違和感
コポコポコポコポ……。
なんだろうこの感じは……。チョロチョロ流れていく水の音が心地よいのに……違和感が拭いきれない――。
口と喉が詰まり、息苦しい不快感――。
脂身だらけの豚カツを三食べたような膨満感――。
一週間以上……便秘した時のような残便感――。
――ここは? 私はいったい……。
ゆっくりと目を開けようとするが、真っ暗で何も見えない。ていうか、目がない。触ろうとするが……手も足もないことに気が付く。
私は……何なのかしら。
ひょっとして……つまらない物になったのかしら……。
隣に住むおばさんが以前、「つまらない物ですけれど……」と言って、ハワイの土産を持ってきてくれた。大きく口を開けた木彫り風のプラスチックの人形……。受け取りたくなかった……。せめて食べ物だったら良かったのに……。捨てるに捨てれず、今も玄関に禍々しく飾られている。
そんなつまらない話は置いといて、誰か私を助けて――。体が固定されていて動けない。そして苦しい……んだと思う。身体がいつもと違う不調を訴え続けているもの。胸のところがスーッとしないのだ。何かが詰まっている感じだ――。
ひょっとして……私。詰まっているの?
つまらない物なのに……詰まっている?
つまらないものなのに……詰まっているのが……ひょっとして面白いの?
詰まっちゃいけないものが……詰まっているのに……面白いというの――! 酷おい!
「ポコ、ポコポコポコ! チョロチョロ~!」
ハア、ハア、ハア……、今、私なりにかなり怒鳴ったのに……詰まっているせいで、ぜんぜん迫力が出せてない。悔しい~!
記憶を持ったまま、ある日突然、まったく違う物になってしまう……これって、もしかして、
転生――?
巷で流行りの、転生したら「ホニャララ」になったってやつ?
「ポッポコ!」
だったら!
「ポコポコ、チョロチョロチョロポコポコ~!」
どうして、悪役令嬢じゃないわけ?
「ポコポ……、ポコポ、チョロチョロポコポコ~!」
せめて転生するなら、……蜘〇やスライ〇の方がマシよ!
――まさかの台所下の排水管だなんて――!
え? なんでそれが分かったのかって? 分かれいーでか! 人間の時だって、生まれた瞬間に、「あ、私、人間に転生したんだわ、オギャー」って、分かったでしょ!
これは……バチが当たったのよ……。
この世に神様がいるのなら……謝りたい。わたし以外のみんなも、必死に生きているってことなのよね? 排水管も……生きているのよね?
やばいわ、自分の言っていることが……チグハグ過ぎる。「僕らはみんな〜生きている〜」って歌にだって、排水管は出てこない――。
ミミズだーって、オケラだーって、排水管だっーて〜! みんなみんな、生きているんだ友達なんだ~……。――友達なんかじゃない! 排水管は生きていない……。語呂も悪い……アメンボに申し訳ない……。
薄暗く、生暖かくてジメジメしている。不思議ね、五感を感じるものなんて、何も付いていないのに、なぜかそう感じてしまう。
わたしは排水管に取り憑いた霊のようなものなのだろうか。
……それなら、せめて……幽体離脱させて欲しいと願うわ。