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お久しぶりです
翌日。
今日とて今日も、夏希と一緒に帰路につく。
今日は、雨だったから、傘をさしながら。
ゆっくりと周りの景色が変わってゆく。
「長原まじでありえんのやって」
夏希がしている話は俺が一番聞きたくない話だ。
それでも聞き続けるのは、この10分が、無くなっちゃうよりはまだ少しだけましだから、だと思う。
夏希はクルクル表情を変えながら、話している。
「夏希は、長原くん?に、告白しないのか?」
俺は、夏希の話がひと段落ついたところで、切り出してみた。
夏希の恋が実るかわからない、まるで生殺しのようなこの状況が一番辛かった。
もし、2人が付き合うことになったら、そのときはキッパリ夏希を諦めよう。と、思う。
だから、この期間を早く終わらせてほしかったんだ。
「うーん…ってえっ?否定したじゃん!」
夏希は手をブンブン振るけれど、顔は紅潮している。
「夏希は嘘つくの下手くそだから、バレバレだよ」
と、俺は笑う。
「ほら、今も顔が真っ赤だよ」
「そっか……ヒロには隠し事できないね、やっぱ。」
夏希も笑って見せた。
「うーん、そうだな、こういうのは思い立ったが吉日って言うしなぁ。うん、今週中になんとかするかな……振られたら慰めてねー」
夏希は冗談めかしてそう言った。
「勿論、そのときはとことんつき合うよ」
「じゃあ安心安心。ヒロは私以上に私の取扱い分かってるからねー。」
「そんなことはないと思うけどな」
気づけば既に、家の前だ。
「じゃあな、また明日な。夏希。」
「うん、また明日。ヒロ。」
夏希に手を振って、夏希が家に入ったのを確認してから、ため息をつく。
成功して欲しくない。けれども、夏希の涙は見たくない。
願わくば、夏希が泣かずに済みますように。
それが、俺の、一番の願いだ。