目覚め
よろしくお願いします。
風が吹いている。ちょっと遠いけど、今日は海に来てみた。手を前に出し、腕を伸ばすと、指の間をすり抜けていく。なんだかこの感覚が凄くいい。
「散歩は朝に限るよなあ〜。」
僕はやっぱり、一人が好きだ。朝の散歩も不意に出る独り言も、なんか心地いい。友達とバカな話をする時とはまた違う楽しさがある。
「旅人とかっていいよな。ずっと一人でこんな感じで、色んな景色を見るなんて、最高じゃん。まあ、この世界にそんな職業存在しないけど。」
すると、突然、朝日が僕を包み込んだ。
文字通りの意味で。
眩しさに目を閉じた。
へ?
何??
*
「はっ!ソルト様が目を覚まされました!」
その声を聞いて目が覚めた。メイドらしき人物が急いで部屋を出ていった。
僕はあのメイドを知っている。フルートという名前の女性だ。あれ??どういうことだ
「母さんの声が聞こえるかな?」
「父さんだぞー!」
考え事にふけっていた僕は、改めてその声の主を見る。僕はこの二人を知っている。ソルトの母と父だ。
あれ??どういうこと?
「ここは、、、」
頭がごちゃごちゃとしており、絞り出た言葉がこれだった。すると、ベットで寝ている僕をのぞいている二人は顔を見合わせて戸惑っている。
「何があったか覚えていないか?」
男性が言った。
「、、、まったく。僕は、誰ですか?」
バタンッと大きな音が聞こえた。あと、「奥様!?」という叫び声も聞こえた。
「私達のことを覚えていないか?」
男性は驚いていたが、続けて質問して来た。
「えっと、ソルトという人のお父上?」
男性は安堵の表情で「そうだ。」と答えた。
そして男性はソルトはお前だと続けた。
僕はソルトじゃない。えっと、僕は、あれ?誰だっけ。その瞬間、ソルトとしての記憶が頭に流れ込んできた。
「僕はソルト?」
男性、いや、父さんは頷いていた。
「お前は少し混乱しているのだろう。お前の名前はソルト。2日前、急に倒れたんだ。だが、こうしてまた、目が覚めてくれて本当に嬉しいよ。」
父は涙目でそう言った。
うーんと、こういう時ってどうすればいいんだろう。
「僕も嬉しいです。」
とりあえず、こう言っておいた。