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異世界へようこそ

「はぁ…学校…行くか…」


「ああああぁぁぁ、やっぱ無理だぁ!学校なんて行ける訳ないじゃん!今何時だよ?7時半?笑 登校時間早すぎるんだよなぁ!来て欲しいならせめて昼からとかにしろよ。

それに数学、化学?なんの役に立つんだよ?そんなの大学とか行くやつだけだろ?普通に就職する俺には必要ねーじゃんかよ」


俺は教科書がパンパンに入った黒のリュックを床に投げて、ベッドの上に飛び込んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「君はこの世界が間違ってると思ったことはないか?」


「君は生まれる世界を間違えたと思ったことはないか?」


俺は寝ぼけているのだろうか?頭の中に女性の声が聞こえてくる。


「君は人生をやり直したいと思ったことはないか?」


何度も何度も優しく言い聞かせるように誰か呟いてくる。

何度も何度も。


そのうち俺は耐えられなくなり、苛立ちを隠そうともせずに飛び起きた。


「うるせーなぁ!そうだよ、この世界がおかしいと思ってるよ!出来ることなら、異世界とかに飛ばしてくれよ!」


「だから、その異世界とやらに転生させてやると言っておる」


「は?…今なんて?」


「だから、どうしようもない其方、佐藤勇人に異世界転生のチャンスをやると言っておるのじゃ」


呆気に取られた俺は何故か土下座をするように下げていた頭を上げた。


目の前真っ暗な闇の中にどこからか光が当てられ、照らし出されている1人がけのソファーに美しい女性が座っていた。


彼女はサラサラの長い金髪に、少しきつめだが、整った顔立ち、大人の妖艶な笑顔を浮かべている。


そして何故か女子高生がよく着ているデザインのセーラー服に片手には少女漫画を持っている。


すらっと伸びた白く細い足を組み替える仕草に太ももの上でミニスカが躍るように動き、チラチラとその間からパンツが見え隠れする。


「あの…コスプレっすか?」


ツッコミどころ満載の彼女はどこからつっこんで行けばいいのかわからずにとりあえず本能的に聞いてみたいことを聞いてみる。


もちろん赤面しながら、横目で彼女のパンツを覗きながら。


「バカモン!」


空からいきなり特大の金属製のたらいが降ってくる。

咄嗟のところで俺が避けるとたらいは派手な音を立てて落ちると、浄化されたように消えてしまった。


「ごほん、わしの名はルーシィ。風を操る言わば女神というやつじゃな」


たらいが外れたのが恥ずかしかったのか、少し早口で自己紹介を始める自称女神様。

20前半くらいの少しお姉さんくらいかなと思っていた顔が焦って崩れるのを見て、おかしくなり俺は笑い出してしまった。


「おい、何がおかしい!それより話は聞いておったのか?それではアイテムを選べ!」


「は?アイテム?」


女神は説明をまったく聞いてなかった俺を不服そうに見ると、女神様の足元を指差した。

すると、魔法のように数百枚のカードが浮かび上がってくる。


「カードを1枚めくってみよ」


俺はカードを拾うために女神様に近づいて、四つん這いになり、カードを拾い始める。

しかし、1番の目的はカードより女神様のスカートを覗き込むことにあり、カードを拾うのに手こずる演技をしながら、スカートを覗く。


「あの…この…カードって………はぁ!そんなのありかよー!!」


俺の作戦は不自然な光によって阻まれた。


「どうしたのじゃ?其方らの好きな漫画というやつには男はみんな不自然な光が大好きだと描いておったが?」


「あのねー…光って言うのは見えないから良いって言うのは一理あるんだけど…

リアルならどんなことになってんのかなぁ?って想像したり、絶対に描いちゃいけないとこをギリギリまで子供達に夢を見せてあげようとする作者の努力とサービス精神に感謝するためのものなの!」


