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幸せ  作者: はるな
4/7

4

連投


数日後の、帰り道。


夏希は、目を赤く腫らしていた。


それだけで、結果が慮られる。


きっと、告白に失敗したのだろう、と思った。


そう思うと、俺は、何も言えなかった。


「ねぇ、涼。」


「あたしは、どうして振られたのかなぁ」


夏希の声は泣きそうな声だった。いや、俺に見えていないだけで、きっと、泣いていたんだと思う。


「……何でだろうな」


どうして、長原という男は、夏希を振ったのだろうか。


夏希は、贔屓目なしにしても可愛らしい子であり、俺もしばしば紹介して、など言われる。


それに、俺が遠目で見た限り、長原は、夏希を憎からず思っている風だった。


「あたしが好みじゃないって言うなら、まだ諦めがつくよ。それはしょうがないじゃない。でも」


夏希は堪えきれずに嗚咽をもらす。その泣いている顔も、夏希を魅力的に、綺麗に見せているように見えた。


「『俺は君の愛する人のかわりにはなれないよ』って。どういう…どういうことなのよ。」


夏希は最後の方は声すら出ない様子だった。


俺は首をかしげる。

夏希は間違いなく長原が好きだ。長原のことについて話す夏希は、恋する乙女そのものである。


「ホントにな…」


「あたしは、あたしはこんなに、アイツが好きなのに…どうして。」


俺は聞いていて、胸が苦しかった。


夏希には泣いてほしくなかったからというのもあるが、夏希が長原を心から想っていることが感じられて、なお苦しかったのだ。


夏希をこんなにも好きなのに、それは、叶わぬ恋だと突きつけられているかのようだったから。


俺は、下手に慰めることもできず、ただ静かに泣いている夏希を見つめることしかできない。


「ごめんね、涼。付き合わせて。」


そう言って、夏希は無理矢理笑顔を作った。


無理に笑顔を作ったと分かるような、辛そうな笑顔だった。


「…涼に聞いてもらって、いっぱい泣いて、ちょっとスッキリした。ありがと。」


そう言うと、夏希は踵を返す。


「泣きたいときは、無理に笑ったりしなくていいと思うよ。」


俺は、夏希の背中に、そう投げ掛けた。


「…そんなこと言われたら、涙が止まんなくなっちゃうじゃない、ばか。」


夏希は、最後にそう言うと、家に帰っていった。


そのあとで、考える。


それにしても、俺もスッキリしない。


長原にちょっと待てや、と言いたい。


長原の言う夏希の『愛する人』って一体誰なんだ。


長原から見て、誰が夏希の本当に好きな人に見えるのか。


長原の真意はなんだ?


おれのモヤモヤした感情が晴らされるのは、この数日後のことであった。

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