07 未始終端
「随分とハマったね、華恋」
「えーそうね、悠理」
「PKはしないの?」
「RPは切り分ける、当然の話。BoHでは最悪のPK、DBOでは御狐系砲台魔導士。Do you understand?」
夕食の準備をしながら悠理と話す。なんだかんだで、今落ち着いて暮らせるのは良いことと思う。
「あ、そうだ、悠理? お客が来るから準備宜しく」
「成る程。そういう訳で大鍋で料理作ってるのね」
大鍋にカレーを作成中。とある魔術結社直伝の製法で作った特製カレーである。
◇
「平穏な日常を祝って、乾杯!」
「「「「乾杯」」」」
なお、誰も酒を持ってない。酢をお猪口に注ぐ変人と、炭酸を湯呑みに注ぐ阿呆と、普通にジュース/お茶を飲む馬鹿。酒宴のノリでアルコールを飲まない卓である、まあ当然ではあるが。
「やぁー、平穏とは言い難いけどねぇ!」
「これ自粛対象じゃね?」
『ナンノコトダロウナー』
疫病流行中に5人で宴会=濃厚接触、まあアウト。
「あら、面白そうなことしてるじゃない」
「本当にごめんなさい、お馬鹿が邪魔して……」
角から穴が開き、更に二人入ってくる。片方は雲母凍華、もう片方は宵咲暁。凍華はともかく、暁は傍若無人な正真正銘の趣味人間。だが、まあ……世話になった以上邪険にも出来ないし、嫌いじゃあない。
◇
「なあ、華恋。大丈夫か?」
「恐らく今のところは。悠理は、私は悠理に迷惑を掛けて貰わないといけない、というのを着実に果たしてるから、高校から大学にかけての騒ぎ再来はないと思う」
悠理は一回自殺しかけた。他人を助けようとして、走り回って、その挙句に自分一人でその他の人の分の呪い全部を身に背負った。
すんでのところで、チルノ……古谷古都に発見され、暁の介入によって呪いは解かれた。それは大きな借りだし、我らがゲーマー友達の意外な一面を知るきっかけにもなった。
そして、こんな平穏な暮らしに導かれた。
「多分、あのタイミングより遅いタイミングで、悠里の性質が発動していたら、もっと多くの呪いを抱え込んだはずだ。まあ、そういう意味では、運が良かった」
「そいつは重畳」
この世界は正直なにかがおかしい。真面目に働く人が報われず、私みたいな、他人の金を掠め取ることをお仕事とする資本家が最も儲かる。社会を破壊する勢力があり、それに対抗する勢力もいるけど、それを誰も知らない、社会の基幹部分を支える人々を全く知らない。
それでも、ゲームをして暮らせるこんな平穏は何事にも替え難く、偽りであろうと、やはりここにあって欲しいものだ。
◇
数を数える者、運命を吸い込む者。時代の小さな、されど範囲の大きい影響を齎すキーなれど、一時の平穏を楽しむ権利はあり。その災厄はいずれ訪れる。
えー、一応完結です。まあ元から短編のつもりでしたし仕方ないですね。続きが欲しい場合はコメント下さい、続きのエピソードも作ります。
あと、ラストで人名出したり、重そうな過去の設定出したりすみません。その辺に関係する話はまた後で出していく予定ですので、楽しみにして頂けると幸いです