約束
明るい部屋でハッと目覚めた――。
勢い余って、足で蹴っ飛ばしたのが……コタツの脚ではなく旦那の足だったのに気付くのに数分を要した……。
「はっ! やっぱり……夢オチ!」
――これって、お約束?
「イテテ……、なに寝ぼけたこと言ってるんだよ」
蹴られた部分を手でさすりながら、旦那が私を見つめている。
コタツに入り、座椅子に座ったまま私は……ウトウトしていたらしい。長い長い夢を見ていた気がする……。
久しぶりに見る私の旦那に懐かしさを感じてしまう。私の作った夜食の親子丼を、さっきまで涙を流しながら食べていたのを思い出した……。
「……あなた、まだ泣いていたの?」
涙もろいというか、女々しいというか、ちょっと涙スイッチが一般人とズレているんじゃないかしら。
「……お前こそ、頬っぺたが涙でボトボトだぞ?」
――え?
頬から顎にかけて濡れた跡がある。
「なんか夢でも見ていたのか……」
……ポコポコ。チョロ。
そんな音が聞こえた気がした。慌ててトレーナーの袖で拭く。
「――ううん。なんでもないわ。ちょっと目にゴミが詰まったのよ」
……つまらない夢を見ていただけよ……。私の涙スイッチも……ヤバいかもしれない……。
「それを言うなら、目にコミが入っただろ……」
机の上に置いてあった残った缶ビールを飲み干し、旦那が食べ終わった丼とコップをお盆に乗せて立ち上がる。洗い物だけは済ませておこう。もう時計の針は一時を過ぎていた。明日も早い、布団に入って早く寝よう。
ジャーっと流し台に水を流して、丼と箸とコップをサッと洗う。
んごごキューン!
排水管は……ご機嫌のようだわ。
ひょっとすると、私が知らないうちに掃除をしてくれているのかしら……。
……まさかね。
チラッと旦那の方を見ると、よほど痛かったのだろうか……蹴られたところをまだ手でさすっていた……。
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