色の石材によって囲まれた異様な部屋。


中央には円形の大きなテーブルが置かれている。


周りには席が3つ。


室内には他に家具らしい家具は見当たらない。



3つ座席の横には、それぞれ魔術的な意匠の施された小さなスツールのようなものが備えられている。


よく見ると座席ごとにデザインが違う。


1つは小さめの小物置きのような作り。

1つは何かを立てかける様な作り。

1つはよくわからない低い台座のような作り。


さらに視線を落とすと、円卓と座席を囲むような方陣が刻まれている。


ある程度の魔術知識を有するものであれば、ここが何かしらの目的をもって作られた、ある種の儀式のための部屋であることがわかるだろう。



そんな室内には既に何名かの人物が居た。


二人の男性が座席に座っていて、一人の背後には別の男が控えている。

そして、つい今しがた入室してきたのは老人と若い女性だ。



「この面子が揃うのも久々じゃの。」


何やら感慨深そうに笑顔を浮かべながら、蓄えた白い髭を撫でつけつつ彼は口を開いた。


装いは神秘的で一目で高位な魔術師であることは誰の目にも明らかだ。その異様なほど老齢な外見に似つかわしくない、しっかりとした足取りで用意された座席へと歩み寄る。

彼が手に持つ()()()()()()()()が輝く魔仗は、尋常ならざる逸品であることが素人目にもわかるものだ。


「大戦中は何度かありましたが、終結後は初めてではないですかな?」


軽装ながらも上等な鎧とマントに身を包んだ、壮齢で知的な雰囲気を湛える武人は、先の老人の言葉に同意を示す。

ゆったりと席に腰かけつつ脱力している風でありながら、その手は腰にある得物を常に意識しており一切の隙をみせない()()の振る舞い。


「……余としては、この場にこの面子が集まることは望ましくないことだと認識しておるのだがな。」


荘厳な佇まいと絶大なる威厳を放つ男性は、いささか気乗りしない雰囲気を隠そうともしない。深々と座席に腰かけ、不遜な顔をしている。

しかしながら、その瞳には強い意志と覚悟を漲らせ、この場において起きることを待ち受ける姿勢がありありと見て取れる。

その金髪の頂きには王たる身分を象徴する()が光っている。


「そう腐りなさいますな、陛下。ルキウス殿の占星術によって得られた情報がルミナスの行く末を大きく左右するのは、もはや自明の理。それが例え、どんな困難を予見するものだとしても、備える時がいささかでも増えるのであれば千金に値する予言ですぞ。」


そう言って彼は腰に佩いていた得物を鞘ごと外し、座席の横に備えられた豪奢な造りの専用棚に立てかけた。

そして目の前のテーブルに置かれた杯をちびりと口にする。


「わかっておる、ガレン。この国を統べる者として、『星読みの賢者』がもたらす助言に心から感謝した回数は両の手では足りぬ。今回とて同じであろう。」


そうは言いつつも、やはり面白くなさそうな顔のまま、彼は頭上の冠を手に取ると。座席のそばに備え付けてある専用の置き場に自ら王冠を置いた。

そして先の武人同様に目の前のテーブルに置かれた杯を軽く煽った。


「ふん。相変わらず口の減らんやっちゃのぅ、エリオット。餓鬼の時分にわきまえず、封印庫から災禍を解き放ちかけた頃から微塵もかわっとりゃせん。」


にやにやした笑顔を浮かべつつ、そんなことを言いながら。老齢の賢者は手に持った魔仗を席の隣にあった台座に放り投げた。

魔仗は自ら意思を持つかのように音も無く飛翔すると、台座の上に移動しピタリとそのまま空中静止する。

そして、武人と王の二人同様に、目の前のテーブルにあった杯を手に取り一気にそれを飲み干した。


「なんじゃい、60年ものかいな、けっちいのぅ。レジナルドや、946年のハリルを持ってこい。」


老人は口にした年代物の高級酒をさらりと酷評すると、王の傍に控えていた執事長に注文を告げた。収集家が聞いたら泡を吹いて倒れそうなくらいのビンテージをことも無げに要求している。


