仕返し
「グガリルルルルルルルルルル!」
後方で唸り声が聞こえた。
「あっちか」
振り向き、一気に森の中を走る。
今の声の大きさから、そこそこ近くに居るのが解った。
あのヤロー人の腕を千切りやがって許せねぇ!
怒りで踏み込む力も増す。
「絶対に逃さねー!!」
幸い、利き腕は健在している。まぁ利き腕じゃなくとも大した支障は無いが、扱い慣れている方がいいに決まっている。
ザッと森を抜けた川の向こうに奴がいた。
「逃さんぞ!」
足元の石を奴に投げつけると同時に走り出す。
石は奴の尻を直撃し、減り込む。
「ギャギャオォウ!!!」奴が叫びながらこちらを振り向くが、遅い。
振り向いた奴の上からナイフをど頭にぶっ刺す。刺したナイフをえぐるように捻る。
ズドォォンと重量を感じる音を出して倒れる奴ことグアーイズル。
この森で最も凶暴な動物のグアーイズル。
「油断さえしてなきゃ、こんなもんだ。」
グアーイズルの腹にナイフを突き刺し、一気に腹を裂く。
胃袋から自分の腕を探し、千切れた所を付ける。
千切れた場所からシュウシュウと煙を出しながら腕が繋がっていくのを見届けてから辺りを見回す。
何かが転がっているのを確認して見てみるが
「何だ?これ?」
小さな布?の中に何かが入っていてカラカラと振ると音が出る。
見た事のないもんが落ちている。これは高く売れるかな?
思わぬ宝に気分を良くしたところで人が倒れているのを見つけた。
奴の餌食か。災難だったな。
身体中に引っ掻き傷と血がこびり着いている。
傷がついて時間はたっていないだろう。まだ血が乾いていない。
近づいて息を確認すると、微弱ながらも呼吸していた。
「仕方ない」
正直、凄く関わりたくはないが、生きているのに見捨てるのは寝覚めが悪い。
背負っていくか。
怪我人を担ぎ、グアーイズルを鷲掴み、落ちている物を自分の袋に仕舞い込み、ゆっくりと走りながら その場を後にした。