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トーゴ 遺跡調査2

かける言葉が見つからず暫く沈黙が続いた。


先頭を歩いていたアソラルが突然立ち止まった。

広い通路の前方左側を見ている。

灯りがそちらへ移動し照らして、そこには壁が崩れリーフが壁に寄りかかるように落ちていた。

そこを指さして



「あのレリーフの傍に階段がありますね。わかりますか?」



「「「「わからん」」」」



声を掛けにくかった空気が消えてしまった。

近づいてみると、落ちているのはレリーフ以外にも、金属でできた何か。朽ちてよく分からなかったが、金属を細い棒状にして花の形になっているように見える。元は美しい物だったと思われる。

床は良く見れば他よりも風化して床石が脆くなっている。

だが、ここまで近づいて見なけれ気づかない。

ここを階段だと分かれと言う方が無理だ。

触ってみると石形が悪くここだけ、後から乱暴に敷き詰められたようだ。



「これが階段?どうやって見分けているんだ?」



「・・・・なんとなく?」



・・・何その感の鋭さ。

俺たちに求められても困るぞ。

そんな空気が伝わったようでアソラルが補足する。



「位置、でしょうか。ここら辺にありそうっていう場所で階段が見つかることが多いです。坂道が多い街や、大きな屋敷などを思い浮かべてみると、こんな所に階段がありそうっていう」



「坂道の多い街ねぇ。俺、行ったことないわ。皆はあるか?」



行ったことのないトーゴには分かりにい例えだったが、他に説明が思いつかない。

残念だが、他のメンバーも同じだった。

もちろん、大きな屋敷など知るわけがない。

依頼をした領主の屋敷へ行ったが、歩き回ったわけではないのでデカイ家としか思っていなかった。

階段の位置がどうあるかなんて見ている訳が無い。



「アソラルって大きな屋敷にでも住んでたの?」



何気なく聞かれただけなのに、アソラルが僅かに嫌な顔をする。

言われなければ気づかないだろうほどの小さな変化。

だがルルナはその表情を見逃さず食いついてきた。



「えー、もしかしていいとこの子息とか?冒険者に憧れて家でしちゃったとかー?あ、妾の子で本妻たちに追い出されちゃったのかしら?」



目がキラキラしだしたルルナが、仮説を矢継ぎ早に言いまくりだした。

いきなり元気なり、アソラルに聞いているというより勝手に話し出したような?

彼女はどうしたんですか?とアイコンタクトを送るアソラルに、皆お手上げの仕草をとる。



「すまん、ルルナはそういう物語が大好き・・・・を通り越し気味なんだ。聞き流してくれて構わないから。自分の世界に逝ってもちゃんとついてくるから先へ進もう。すまんな」



「はぁ、そうですか」



「ええと、身分違いの恋に落ちちゃって駆け落ちをするけど生活ができなくてーだったりする?いやいや、Sランク冒険者が屋敷にきて憧れて家を出て追いかけたとかっ!あ、いや待って、病弱な妹の為に、ここは弟でもいいけど、治療のための薬草を求めて危険な地へ。美しい兄弟愛。旅先で出会った人にい恋をしてー!くぅ、いいわーコレ」



