魔法少女スタート?
あの奇妙な妖精さんと契約して私の生活はガラリと変化した。
とは言うもののあの謎少女と対面以来周りで魔法少女らしいことは何も起きていない。ただあのウザめの妖精さんに呆れつつ日々をおくっている。
ところが今日そんな日常に転機が訪れたのだった。
「喜びたまえ久遠ちゃん!」
ここは人もまばらになった放課後の教室。彼は堂々と教卓の上に仁王立ちし、そう高らかに宣言した。見える人間がいないのをいい事にやりたい放題である。
流石に今この発言に突っ込んでしまえば1人で喋りだすヤバイ人だ。私はカバンを持ってさっさと教室を後にした。
近くに人がいなくなったところでようやく私たちの会話はスタートする。
「で、何を喜べばいいんですか? まあ9割以上の確率で嘆くべきことでしょうけどね」
「本当に毎回辛辣だなあ、もう。 でもいいよ。今日は!何と!君に!魔法少女としての初仕事があるんダゾ☆」
この時の私の顔は想像に難くない。出来れば穏やかなまま何も起こらないでほしいという願いをこの妖精が聞き届けてくれるはずなどないのだ。
「大丈夫だよー。今回は低級モンスターだし、ビギナー向けだから初戦闘でもバッチリ勝てるよ」
違うんだ私はそんなことを心配しているんじゃない。
「でね、僕も前回からいろいろ考えたんだけど、やっぱりコスチュームはあった方がいいよね」
「いや別に私はなくても全然構わないんだけど」
「ということで僕もリサーチしたんだよ
じゃあさっそく鈍器ホーテに行こう!」
噛み合わない会話に慣れつつある自分に恐怖を抱き始めている。いけない、いけない
それにしても鈍器ホーテか… なるほど妖精さんも中々現代について勉強したらしい
鈍器ホーテは食料品、化粧品から面白グッズまでバラエティに富んだものが売っている店だ。そしてその名の通り鈍器に関する品揃えなら右に出る店はない。 あそこなら確かにコスチューム的なものもあるだろう。武器も調達できるし良いかもしれない。
「あのー、一応聞いておきたいんですけど、コスチュームと武器のお金って…」
「自腹でお願いします♡」
ふざけやがっていらっしゃるなこの妖精
「や、やめて ごめんってそんな目で見ないで! いやー、僕バイトとかも無理じゃない?
だからこの世界の通貨持ってないんだよね」
「それこそ魔法とかでなんとかしてくださいよ。今のところいいとこ無しというかむしろ悪いとこしかありませんよ」
「仕方ないじゃない でも、魔法少女の醍醐味の戦闘は今からだからね。 きっと魔法少女最高!ってなるからさ」
適当だなぁ まあとりあえず鈍器ホーテに行くしかないか
でも少し戦闘とやらにはすこーしだけ興味がある。いや、でもあの妖精さんのことだから過度な期待はしない方が吉だろうな
不安と呆れと期待が混ざりつつ私たちは戦闘前に鈍器ホーテへと向かうのであった。