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戦場で踊れ  作者: 羽鷺終茶
27/33

-就寝-

女性陣が集まって話しているその光景を見た俺には、いや、見てしまった俺には、考えなければならないことがあった。厳密に言えば迷ってしまうことがあった。確かに、聖が独りで危ない行動をしているわけではないことを知って、その点は解決した。その点というのは、この間紅と俺が初めてあった時のように、零聖ではなく零羅――または聖――として戦わなければならない状況に陥るかもしれないという点だ。


零聖は存在してはいけないけれど確かにそこに存在して、絶対的な力を有している。

零羅や聖という存在は、確かにここにいるけれど存在しないものとされている。どこの市役所に行っても、そんな名前で戸籍登録をしている人はいないと言われるだろう。当たり前だ。実際その名前で戸籍登録などされていないのだから。

魔法が使える人間である俺と、剣術が使える精霊である聖は、イレギュラーな存在として世間から排除されないように、出来るだけ人目に付く所での魔法や剣術の使用は避ける必要があった。例え命にかかわる...そう、例えばどんなに激しい戦闘中であっても。

けれど、二人が一緒にいるときなら。俺が使った魔法は聖が使ったものだと偽装することが出来た。聖の剣に炎を纏わせて、聖自身が造り上げた魔法の剣だと偽装することが出来た。だから俺たちは、零聖でいないと戦うことができなかった。

それが、俺と聖が一人では何もできない理由の一つだったりする。


とまあ、兎に角素晴らしいほどの安心感に包まれてしまった俺は、いやがおうでも空腹を意識せざるをえなかった。このまま踏み出せば、きっと女性陣の誰かが俺に気付くだろう。楽しく花を咲かせているところに水を差すのは好きではないし、何故か今は見つかりたくないという気持ちがあった。

だがしかし、やはり俺は空腹である。もう晩御飯を食べるにはいい時間だったし、無理もないと思う。

しかし悩んだのはほんの数分で、俺は踵を返した。...返そうとした。


「...零兄?」


その一言で、俺に集まる視線。

嗚呼...聖...兄ちゃんは何事もなくこの場を去りたかったな...。


「よ、よお、皆。こんなに集まって何の話をしt...」


「なななななな何?!いつから?!」


白癒は何故かひどく狼狽した様子で、机を叩くようにして手をついて勢いよく立ち上がった。椅子が後ろに倒れるが、それも意識外のようで。


「えっと...結構ついさっきから」


俺はその勢いに押され気味で...というかちょっと恐れ気味で慎重に言葉を選んで答えた。...選ぶほどの選択肢もない言葉だったけれど、選んで答えた。

少し安心した様子の白癒。


「零には秘密の話をしてたにゃ。別に暁にとっては秘密でもなんでもないけどにゃ」


秘密の話を無理矢理に聞こうという気もなかったし、ついていけそうな話でもないと予想できたため、話の内容については追求しないことにする。というか、元々追求しようと思っていたわけではないのだが。


「俺は腹が減ったからここに来ただけだ」


色々と誤解されてしまう前に言っておく。

昔から少食だった俺は、ハンバーガーをひとつ手にとった。3食分のご飯代は免除されている。免除というか、その分働くということでの等価交換みたいなものだ。


「零兄、明日の予定は...?」


「暁と一緒に国境の偵察に行く。ちゃんと寝ておけよ」


一応馬車移動は出来るが、それなりに長い距離を移動することになる。

俺の言葉に頷く聖は、少し嬉しそうだった。街の外に出るのが楽しみなのかもしれない。

逆に暁は少し面倒くさそうに「仕方ないにゃ」と零した。それでも断らないのは、彼女の褒められるべきところだろう。

ふと、俺はうつむいて考え事をしている様子の翠に気付いた。


「...翠」


「え、あ、はい〜、何でしょう〜?」


話しかけられるとは思ってなかったのか、いつも笑っている顔に明らかな驚きを表している翠。その目を見て言う。


「頼んだぞ」


なんのことか、なんて今更聞くまでもないだろう。それを聞いて浮かべられた満面の笑顔を返事と見た俺は、最後に聖にこう訊いた。


「飛ぶときに羽の動きとか風とか、考えることはあるか」


明日は国境の偵察で一日が潰れるだろう。おそらく空を飛ぶ練習をするような時間はない。けれど、いずれ飛ばなければならないのだ。翠の努力を無駄にしないためにも...。

俺が廊下に出た瞬間、女性陣は再び秘密の話とやらを始めたようだった。


自室に戻ってきた俺は一気にハンバーガーを食い終え、風呂に入り、明日の計画を確認し直してから布団に潜り込んだ。


――何も考えない

――何も考えないで飛ぶ


そのときの俺は、何も考えないということが、飛行の成功につながるのではないかと考えるようになっていた。

おはこんばんにちは!

皆さんお気づきだと思いますが、零聖以外のキャラの名前には色が入るようにしています。なんか、零聖だけ別みたいな感じを至る所に出したくてですね...。

さて、次回からは国境の偵察のお話となる予定なのですが、これがなかなかトラブルトラブルしております← トラブルがないとやっていけません!←

なので、結構大変な任務になるかも...?!というところです。

実はまだ蒼と藍の扱いに迷っています。

そして只今、中間テスト期間真っ最中!しかもしかも、10/11本日は英検の一次試験なのです!\(^ω^)/お、応援してくださi((

いつもより長い後書きになっちゃいました。ここまで読んでくださったことに感謝です!

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