実験の街 2
食堂を探してジルは歩き出した。
門から入った通りは他の街とあまり変わらない建物が並び、他の街より大いに賑わっていた。
「お、あれを見なよシルフィー。」
ジルの指の先には、カフェで給仕をしている機械があった。
「へぇ、街のいたる所で魔動人形が動いているなんて珍しいね。魔石の生産地でも近くにあるのかな?」
「いや、この街の近くに霊脈は通ってないから魔石が生まれるはずは無いよ。」
「じゃあ、なんで?」
「まぁ、考えてみるといいよ。」
ジルがそういうと、会話は途切れた。
大通りの雑踏の中を滑るように進む。
「いらっしゃいませー。1名様ですか?空いてる席にどうぞー。」
店に入ると、少女の高い声ががやがやした食堂の中に響いた。
その声を聞き、ジルは隅の方の空いていた席に座る。
「ここでよかったの?」
シルフィーが顔を顰めながら言った。
この店の主な客層は冒険者のようで、筋肉がついたむさい男たちが店内に多く見受けられる。
「冒険者に人気の店っていうのは安くて美味しいところが多いんだよ。それにここは宿も経営してるっぽいし、一石二鳥さ。」
「別にお金なんて気にしなくてもいいじゃないか。」
「まぁ、なるべく出費を抑えた方がいいからね。」
「貧乏性め。」
「否定はしないよ。」
「美味しい食堂と宿が一緒に見つかってよかったね。」
「うん、ここは大当たりだったね。看板娘もかわいいし、料理も美味しかった。僕はもう満足だよ。」
ジルは満足そうに顔を緩め、ベットに倒れる。
「まったく、本当に君は3大欲求に忠実な男だね。」
シルフィーは呆れたように頭に手を当てそう言う。
「まぁ、人間だからね。3大欲求に忠実でないとストレスが溜まるだけさ。」
「別に君にとっては趣味みたいなものだろうに……」
「趣味も出来なきゃストレスは溜まるさ。」
「そういうものかい?」
「そういうものさ」
「ふーん」
「まだ君にはわからないだろうけどね。」
ジルは悪戯っ子のような笑みを浮かべ納得していないシルフィーにそういった。
「まぁ、いいけど。それより、明日はどうするんだい?」
「明日は、少し気になるところがあるからそこに行こうと思ってね。」
「どんなところ?」
「秘密。」
「どうして?」
「明日までのお楽しみさ。」
「ふーん。」
「じゃあ、おやすみシルフィー。」
「おやすみジル。」