止まらないルルナは超大作へと進んでるようだ。

放っておく。

暫く進むと2の入口へたどり着いた。

地図は2と3の入口が繋がり、階段があった場所と、分かれ道があった場所に印をつけてある。

地下2階への階段は3つ。

一度、外へ出て休憩をとる。

ここから入ったシュナ達はまだ戻ってきていない。

空を見上げれば、遺跡へ入った時と同じ。とてもいい天気で地下にいたため解放感が気持ちいい。

少し早いが昼食をとって、シュナ達を待つことにした。


待機していた人は、まさか3から入ったチームゾレスが2の入口へ来るとは思っていなくて驚いていた。



「普通、入ってきた場所へ戻るだろ?」



「繋がっているので、どこの入口で休憩しても構わないかと」



「3の入口で待機してるヤツに連絡を入れておこう」



「戻って来なかったら心配するもんね」



「昼飯の準備するか。待機の兄ちゃんも食うだろ?」






ゴロ。ボコッ

ゴトゴトゴト。


地面から石が生まれている。

正確には土が寄せ集まって固まっている。

作られる石の周囲の土はどんどん掘り下げられていく。穴だらけ。

平原に、竃を作るのに丁度いい石が無いから・・・・アソラルが家庭魔法で竃を作っている最中だ。

食事の支度の途中まま全員の手が止まっている。

見た事のない家庭魔法。

竃魔法すげぇ。


便利すぎるからチームゾレス全員がやってみた。

ゾレス、ルルナ、シュシュは一度で完璧な竃が出来上がった。

がトーゴだけは、ゴロゴロと石が出来るだけで竃の形にならない。

何度やっても同じで、地面から石を作ってもその場に転がるだけだった。


家庭魔法なら誰でも使えるもので、できないとなるとその魔法は家庭魔法の範囲をこえる魔法になる。

つまり、竃魔法は本来の使い方ではないという事。

家庭魔法以外は、魔法が使えないトーゴ。



「なぁ、これ本当に家庭魔法なのか?」



「そうですが、うまくいきませんね。練習を重ねれば竈の形になっていきますよ」



・・・・・疑わしいぞ。

アソラルの家庭魔法は他にも作製したものがあるという。

機会があれば見れるだろうな。

また教えて貰おう。

そして魔法は家庭魔法しか使えない俺が、アソラルが作製した家庭魔法を使えなかったら、それ以外の魔法ってことだから。

その時は本当の用途をすべて吐いてもらうとするか。ルルナに覚えさせる。



準備している最中に3の入口で待機していた人が合流した。

彼も2の入口に出るとは思っていなくて「せめて一回くらい戻ってこいよ。すげー暇だったんだぞ」文句を言われた。

余りにも退屈すぎて、チームゾレスが戻ってきて地下の状況を聞くのを楽しみにする事で耐えていたらしい。




食事の支度がいつもより早くできた。

火力のあるいい竃のおかげだ。

おまけにアソラルが持っていた調味料がいい!

料理が美味い。

野菜がごろごろ入ったスープ。

肉がささやかに入っているだけだが、野菜が肉と同じくらい美味しいものだと初めて知った。



「すげーな、この調味料!スープうまい」



「この調味料はどこで手に入れたんだ?できれば手に入れたいな」



「ねえ、私達のパーティーに入らない?」



「・・・食事担当決定だな。異国の料理を食べてみたい」






─────────────


「あれ、あんたたち3の入口の。チームゾレスじゃない。調査はどうしたのさ?」



チームシュナが戻ってきた。

彼女達も食事のために戻ってきたのだが、すでにいい匂いをさせて食ってるヤツがいるとは思わなかっただろう。2の入口で待機してた人もお代わりして、しっかりご馳走になっているし。








食事を済ませ、チームシュナとチームゾレスの地図情報を交換した。

互いの地図が補足し合い内容が広がったが、まだまだ全容には程遠いようだ。

俺達チームゾレスは、経験のあるアソラルを中心に遺跡調査をしているが、地下2階の階段を見つけた事を話すとチームシュナもアソラルに助言を求めた。

だが、やはり地下2階への階段を見つけるのは難しいだろう。

実際に見た俺達ですらか階段には見えなかったんだ。



「それじゃ分からないわ。もっと分かりやすく説明して欲しいんだけど」



「それは階段を見つけるより難しいです」



「「・・・・・」」



そりゃそうだ。

実際に見たから理解できる。

どっちの言い分もわかるよ。



「こういうのはどうだ?午後からはチームゾレスとチームシュナで2と3の入口を繋ぐ、地図にない別ルートを行くんだ。もちろん一緒にだ。それで階段を見つければ説明を聞くより分かりやすいだろう」



