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プロローグ
「貴方の誕生日は……月……日よ」
あぁ、今日も聞こえる。
泣きそうな声で僕に誕生日を伝えようとする女性の声が。
所々嗚咽混じりで、必死に僕に伝えようとしてくる声が。
でもダメなんだ。
どうしても肝心な部分だけは聞こえないんだ。
「忘れちゃダメ。覚えておいてね。
貴方の誕生日が、貴方を守ってくれるから」
忘れたくないんだ。覚えておきたい。
でも、日付が聞こえないんだ。
僕の誕生日がわからないんだ。
「じゃあ、強く生きてね」
泣きそうな声のまま、必死な声のまま。
声だけが離れていく。声だけが遠ざかっていく。
肝心の日付だけが聞こえないまま。
気づいた時は叫んでいた。
「待って!教えて!僕の誕生日、僕の誕生日を!」と。
でも声はどんどん遠ざかる。
こちらの声に気づいてないように。
そして僕はここでいつも気づく。
これは夢だと。永遠に僕を苛む夢だと。
ずっと僕を赦してくれない夢なのだと。
そして、いつもここで目が覚める。