ループ
「また詰まってるわ、掃除しておいて」
「なんでだよ! この間、掃除したばかりだぞ!」
……?
「ポコポコ、チョロ?」
え? どうしてまだ私、排水管なわけ?
――詰まりが取れて、この呪いのような転生もハッピーエンドになるんじゃなかったの?
「なんで改善しようと思わないんだ!」
「やってるわよ! あれから私がどれだけ気を遣って洗い物をしているか、知っているの?」
「じゃあなんでこんな直ぐに詰まるんだ――、まだ一週間しか経ってないぞ!」
「知らないわよ! 排水管が悪いんじゃないの」
――!
「なんだと!」
「ポコポコー!」
「いつも私のせいばかりにして、いつもいつも偉そうに! そんなに私のせいだって言うのなら、あなたが洗い物をしなさいよ!」
そーだ、そーだ!
やれ、やれー!
「食洗機だって買ってくれないし――友達のところで食洗機がないのはうちだけよ! 毎日毎日、当然のように私が手洗いして、手だって荒れ放題! 仕事だって、あなたはいつもいつも疲れた疲れたって帰ってくるけれど――、
――あなたの方が稼ぎが少ないじゃない――!」
――!
「なんだと! もう一回言ってみろ!」
今にも手を上げそうな形相で男が睨みつけるが、女はまったく動じていない。それどころか、
「何回でも言ってやるわ! あなたの方が稼ぎが少ないのに、なんで私ばかり苦労しないといけないのよ!」
「……ポコポ、チョロチョロポコポコチョロ?」
「うるさい! 排水管は黙ってなさい」
「……ポコポコチョロ……」
男は勢いよく扉を開け放ち、怒鳴った――。
「出ていけ! お前の顔なんて二度と見たくない!」
「ええ、出ていってやるわ! その詰まった排水管とイチャイチャしてなさい!」
「……ポ」
怒った女は何も持たずに出ていった。なんか……詰まったままだったのに、スッとした。いったい私はどっちの味方なのだろう。
どっちでもいいわ。
女は何も持たずに出ていったのだから、どうせ直ぐに帰ってくるわよ。
……これは、排水管の……菅よ。