第1話
────眠い。
授業終わりの緩い空気の中、俺はそんなことを思っていた。
実際、レボルナイトの連中にめちゃくちゃにされたこの世の中に、こんな授業は必要ない。奴らに対抗するために取られた戦闘のカリキュラムが多いせいでそもそも授業自体が少なく、そんな状態で行われる授業の内容はないも同然に等しい。だが、一応高校という名である限りはしなくてはならないらしい。
「相変わらず眠そうだな。昨日は集まりなかったろ?何してたんだよ?」
「何もなくても眠くなるものだろ、授業ってもんは」
気安く話しかけてきたこの男の名は新城真樹、クラスメイトだ。俺がここでは最も仲のいい友人と言っても差支えはないだろう。
「次は戦闘訓練だ!俺のアーマードを振るう時が来た来た来たぜぇ!」
「いいよな、お前は適合できるアーマードがあって。」
アーマード、それは何の変哲もない武器を1度データ化し擬似的に作った思考、人工知能のようなものをデータ化して組み込んだ武器だ。これによってどのようなメリットがあるかというと、まず、わかりやすいのが、「武器」を振る、という感覚ではなく「右手」を振るような感覚になることだ。どういうことかと説明すると、アーマードが使用者の「ここに動かしたい」や「こんだけのダメージを相手に与えたい」などの思考を読み取り、そこに動かすまでの効率的な体全体の動かし方、筋肉の使い方などを脳に命令し、それを実行させることによってアーマード使用時の身体能力が5倍にまで引き上がる、という研究結果も出ているらしい。ただし、それは適合者だけの話だが。
「まーお前は使えんからな。しゃーないから俺の超技でも拝んどけ」
そうなのだ。俺は適合率ほぼ100%を誇るはずのアーマードで適合した武器が今までないのだ。アーマードは思考を持っているがために使用者を選ぶ。適合者でなければ従来の武器と変わらない。これではオリジンに立ち向かうことなどできるはずがないのだ。
厳密に言えばアーマード自体は使えるのだ。が、それはノーマルな物に限られてしまう。例えば足に付けるタイプで走力アップのものなどだ。これは明らかに日常用で、戦闘で使えば手ぶらでTシャツ1枚でエベレストに登る様なものだ。すぐに死んでしまう。
「しかもオリジンでさえないからなぁ。暇だねぇ」
レボルナイトに大多数がいるものの、こちら側にも「オリジン」はいる。レボルナイトのオリジンは、その力に対しての思考がとても強い、つまり戦闘に対して好戦的になるように仕組まれているのだ。意図的になったものはもちろん、意図的ではなくオリジンになってしまった者は大抵がその思考を強制で組み込まれることとなってしまったが、その前に逃げ出したり、数が多く強制されなかった者、それらの人々がこちら側に加勢をしてくれるのだ。
と言ってもこれはとても稀なことである。だがこのとても稀なことよりもアーマードが適合しない可能性の方が高く、それである俺は何故そうなったのか如何せん納得がいかない。
「まあ行こーぜ。予鈴なってるし」
そんなことを考えてるとはつゆ知らず、真樹は急かすように俺を促した。早くアーマードを振りわましたくて仕方がないのだろう。
俺は気だるけな雰囲気と適度な眠気を引きずりながら、真樹とともに教室を後にした。