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トーゴ 遺跡調査5

ポーションを使いまくり、アソラルが囮になって引き連れてきては、ゾレスとトーゴで一体一体確実に倒していく。ルルナが複数で襲ってくる魔物に魔法攻撃でゾレスとトーゴをサポートし、シュシュが防御魔法と異常回復を連発していく。

体力と魔力の限界が近づいたらアソラルの即死魔法 槍。で片付ける。

正確には即死魔法ではないのだが、「っ。いってぇなあ!もう休憩してぇ。アソラル、即死魔法!」とトーゴが叫んで以降、土魔法 槍。は即死魔法 槍。(この場所限定)になった。





「参ったな、退路が塞がれていく」



「欲張るからでしょ。アソラルが言ってたじゃん!」



結界の中に入って階段へ続く通路をみて余計に疲れを感じる。

背後、広場の方へ顔を向けると蜘蛛がガリゴリギリと結界に足をかけて壊そうとしている。

もう一度、顔を前方に向ければ、通路を塞ぐ勢いで魔石と素材がうず高く積み上げられ、天井付近に辛うじて人が通れるだけの隙間がある。階段は積まれた向こう側だ。




狩りすぎた。




アソラルの囮からはじまり、限界がきての休憩ポーション補給、魔石と素材回収を繰り返したらこうなった。

1回の囮で釣れる蜘蛛が多すぎたのが原因だ。

残すことなく全部狩ったから当然の結果だが。

もちろん、全部の蜘蛛から魔石、足、皮、牙を取った。


現状になって、全部取らなくても良かったんだ。って気が付いたがもう遅い。

ステルノモッタイナイという言葉が刻まれた元貧乏人出身の冒険者だった彼らに「使えるのを捨てる」選択は「命が危険」な状態になるまで発動しない。

正直なところ、頑張った分は持って帰りたい。

ポーションだって安くない。回復魔法を使用しても間に合わず大量に消費している。

ハッキリ言って元を取りたい。



「あの、結界はこのまま維持しますので、数回に分けて地上へ運びませんか?」



「「「「できるのか!?」」」」



「囮の時と同じですし」



「「「「あ、そういえば」」」」



狩りで精神的な疲れがたまっているのか、思考が鈍ってしまって簡単な事に気づけない4人。

しばらく休んでいてください。私が運んでおきますから・・・・

アソラルだって一緒に戦って疲れていない訳ないのにかなり気を使われた。

体力には自信があったんだがなぁ。アソラルに体力で負けるとはちょっとショックだ。











────────────────



ふっふっふ。

魔石が大量。麻袋を山盛り持ってきて良かった。


しょぼくもない魔物でかつBランク冒険者なら倒せるという高ランク魔物なので、手に入れた素材は上質なはずだ。

しかも、この蜘蛛!初めて見た。

少なくとも近隣国では生息していないか滅多に見かけることのない魔物だ。

つまり希少性がたかい!素材がよく売れる! はずだ。



蜘蛛の体は剛毛で覆われていて鎧のような丈夫さがあった。皮を剥いでみたが皮膚の弾力がありすぎて12人がかりで10体を解体するので精一杯だった。

足の方は関節を逆に折ると割と簡単に切断できたのでこちらを大量に確保。


蜘蛛が階段から上階へ逃げようとするのを防ぐのが大変だったがそれに見合うものが手に入ったと思う。

満足だ。遺跡探索も十分だろうし報酬をもらって終わりにしたい。

リオに言って依頼達成の報告をしてもらおう。










きっつー。

階段が守りやすくて、魔物もまばらにしか出てこないから良かったけど、素早いわ固いわ毒吐くわ足は鋭い剣のようだわ。

変わった素材を手に入れられたから報われるけど、知ってたら絶対来ないわ。

蜘蛛の4本の足のうち、前足2本が剣のようになっていて、一番後ろの足が太くて先がになってて鉤爪で踏ん張りが効くようになっていた。

持って帰るのはこの4本の足と皮を少し。プラス魔石。

分厚くて弾力があるから剥ぐのは一体だけで断念したわ。

魔法で身体強化できれば良かったけど魔力も尽きてたし仕方がない。

こういう時、マッチョな男性がパーティーにいてくれたらと思ってしまう。

女性だけのパーティーは楽しくて好きだけどね!

