怪我人
怪我人が今、目の前をヒョコヒョコと歩いている。
数日前に瀕死の状態だったのだが、どうにか持ちこたえた。
身体を拭いて、綺麗な布で怪我を覆い、看病している間に気づいたが、こいつはこの国の人間と違う。
まず、こんな髪の人間はいない。
真っ黒な髪の色。
後ろに丸めて束ねてあったが、クセのない真っ直ぐな髪質。
ちょっとのっぺりとした顔立ち。
幼い顔立ちの割にはふくよかな胸。
それなりに飾れば高く売れるのではないか?
ヒョコヒョコ歩いていた怪我人がくるっとこちらに向き直り、ニッコリと笑ってみせる。
言葉は思っていた通りに通じはしないが、何とか意思疎通をしようとしてくる。
今も多分だが、怪我が良くなって来たと言いたいのだろう。
懐かれても面倒なのだが、頷いてやる。
ここで不信がられたらもっと面倒くさい。
まだ完全には完治していないが大丈夫だろう。
特別な治療をしたんだ。
拒絶反応も無かった。馴染んだのだろう。
完治をしたら ちょっとの傷ならすぐ治るようになるだろう。
まあ。
後で文句を言われようが知ったことじゃない。
もうしばらくは 面倒を見てやるさ。
こいつの物は売飛ばしたら結構な金になったからな。
もうしばらくだけの辛抱だ。