ミイラ、ですか?
シュウシュウと何かが吹き出ている音がする。
少しずつ意識が戻ってきている私は、嗅いだ事のある匂いを何の匂いかを思い出そうとしている。
朦朧としている脳をゆっくと働かせながら、少し目を開けた。
何処かの施設なのでしょうか?
年期の入った立派な木の家に、沢山のドライハーブがぶら下がっています。
シュウシュウという音はヤカンからの湯気でした。
薪です。薪ストーブです。暖炉です。
昔から憧れていました。素敵です。暖かいです。
季節は春ですが、やはり肌寒かったのでしょう。
私は毛皮の掛け布団をかけていました。
臭くないです。
と ここで思い出しました!
私、私!死んでしまったのでしょうか?!
そして憧れの暖炉のお家に住んでる事になったのでしょうか?
でもドライハーブとか さっぱり解りません。
起き上がろうとした途端にズキッと鈍い痛みが身体中に駆け巡りました
痛い!声にならない悲鳴です!
恐る恐る掛け布団(掛け毛皮?)をめくって自分の身体を見ます。
全身包帯です。
私は今、ミイラになってしまっています!
よく見たら指の先まで全てが包帯で巻かれています。
生きているのでしょうか?
死んでしまったのでしょうか?
この家には私しか居ませんので、確かめようもありません。
けれども、良かった。
あの恐ろしい生物は居ません。
シュウシュウと静かな部屋の中に、ヤカンの蒸気の音だけが聞こえます。
なんだか また眠たくなって来ました。
うとうとと私はまた、意識が遠のいて眠りについてしまいました。