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仕組まれたパーティーの目的

「うぅ…苦しい…たすけてくれ」


俺は最後の力を振り絞り、助けを求めていた。


「やりすぎだろ、まじで死ぬ…」


「言葉遣いが悪いですよ。それに簡単に死ぬなんていうものじゃありません」


苦しむ横でシエナは涼しそうな顔でさらに力を強める。

シエナが力強く紐を引っ張るたびに、俺の身体に付けられたコルセットが締まり、上半身と下半身が2つに分かれてしまいそうな程の痛みが走る。


「はい、終わりましたよ」


「うぅ…苦しい。もう少し緩くはならないのかよ…」


「この国の姫ともあろうお方が正しい装いをせずにどうするのですか?」


コルセットの紐をしっかりと結びを終えると、着替えを手伝っていたメイドか大きな鏡を前に移動させる。


鏡には綺麗に髪を結って、うっすらと化粧をしているアリシア(俺)の姿があった。


さっきまで俺を苦しめていたコルセットも鏡で見れば、腰、お腹は細く見えて締め上げた効果が一発で見て取れた。


それにドレスは派手な真っ赤でひらひらのうねうねの言葉で表現できないほど豪勢なものであった。

流石の俺でもこの衣装は特別なものだと感じ取れた。


「さあ、これで完成ですよ」


シエナが一瞬鏡の前に立つと、俺の頭にティアラを乗せた。


頭の上で輝くティアラはより一層雰囲気を華やかにして、見るものを惹きつける。


「お綺麗ですよ。アリシアお嬢様」


温かく優しい声がシエナから発せられた。


「おい、シエナ…今から何がっ…」


何故か寂しげなシエナに俺は声をかけたが、その声を掻き消すように彼女は振り返った。


「それでは私たちは失礼します。ヴィシュル様が来るまで少々お待ちくださいませ」


頭を下げて部屋を出て行くシエナたち。1人残された俺は女神を呼んでみた。


「おい、ルーシィいるんだろ?」


「なんじゃ、わしも忙しいんじゃぞ」


やっぱり姿を消していただけだったか、すぐに返事が返って来ると、あくびをしながらルーシィは姿を現した。


「今から何がはじまるんだ?なんか雰囲気おかしくないか?」


「さあ、わしはなんも知らんぞ笑」


明らかに何か知ってるような笑みを浮かべるルーシィを問い詰めようとしたが、彼女に聞いたところで答えそうもないので諦めた。


すると、思い出したようにルーシィは魔法を使うと、俺の手には1通の手紙があった。


「アリシアからの手紙じゃ」


俺は手紙を開けて読んでみた。


「っておーい、なんでいきなり俺こんな罵倒されてんだよ!」


「ん?当たり前じゃ。第一印象がひたすらおっぱいを揉む其方だったからな」


「やっぱりかよ…もうちょっと良い所あっただろ?」


「引きこもりでニートの其方にか?」


「ちょっとそれは言わない約束じゃん!」


「約束などしておらん。さっきにコルセットはアリシアから罰と思うのじゃな!」


「そりゃないぜ!こんな素敵なおっぱいがあるのに、揉んじゃいけないのかよ!」


俺はまたも胸に手をやり、数回揉み心地を確かめる。やっぱり最高だ。


「お嬢様、会場の準備が整いましたので、お迎えに上がりました。失礼致します」


ドアの外から声が聞こえた。一瞬驚いたが、ヴィシュルの声だった。

仕事モードだからか先程のポンコツな対応とは違い、1人前の騎士の顔がそこにはあった。


「よくお似合いです、お嬢様。それでは向かいますよ」


俺の半歩後ろを歩きながらもしっかりとエスコートしてくれ、迷わずに会場にたどり着けた。


いつの間にか日は沈み、すっかり夜になっていた。会場に近づくほど、賑やかな声が増してきて、その賑やかな声は不思議と俺の気持ちを不安にさせていった。


「それで今日は何のパーティーなんだ?」


「何を仰いますお嬢様。今日はお嬢様の16歳の誕生日パーティーでございます」


「へー、誕生日パーティーにしては豪華すぎない?」


「今日はお嬢様がお嫁に行けるようになった特別な日なのですから、当然です」


「ん?お嫁…?」


会場に着き、ステージの袖のようなところに待機させられると、会場にアナウンスが響き渡る。


「皆さま、大変お待たせしました。本日の主役、ウルクール第一王女アリシア様の登場でございます」


アナウンスが終わると、ヴィシュルが俺の足元に膝をついて、深々と頭を下げる。


「行ってらっしゃいませ。お嬢様」


異様な盛り上がりを見せる会場の視線が俺に集められていた。


一歩踏み出すとそこは高い階段の上のステージになっており、真ん中には椅子が用意されていた。


会場は割れんばかりの歓声と拍手で溢れており、俺が椅子に座れば、口々に「美しい」やら「素晴らしい」といった賞賛の声が聞こえる。


そして異様な雰囲気の原因がわかった。見下ろすように会場全体を見渡すと、男性しかいないのだ。


もちろん、使用人の姿はちらほら見えるが、パーティーの参加者と思われる人は全員高そうなタキシードを着て、こちらを見つめている。


「おいおい、これってまさか…?まじでこんなことあんのかよ…」


愕然とする俺に横から声がした。もちろん他の人には聞こえない女神の声。


「まさかのそのまさかじゃ。このパーティーはアリシアの婚約者を探すためのパーティーじゃ」


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