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すり合わせ

ここは異世界なのかもしれない。


そんな荒唐無稽な…しかし事実として…気が付いたら自分は見知らぬ海に放り出され筏で漂い、板切れに手が触れたと思えば筏は大きくなり、拾った男の持ち物である革袋は拡張袋という名の見た目以上の容量がある袋で魔法陣が描かれていて、綺麗だったデカい鱗は魔力とやらを使い男を死の淵から救い上げ…。

自分の居た世界、日本、地球とは全く違う現象が起きているのは事実だ。

だとしたら導かれる答えは「異世界」。

これしか考えられない。




「おーい!兄さん!大丈夫っスかー!」

俺は思考の海に没頭していたらしい。少し心配そうな顔をした男に声をかけられた。

「……あぁ大丈夫だ」

大丈夫じゃないかもしれない。

ただ、今はまだこの男と会話をし情報を集めるのが正しいことだと思った。

「えっと……君は……」

「あ、申し遅れたっス!俺、ディレーンのアイムって言うっス!商船で料理人をしてたんスけど船が襲われて船が沈んじまって、流石に今回ばかりは死ぬかなと思ってたんスけど、気が付いたら兄さんに拾われたって訳っス」

「ディレーンのアイムさん…。船が?襲われて?災難だったな…。今回ばかりはって、船が襲われるのはそうそうあることなのか?」

「アイムでいいっスよ。そりゃ海だからまぁ襲われるっスよ。陸でも山の方はそうっスよね。兄さんほんとどこから来たんスか?」

「えっと……俺は、どこからと言うと説明しづらいんだが…そうだ、俺の名前…雨宮上総って言うんだ。上総と呼んでくれ」

どこから来たか。ここではない世界から来ましたとは説明しづらい。どう説明したらいいのかもわからない。なんとなくごまかした俺は、やっと自分の名前を名乗った。

アイムは「ディレーンのアイム」と名乗った。どうもこれは苗字ではなさそうだ…考えるに出身地か何かだろう。

となるとこの世界で苗字があるのは一般的ではないのかもしれない。

「アマミヤカズサ…カズサ兄さんはアマミヤのお方なんスか?!そそそそんな偉い方がどうしてこんな海で漂ってるんスか?!」

なんだか思っていたのと違う反応が返ってきた。

「いや、その俺の苗字は雨宮だけど…そのアイムの言う雨宮のお方?ではないよ。苗字はあるけど、関係ない」

はずだ。いや、関係あるはずがない。この世界の人間ではないのだから。

「しかし、アマミヤのお方とは関係ない…のにアマミヤという家名があるんスか…」

「お、俺の居たところでは普通に皆家名があったんだ。俺もその辺の一般人だよ」

「はぁ~それは…なんかビックリっス。ディレーンとかその周りではアマミヤのお方は雲の上のお方スから…」

「まぁ所変わればなんとやら…。それより、大体の自己紹介は済んだし、もっと大事な事を話し合おう」

アイムは少しマイペースなのかもしれない。

右も左も北も南もわからない海に漂う筏の上で、いつまでも自己紹介をしている場合ではない。

大切なのは

「まずは、ここがどこなのかわかるか?」

相変わらず目印になりそうな島の影も形もない。おかしなことに太陽はずっと真上にある。

頼りになりそうな物は、俺には見方がわからないアイムの首にかかっているこの世界のコンパスらしきものだが…。

「ん~そうっスねぇ…俺が乗ってた船が沈んだのがバロスチアから20リィカ位行った辺りだったスけど…」

アイムが呟いた単語がわからない。バロスチアは地名だとして、20「リィカ」?距離を表す単位だろうか。

そんな些細な疑問は今はしかしおいておこう。

アイムはコンパス(?)を見つめてぶつぶつ呟いている。

「アイム、それは?やっぱりコンパスなのか?」

「コンパス?これはリタボフィアっていう魔道具っスよ。…もしかしてこれの事も知らない感じスか?」

「あぁ…すまん、知らないんだ…別の似たような道具は知ってるが…。それでそのリタボフィアは何の道具なんだ?」

リタボフィアなる魔道具とやらが、この海にただ漂っている状況を打開できるような道具であればいいのだが。

「このリタボフィアは登録した所との位置関係を示す物なんスけど…ダメっスね。さっきからやってるんスけど、反応しないっス」

「…つまりその、ディレーンを登録してあったが何らかの原因でその位置がわからないって事か?」

「ディレーンを登録してた訳ではないスけどまぁそういう事です。いくつかの寄港地を登録してあったんスけど、どこにも反応しないんス。壊れた訳ではないと思うんスけど…」

唯一のこの漂流状態を打開できそうなリタボフィアだったが使えないということがわかり、いくばくかの疲労感を覚えた。

だがこのままここで漂っている訳にもいかない。夜だって来る。

どうにか海から脱出したい。

それこそアイムのようにいつ何に襲われるかもわからないのだ。

「なぁ、その…リタボフィア、適当な所を登録してそこを示させるみたいな事は出来ないのか?」

「えぇ?!そんなこと考えたこともなかったスけど…」

口をついた言葉だったが、それはいい考えのように思えた。

登録している所がダメならば、新しい所を登録すればいいのでは?

「というか具体的な場所はあるんスか?」

「ある。俺の居た場所だ。だからやってみよう。使い方を教えてくれないか?」

「ええ…まぁ、ものは試しっスよね。場所の登録の仕方はこれをぎゅっと握って、登録したい場所を思い浮かべるんス。それで登録できるはずっス」

魔道具と言うからには使い方が難しいのかと思ったが、意外と感覚的なようだ。

俺はアイムから渡されたリタボフィアを握り、行きたい場所を思い浮かべた。



俺の行きたい場所。

戻りたい場所は。

勿論、この海に来る前に居た、キャンプをしていたあの山だ。




ぎゅっと握っていたリタボフィアがぽわっと一瞬温かくなった。

果たしてリタボフィアは。


赤い石の付いた針がくるくると回りだし、





ある方角を指して、






ぴたりと止まった。

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