「賢人会後の晩餐会(ばんさんかい)にはご満足いただける品を用意しております。今はそちらでご辛抱ください。」


「セバス、ほどほどにな。爺の我侭に付き合っていたら、国庫が枯れる。」

「はっ。」


「ほ。たかだか精霊貨5枚で傾く国庫か?なんじゃい、過去の悪さを蒸し返された仕返しかの?」

「ちがう。余ですら滅多に飲めん希少中の希少酒を一気飲みされたくないだけだ。」

「王にしては器の小さい物言いじゃな。」


「私としても少々残念ですな。『親しき友(ハリル)』と希少なる一時を過ごせるのかと期待したのに。」


「……ガレン。お前まで爺の戯言に乗るな。気が滅入る。」


「ほっほっほ。気さくな冗談じゃよ。おかげで愛弟子の珍しい狼狽(うろた)えようが見れたわ。」


そう言って賢者は自身の座席から身を乗り出して背後を向くと、にやけ顔で付き人の女性に声をかける。


「ソフィア。陛下は『お前にはまだ早い』との仰せじゃと。」


「お、お戯れを。師よ。」


そう言って青い顔をしたままよろめきそうになっている女性。

艶やかな髪を肩まで伸ばし、炎を思わせる赤を基調としたミスティックドレスに身を包み、切れ長な赤い瞳とルージュが印象的な若い魔術師。


酒好きで有名な彼女は、目の前で交わされる会話がどれほど恐ろしい内容なのかを理解できるだけに、驚きと期待と落胆で見事に情緒をかき乱されたようだ。


「ところで、ガレン。お前、今回は付き人は連れなんだか?」


「他の将軍は任務中ゆえ、代わりにレオンを召喚したのだがな。どうやら気分が優れんようで、今朝方断りと詫びの知らせがあった。陛下は何かご存じでいらっしゃるか。」


「む?アメリアや側仕えからは何も聞いておらんぞ。セバス、何か知っておるか?」


「いえ、特に報告はございません。昨晩までについてもお食事も普通にお召し上がりになられております。」


「まぁ、貴族のしきたりと領地の運営について慣れぬ教育課程が始まったからな。心労が祟ってるのであろう。後で父として慰労にでも尋ねてみるとするか。」


「なるほど。ルミナスの血を引く身でも、あの年齢から貴族教育など詰め込まれれば体調も崩すであろうな。我が弟子ながら同情を禁じえん。」


「ほ。あの小僧には過ぎた立場じゃの。」


「今更だ、爺。それについては散々議論した。アメリアの為、最早変えることはせん。後世の為にも我々が全力で支えてやるだけだ。」


「後世のため。のう……? 賢人会が聞いてあきれるわい。」


「陛下も私も、年を取ってしがらみが増えた。かつての若い時分に知らなかった痛みを解りつつも、それを若い世代に伝えられんのは慙愧に耐えんですな。」


そう言ってやや渋い顔をしながら、武人は再び杯を傾けた。



「お三方。そろそろ本題を始めませんと、お時間が。」


王の後ろに控えていた執事長が頃合いを見て3名に声を掛ける。


「そうだったな。セバス、記録は任せたぞ。」

そういって王は立ち上がるとテーブルに手を添えた。


「御意に。」

執事長は深々と礼をすると、数歩退き『魔法陣』の外側に出る。


「第三次席ソフィア・ディ・ブレイズ。()()はお主一人だ、記録は此奴に任せて構わん。陣の中に入れ。」


「心得ました、陛下。」

そう言って賢者の弟子は足元の黒い石材に刻まれた『魔法陣』の内側へと歩み出る。彼女にしては珍しく、やや緊張した様子が見て取れる。


「ソフィア。そう固くならんでええわぃ。お主の魔力量なら、この陣の負荷など物の数ではない。」

そう言いながら老人はするりと立ち上がり、弟子を気遣うように声をかけた。


「はっ、何分未熟者ゆえ。」

自信家のソフィアにしては珍しく、今日の彼女は随分素直で大人しい。

先程の酒の話が効いたのかもしれない。


「ほっほっほ。そうかぇ。」