ゾレスの提案。

どの口が言うかね。

ゾレス、お前だって見ても分からんって言ってただろ。

俺もだけどさ。

まあ、シュナ達に分かってもらうには・・何を分かってくれるのか謎だが、まあ一番いい方法だな。



「チーム別で行動って事になってたじゃない」



「あの階段だけは知ってるヤツじゃないと見分けがつかない。階段を見つけるまでくらいならいいだろう」



「2から1へ繋いでもいいんじゃないの?どうせ集合はそっちでしょ?」



「1と2を繋ぐのはチームリオに任せる。地下は広い。8までの入口を繋ぐのに3への別ルートを地図に書き込んでいったほうが早いだろう」


皆頷き合い、3の入口への別ルートを開拓することになった。









・・・・・・・・で、


何事もなく3の入口に着いちまった。



「ちょっと、階段はどうしたのよ!何もないまま出ちゃったじゃない」



アソラルの襟を掴みガクガクと揺さぶっているシュナ。

こういう探索は収穫な無しなことは多いよな。

うん、しょーがねーわ。



「階段が3つしか無いなんてありませんから。どうしてもというなら、見つけた階段で良ければ案内しますが」



「うっ、新しく見つけたいわ。すでに発見されたのを見ても嬉しくないし」



「まあ。今日はここまでだよな。1の入口へ戻ろう」



まだ陽は高いが、初日は様子見の意味合いが強い。

ゾレスの一言で、少し休憩したら戻ることになった。

シュナはしぶしぶといった感じで承諾する。


ここで、アソラルが思いついたらしい事をいった。



「そうだ!皆さんがよければ、地下から1の入口へ戻りませんか?2までは地図が出来ていますから、そう時間はかからずに1の入口へ行けると思います。階段も見つかりそうだと思いませんか?」


1と2の入口を繋ぐのをチームリオに任せるつもりだったのに、シュナに気を使ったのか?


この時点で、チームシュナは地下1階に魔獣がいない事を知らない。

アソラルがそう言っているだけだが、チームゾレスは不思議とそれを信じてしまっている。

いても小さいスライムだと。



「確かに、集合の時間まで時間はあるわ。でも2までの道が分かってても、そこから1までどれだけの時間がかかるか分からないし危険だわ。途中で陽が沈むかも知れない」



夜になると活発になる魔獣は少なからずいる。

地下であってもそれは同じなのだ。



「それは心配ないぞ。地下1階に魔獣はいないから、外を歩くよりは時間が必要だろうけど、集合には間に合うだろ。なあ、アソラル?」



「十分間合いますね」



ゾレスとアソラルは当然と言わんばかりの態度だ。

1と2の入口の距離はあまり離れていなかった事から、方向さえ分かって入れば時間を気にする必要もない。

チームシュナから見ると、そんなやり取りをするチームゾレスはユルユルに見えて心配になる。

偶然2の入口まで、魔獣と遭遇しなかっただけで、魔獣がいないと何故断言できるのか?



「経験者のアソラルについて行けば大丈夫だろう。まあ、一緒に行けばわかるさ」



納得できないシュナを、ものは試しだと言ってゾレスが半ば強引に地下へ連れていく。

待機の2人は地上から1の入口へ行ってもらうことにして。

そして、地下1階でチームシュナは先ほどのチームゾレスと同じ反応をしている。

人数は増えたが灯りは6つだけ灯した。



「高性能!異国の家庭魔法なの?地上に出たらこの魔法を教えてね」



やはり高性能の灯り。食いつきがいい。



「この灯りは私が作製した魔法なんです。」



「「「「「えっ!?」」」」」



シュナの出身国では、魔法作製者は国の宝だ。そして魔法研究施設で働くことが義務付けられている。

もちろん好待遇で。

他国でも似たようなものだろう。放置などありえない。

ポカンと口をあけてまじまじとアソラルを頭から足先までみている。

信じられないモノを見ているといった風に。



「なんで国宝級がこんなトコにいるのよ!?」



「灯りが国宝ですか?」



家庭魔法なのに?な顔をして首を傾げている。

やはり分かっていない。



「ちょっとアソラル、歩くの早い!警戒しなさすぎでしょ。って、なんで曲がり角を普通に行っちゃうのよ!?」



「え?1の入口はこちらの方角なので曲がったんですが」



「ちがう!そうじゃない」



会話がズレてる。

角を普通に曲がるのが普通ですよね?

