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むかし話

 



 むかしむかしあるところに、たいそう恐ろしい魔女がおりました。


 魔女は、ある日突然人々の前に現れ、それにより、平和に日々を過ごしていた彼らの生活は一変してしまいました。


 なんと、魔女は空に分厚い雲を呼びよせ太陽の光の一切を遮り、地上を黒の世界と変えてしまったのです。


 陽の光が届かない暗闇の中では、当然作物が育つことはなく、作物が育たなければ動物達も餌を得ることができなくなり、生き物たちは次々と息絶えました。


 そして、人々は飢えと暗闇の恐怖に苦しむようになり、平和であった世界は姿を消し、食料を巡り争いを起こすものや、魔女に気に入られようと我が子を生贄としてささげる者たちが次々に現れ、世界は一瞬にして混沌の渦に飲み込まれてしまいました。


 そのような中で、もとの平和な世界を取り戻そうとした勇敢なものたちが、果敢にも魔女へと挑んでいきました。しかし、魔女のもとへと挑んでいった者たちの中で無事に帰ってきたものは誰もいませんでした。


 成す術のない日々に誰もが絶望し、諦めかけていたその時、突然分厚い雲で覆われていた空がまばゆいばかりに輝きだしました。


 そのことに誰もが驚き、皆一様に空を見上げます。


 すると、雲と雲の合間から漏れ出した一筋の光柱の中を通って、天から一人の男の子が地上へ舞い降りてきたのです。


 まだ言葉も通じなさそうな、赤子のような姿をしていたその子は地上へ降り立った瞬間、不思議なことにみるみると成長し、あっという間に大人の男性ほどの姿へと変化しました。


 そして眩いばかりの光を纏ったその人は、人々のそばへと近づいてきたのです。


 ただならぬ者の登場に、誰もがそれを敵か味方か測りかねる中、勇気ある若者が彼に尋ねました。


「あなたはいったい何者ですか。もしや、私たちをあの恐ろしい魔女から救っていただけるのですか。」


 彼はその問いに対して頷くと、


 ” われは神の子、名はフェルディナス。汝らの救世主となる存在だ “


 と、そう言葉を紡ぎました。


 そしてその言葉のとおり、彼は魔女へと立ち向かっていきました。


 人々は彼と魔女の戦いを、固唾を飲んで見守りました。


 しかし、彼は強かった。


 人々が何をしても敵わなかった魔女と対等に渡り合ったのです。


 そして、遂に魔女は滅ぼされました。


〈妾は必ずやこの地へと舞い戻る。タネは蒔いた。妾が復活を遂げるとき、それがお前たちにとって、本当の終焉となるであろう!〉


 魔女は最後にこう言葉を残しました。


 しかし、その言葉は誰の心にも響くことはありませんでした。


 神子フェルディナスの活躍によって危機は過ぎ去り、空は太陽を取り戻し、世界は緑を取り戻し、人々は笑顔を取り戻しました。


 人々はフェルディナスの傍へと駆け寄ると、彼へ感謝を述べ、そして勝利の宴を催しました。


 皆がどんちゃん騒ぎのなか、一人天を仰いでいる彼の姿が目に入った勇気ある若者は再び彼に近寄り、こう尋ねました。


「どうして、あなたは私たちを助けてくださったのですか。」


 その問いに対して、フェルディナスは


“ 魔女を倒すこと、それは神の子である我が、真の神となるために与えられた使命であった。そして、その使命は果たされた。”


 そう答えると、地面を強く蹴り再び空へと浮上しました。


 天からは再び強い光が放たれ、一直線に彼へと降り注ぎます。


 そして、彼はこう言葉を続けました。


“ 我はこの日をもって神となる。神となってしまえばもうここへはいられない。さらば人間たちよ、最後にこれを授ける。”


 フェルディナスは、勇気ある若者に一つのリンゴを手渡しました。


“ それには、私の力のすべてが込められている。もし、再びこの世界が暗闇に包まれたとき、それが汝らを救ってくれる光となるであろう。”


 その言葉を最後に、フェルディナスは遥か上空の彼方、神々が住まう世界へと舞い戻っていきました。


 フェルディナスからリンゴを授けられた若者は、その後みなを導きフェルディナスを神として示した一つの国を興しました。


 その国の名は、『ナジャード』


 そう、これは私たちの住むこの国の始まりとなる物語なのでした。


 祈りなさい、すべてのナジャードの民よ。


“神フェルディナス”へ今日の自分があることを感謝するのです。


 決して魔女を許してはなりません。


 今日のあなたのもとへ昨日の命をつなげてくれたのは誰?


 己の命ある限り、神への感謝の祈りを切らしてはならぬのです。


 さあ、そしておねむりない。


 かわいいすべての我が子たち。


 今日が終わりまた明日、笑顔のあなたに出会えるように・・・








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