弟子の反応を笑いながら、賢者もまた眼の前のテーブルに手を添えた。


「まぁこの魔具『円卓』の魔力消費量は有名だからな、私も初めての時は緊張したものだ。なに、私程度の魔力量でも参加できる物だ。気楽に構えるのだ、ソフィア。」


そう言って、武人は立ち上がるとそのままテーブルに手を添えた。


「お気遣い感謝いたします。」

そういって賢者の弟子も歩み出ると、師の横に並びテーブルに手を添える。


「では始めるぞ。」

王はそう宣言すると、テーブルに添えた手に魔力を込める。

一同もそれに続いた。


直後。

部屋は一瞬で全ての魔導灯は光を失い、暗転した室内は完全な暗闇に包まれる。


光のない黒一色、周りに何も見えない『漆黒の空間』。


数拍置いて、ぼんやりと青白い光があたりを照らす。


中央に備えられた円卓が光を放っているのだ。



先程までの薄明かりでは、やや無骨なデザインのテーブルにしか見えなかったが……暗闇に浮かび上がるその姿は先ほどとは違い、明らかに魔術的な意味合いを持つ文字や図形、記号が刻み込まれた異質な物体であると知らされる。


やがて、その円卓の光は、漆黒の床材に刻まれた方陣へと伸びてゆき、更に複雑な文字と図形が刻まれた魔法陣を伝ってゆく。


やがて光は円卓と方陣を埋め尽くした。



王はそれを見届け、口を開く。


「マナは満ちた。いま、この時をもって『円卓』の起動は成った。今この場において、『円卓』に触れる者たちよ、己の意思を示せ。」


王の言葉に賢者が続く。


「我が名は『ルキウス・ステラーノ』。ルミナスの知として真実を語り、この場において語られる全てを真として受け入れる者なり。」


次いで、武人が続く。


「我が名は『ガレン・デ・ヴァローレ』。ルミナスの剣として真実を語り、この場において語られる全てを真として受け入れる者なり。」


次いで、王が続く。


「我が名は『エリオット・ルミナリス』。王として真実を語り、この場において語られる全てを真と受け入れるものなり。」


そして、弟子も続く。


「……我が名は『ソフィア・ディ・ブレイズ』。ルミナスの知に従い仕え、この場における全てを受け入れ『見届ける者』なり。」


すべてのものの同意を得たことを確認し、王は続ける。


「我らは『円卓』に集い、真を語り、真を知る。微塵も飾らず、一切を騙らず、何事をも偽らず。ひたすらに真実の全てを求める者なり。この場に在りし者たちよ、『()()()()()臨むと誓うか?』」


「誓おうぞ。」

「誓う。」

「誓います。」


3人は応えた。


「ならば我も『誓おう。』」


王も応えた。


「『円卓』よ、我らがマナと誓いの意思を持って、この場を成し『闇の中に光を』現し給え。」


王がそう言うと、青白く光る円卓と方陣は、眩い光を放ち始め視界を白く染め上げはじめた。


やがて、目も眩む光は落ち着き。気がつくと辺り一面は白に染め上げられた『純白の空間』へと変わった。



円卓も座席も消え、そこには4名だけが立っていた。




「誓約は成った。」


そういったあと、王は各々を見つめ改めて宣言する。




「さて、では『賢人会議』を始めようか。」


以前、世界の通貨について書きましたね。

1円=1ディル 大金貨=十万 金貨=一万 

銀貨=千 小銀貨=五百 銅貨=百 小銅貨=五十 賤貨=十以下


精霊貨は通常の個人売買では使われません

発行には個人の魔導紋が必須であり、偽造は不可能です。

企業間の大型取引や政府間での契約で用いられる

証券や証文のようなものと考えてください。


下限は1億ディル。

上限は10億ディル。


41~50億円の おさけ。

ソフィアはまだまだ小物

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