な反応を見せるアソラルがシュナからツッコミを入れられまくり。


・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

そうか。俺達もこんな感じだったのか。

自分達を客観的に見ているようだわ、アソラルとシュナ達の温度差が面白れぇ。

黙って歩いているチームゾレスは、全員キュッと唇を閉じて笑うのを我慢しているのだが、シュナ達は(知らなければ)非常識(にしか思えない)なアソラルを相手にするのが忙しくちらに気づいていない。



進んでいくと、壁が落ち、道幅が広い道と狭い道が並行して延びてる場所へでた。



「こういう場所にあるんですが」



ぽつりと呟きキョロキョロと辺りを見回してるとピタっと動きが止まった。

見つけたようだ。



「ちょっと待った!」



パシ!



「うぷっ」



「アソラル、この辺にあるんだな?俺が見つけてみせる。教えてくれるなよ」



言おうとしたアソラルの口を塞ぎ、宝探しするぜ!な空気だしてるトーゴ。

塞ぐと言うより顔を叩かれた。ちょっと涙目になりながら頷く。

ただし、と制限時間をつけることを忘れない。



「ここで時間をかけたら集合時間に間に合わなくなりそうなので」



魔法で光の砂時計を出す。

砂が落ちきるまでに見つけなければ。

チームゾレスはトーゴの言葉に俄然やる気をだし、チームシュナは、はぁ何言ってんの?階段を見つけるって、そんなもんすぐ見つけられるじゃん?な空気を醸し出している。







──────


「っあーーー!もうっ、アソラル!どこに階段があるってのよ?何もないわよこの辺り!」



シュナが叫ぶ。魔獣がいないからいいけど、普通、魔素の濃い場所で叫んだら最悪だぞ。



「ちゃんとありますよ。ですがそろそろ終わりに」



「あとちょっとだけ!」



ルルナが叫ぶ。どうしても見つけたいの!

砂が全部落ちてしまった砂時計は役目を終え、徐々に薄くなり消えようとしている。

なのに探すのをやめない冒険者たち。

探す気がなかった奴らも見つけられなさすぎて本気で探している。

しかし、努力も虚しく見つからない。

トーゴは仕方がないな。と、諦める・・・・・のかと思ったら



「ふ、こうなったら奥の手だ!階段はここだ!あってるか?」



「いえ、違います」



「じゃあ、こっち!」



「違います」



「コレは!?」



「時間切れです。付き合いきれません」



「付き合い悪いぞっ」



「階段探しには付き合いましたよ。これ以上時間をかけていたら日が暮れてしまう。正解はこの壁です」



有無を言わさず階段を指さす。ただの壁だ。

ひと際大きなレリーフの留め金が外れて壁に立てかけるように落ちている壁に触れた。

落ちている石で壁を擦ると、ボロボロと壁が崩れてドアのフチらしきものが現れる。

留め金が外れたレリーフだと思っていたのは、錆た分厚いドアで一部の蝶番が外れて立てかけたように見えていただけだった。ドアのわずかにある隙間には風化して土、砂になったのが詰まっている。

ギッギギギー。

金属が擦れる嫌な音を響かせてドアが斜めに開いていく。

完全に開くことがでできず、通りづらいからバキンっとドアを取り外す。



「・・・・これは階段じゃなくて扉だろう。」



ツッコミを無意識にいれてしまうトーゴ。扉が付いてる階段があるとか、以外過ぎて呆れてしまう。



「あ!そういえば。うっかりしてました、すみません」



「いや、もういいよ・・・謝んなくていい。こういうのもあるんだな。見分け方はどうなんだ?」



「壁に蝶番がみえると扉です。あと、レリーフが大きくて床に落ちている様に見えたら扉で階段がある場合が」



ドアを通るとそこは階段だけがあった。数段おりると踊り場がありそこから下は土で埋もれている。

これについては誰も何も言わない。

上を見上げると木の根が絡み合い垂れ下がっている。地上へ続く階段は木に埋もれているようだ。



「地上からは発見できなかった入口が3つになりましたね。ちょっと面倒くさくなってきました」大物が居そうです。



ふう、とため息をつき、最後の言葉は心で呟く。

背後からガシっと両肩を掴まれ振り向くとトーゴとゾレスが片方ずつ肩を掴んでいる。



「「面倒ってなにが?」」



「個人的に面倒だと思いまして」



「「なにが?」」



「・・・・この遺跡は長方形のようですね。放射線状に繋る道がありません、先へ進みましょう」



あからさまに話題を変えた。






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