「じゃあ光を外した方が良いのか?」


「たしかにこの場合は俺には見えた方がいいんだけど…もう堂々とパンツ覗いちゃってるし、それ俺に聞くの?」


「其方が外せと言っておるのじゃろ?其方に確認を取るのが筋ではないか!」


「それもそうなんだけど、俺の罪悪感とかも考えて欲しいって言うか…それにパンツを覗くのは、その行為によって恥じらう美少女のリアクションも含めて1つだから!」


「じゃあやっぱりあった方が良いのじゃな」


「いやその…ありのタイプというわけじゃ…なしのタイプで、女神様が隠すスタイルって言うか……いや、光ありでお願いします…」


俺はこの状況でなしタイプを選んだら、どう言い訳しても最低な変態になってしまうと思い渋々女神様のパンツを諦める。


「そんなことよりカードを集めるのじゃ!」


俺は拗ねたようにその場にあぐらをかいて、手を伸ばして届く範囲のカードをかき集め、1枚をめくって見る。


「聖剣エクスキャリバー?」


もう1枚めくって見る。


「デュランダル、こっちはグングニール。もしかして、これはもしかするやつですか!?」


さっきまでの顔が嘘のように晴れて、俺は光り輝く瞳で女神様を見つめる。


「そのもしかするやつじゃ。わしは英雄を異世界転生させたいのじゃ。例え異世界でもクソニートなんて求めとらん!」


若干引っかかる言い方ではあったが、俺の頭はなんのチート武器を持って行くかでいっぱいで夢中になってカードを集めていた。


「おーい、まだ決まらんのか?優柔不断な勇者も大概残念よの」


「いやだって、武器以外に運がめっちゃ良くなるとか死に戻りが出来る能力とかあるんだぜ。こんなの迷うしかねーだろ!」


それからどれくらいの時が経っただろう。俺は目の前のカードを苦渋の決断により、残り数枚まで絞っていた。


「もう飽きたのじゃ。其方のアイテムはこれでよかろう」


女神様が1枚のカードを不思議な力で浮かせて、俺の前に出した。


「聖剣エクスキャリバー。たしかにカッコいいし、候補には入ってるけどよー、でも…」


「うるさいのじゃ!じゃあ次に行くぞ!まだ手続きはおらわっとらんのじゃぞ」


いやいや、女神様が転生する準備を手続きなんていうなよと思いながらも、目の前にスクリーンのようなものが出てきて、映像が映し出された。


映像には如何にも育ちの良さそうな服に着飾られ、異世界ならではの白髪の長い髪をなびかせる美少女が映し出されていた。

さすが異世界ファンタジーと叫びたくなる程の圧倒的な美しさを放つ彼女から目が離せなかった。


「うわっ…まじかわいい。この娘だれ…?」


「其方は頭も悪いくせに感も働かんのじゃな」


呆れた顔をして女神様は続ける。


「この娘はアリシア。風の国、ウルクールの第一王女にして今から異世界転生する其方のヒロインじゃ」


「は?ヒロインとの運命的な出会いとかさせてくれないのかよ!」


「当たり前じゃ!偶然曲がり道を曲がったら、美少女とぶつかってとか、困っている時に彼女が助けてくれるなんてあるわけなかろう」


「なんでだよ!ちょっとは考慮してくれよぉ!」


「無理じゃ。其方がカード選びにもたついている間にチュートリアルの時間がなくなってしまったわい」


「え?じゃあこのままスタートすんの?」


「とりあえずこの世界では国は4つに分かれており、風の国はピンチなのだ!アリシアを任せたぞ!」


「いや、ちょっと、えー!ちょっ…」


女神様の投げやりな説明が終わると、急に何も見えなくなり、意識を失った。



ーーーーーーーーーーーーー

「うーん、あの女神のやろう…頭いたっ」


数時間立ちくらみが続いたような気持ち悪さに俺は頭に手を当てた。


「ん…?」


指にさらさらとした細い髪が触れた。

俺は理解出来ずに咄嗟に自分の手を見つめた。ゴツゴツした感じはなく、白く柔らかく白魚のように綺麗な伸びた指。爪の先まで洗練されており、綺麗な爪には薄いピンク色が乗せられていた。


「なーるほどね。異世界のでの俺の姿は美少年で、お姉ちゃんたちに悪戯されて可愛がられてるわけね」


とりあえず立ち上がろうと手をつくと、やたらとふかふかのベッド、軽いが暖かく、金持ちの絨毯のような刺繍が入った布団。

仕上げにベッドカーテンから薄っすらと光が差している。


「ひょっとして、かなり良い家柄って設定か?あの女神、なかなかいいとこあるじゃん!」


邪魔なカーテンを開けると、寝室には広すぎる華やかな空間が広がっていた。ソファーに椅子に全てが光り輝き、触れてはいけないような気がする。


キョロキョロと周りを見回しながら、ドアの方へ歩く。

きっと側から見ると、すっごい挙動不審なのだろうが、今の俺にそんな余裕はない。


「おい…ちょっと待ってくれよ。これはやりすぎだって女神」


心なしか歩く歩幅も小さく、足に力が入りにくい。

やっとの思いでドアまでたどり着くと、ドアノブに手をかける。


ふと横に動くものを感じた。

ドアの横には鏡があったのだ。それも姿見ほど大きいものだ。


一目見て俺は動きを止めた。

鏡には可愛い白髪の美少女が写っており、こちらを見つめている。思わず顔を赤らめる俺に彼女も頬を赤く染める。白い肌に赤が映えて可愛い。


「うわっ…まじかいきなり両思いキタァァァァ!」


鏡に向かって叫ぶと、彼女も同じように口を大きく開けていた。


もう薄々どころか状況を理解しているが、気付いてないフリをしながら


「自分の胸なら揉んでもいいんだよな?自分の胸だしね!」


鏡には美少女というにはあまりに残念なにやけ顔が写っているが、気にせず胸に視線を落とす。


異世界のドレスなのだろうか、胸がパックリと空いていて、そこからは白い肌が覗き、2つの膨らみの間には深くて暗く、思わず指を入れたくなるほどの隙間が出来ている。


さらに胸のあたりには不自然な重みがあり、足元が見えない。


両手で胸を持ち上げるように優しく赤ちゃんを抱き抱えるように触れて見ると、そこには経験したことのない優しさが愛が柔らかさと反発に変わって戻ってくる。


「って俺、ヒロインになってんじゃねーか!」


胸を鷲掴みにしながら俺はそう叫んだ。




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