はやく町に戻ってシャワー浴びたいわー。











今後、遺跡調査の依頼を受けるのやめとこうか・・・・

魔物がいるのは不思議ではないが、ここまで大量に発生した遺跡は初めてだ。

この程度なら倒せると高を括っていたが、倒しても倒しても減らない。

俺達はAとBランクのパーティーだ。実力もあると過信していた。


冒険者のランクはFから始まりE、D、C、B、A、S、SS、と伝説に登場するランクSSS。

俺達のランクで手こずるんだ・・・・ここは閉鎖すべきだな。興味本位で入って行かないようにしないと被害者ばかりがでるだろう。

最悪、地下2階に来れるヤツが現れて封印を解いてしまったら・・・・・

偶然にも詳しいアソラルがいてくれて良かった。

俺達だけだと、地下2階を見つけられなかったか、見つけても全滅の可能性が高かった。


見渡せば全員が寝転がり陸に上がったタコのようになっている。

使った階段が悪かったな。

下りたらすぐ目の前に枯れた噴水がありそれを中心にして十字に通路が伸びていた。

どの通路を見ても闇の中に複数の赤く光るものがあった。

蜘蛛と目があったのは初めてだ。もう合わせたくない。


どれほど戦っていたか分からなくなっていたが、パーティー全員のダメージが大きくなってきたところを見計らって階段を上り避難した。

休息のため、すぐに階段を塞いだが。

落ち着いて素材を回収することが出来なかったから倒した蜘蛛を──人よりもデカイ蜘蛛を丸ごと──無理矢理収納カバンに詰め込んだが、取り出す勇気があるかな。しばらくは蜘蛛を見たくない。


もう疲れた。依頼は十分果たせただろう。

他のパーティーと合流したら帰路に着くと伝えよう。

まだ狩りがしたいというヤツがいたらそいつを収納カバンに入れてでも帰るぞ。








────────────



さわさわと草を揺らして優しい風が通り過ぎていく。

小さな花が点々と咲き揺れている。

風に乗って血の臭いが広がる。

目の前に無数の蜘蛛の足。




・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・



「俺らすっげー頑張ったから」



「頑張ったの限界超えてるだろ。なにこの山!カニ食った後の殻入れかよ!」



「キモいわー。狩りしてた私でも引くわ。多すぎ」



「チームゾレスは全員がBランクだよな。狩るにしてもこの数は異常だ。何したんだ?」



準備の為ポーションを買いに町へ戻った時に、持ち帰り切れないほどの素材がとれると言ったアソラルの言葉を信じ、荷馬車を手配していたのだが。

今、その荷台に蜘蛛の足が山と積まれている。その下に隠れて見えないが、皮と牙も大量に乗せられている。



「選んだ階段が良かったんだよ。幅2mの通路で背後を気にせずに狩りが出来た」



「いや待て。いい場所だったにしても、お前らだけでこの数を倒すって無理があるだろ。この数が襲ってきたら死ぬだろ」



「そもそも、この数の蜘蛛が密集していたとは思えない。階段の近くを探しながら狩りをしたけど1体、2体ずつくらいしか現れなかったわ」



「適当に囮役が引っ張ってきてな。1回でに40体くらいか、んで3回したから約120体な」



「「「一人に40体もの魔物を襲い掛からせてたのかよ」」」



非難轟々。

言葉にすると確かにちょっと。

結界を張っているとはいえ、ジョギング感覚で走っていて帰ってくるんだもんなぁ。

自分の目で見ないと信じられない光景だよ。見ても疑ったがな!魔物がアソラルに化けてるのかと思ったのは秘密だ。


だが他のチームの成果を見れば一目瞭然だな。狩った数が雲泥の差すぎて。

これを見て確信した。アソラルは絶対にAランクかSランクだ。なんで隠してんのか知らないが詮索する気はない。

今日から同じパーティだし(まだ本人に言ってないけどな!)機会があれば知ることもあるだろう。











──────────────



予想の範囲外の事実、ハーフだった。

ランクはまだ知らないがな。

魔族かっ

だからかっ

魔物と一緒にジョギングも簡単だよな!

全部思い出したわ。

素材は高額で売れたし、おかげでいい武器が買えたよ。

マジかー・・・・・

あれからアソラルに随分助けられて本気で死ぬと覚悟したこともあったが、こうして生きている。

異種族間の婚姻って結構厳しいぞ。どちらからも蔑まれたりして苦労したはずだ。

それでも両親が魔力の強いアソラルを生んでくれたおかげで俺は今も冒険者をやっていられるんだな。





ゆっくり歩いていたが、思考の淵に長く沈んでいたようで景色が家々から畑へ変わっていた。

そろそろ戻った方がいいだろう。



「なぁ、アソラル」



「はい?」



「お前の両親に俺が礼を言ってたって伝えておいてくれ」



「は?」







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