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戦場で踊れ  作者: 羽鷺終茶
3/33

-例外-

この世界では人間と精霊が共存している。

人間は多くの技術を持ち、皆が剣術を習う。しかし魔法は一切使えない。

精霊は多くの知識を持ち、全ての個体が魔法を使える。しかし腕力、筋力、武器を扱うための技術が劣るため剣術が使えない。


魔法。

それを発動するには詠唱かイメージ力が必要である。詠唱をすれば必ず魔法は成功するが、自分で威力を変えたり効果範囲を広げたりは出来ない。詠唱を省略して魔法を使う方法はイメージをすることのみ。強い魔法をイメージすれば魔法は強くなるし、効果範囲を自分で決めることが出来る。しかしイメージ力が足りず、曖昧な部分が少しでもあれば必ず魔法は失敗する。そのため詠唱を使う精霊が9割以上を占めている。

他にも、発動させる魔法によって必要なものが異なってくる場合もあったりする。例えば地形を把握していなければいけないとか、晴れていないといけないとか。


これが、今の人間と精霊が知っている一般知識である。

誰もが、その知識は間違っていないと信じている。

そして、それが俺と彼女が一人では何も出来ない理由だった。


――けれど、一人じゃないなら


俺は謎の優越感に浸りながら女精霊と人売りの戦闘を透視魔法で見ていた。同時に、女精霊の動きに合わせて魔法を“イメージだけで”発動させる。彼女が攻撃を受けそうになったら防御魔法。手をかざしたら攻撃魔法。

きっと、人売りたちの目から見れば、精霊である彼女自身が詠唱なしのイメージ力で魔法を使っているように見えていることだろう。

だが、実際に魔法を使っているのは俺だ。

他でもない、人間の俺である。


では何故彼女は魔法を使わないのか。

簡単な話だ。彼女には魔法が使えない。


嗚呼、なんて馬鹿馬鹿しいことだろうか。

人間には魔法が使えないと言って可能性を捨て。

精霊には剣術が使えないと侮り。

何が本当なのか見極める目も持たないで幸福を求め。

そのせいで自らが敗北するのだと、それさえも理解できず。


「そんな奴らにはうんざりしてんだよ...」


俺の口から自然と発せられた言葉は、路地裏に轟いた爆音でかき消された。

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